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「CryptoPunks」や「ジャック・ドーシーの最初のツイート」はアートなのか? NFTの「分類」についての動き

2021年3月にBeepleのデジタルアート作品 ≪Everydays – The First 5000 Days≫ が6,900万ドル (約75億円(当時)) の値を付けたことで火の付いたNFT。2021年に一気に注目を集めたものの、まだその分類や法律などが整備されていない部分も多く、その評価に疑問の目を向ける人も多い。

2022年1月には、Wikipediaの編集者らが NFTをアートに分類しないことを決議し、波紋を呼んだ。※1 高額落札されるNFTは「アート」なのか?また、その「分類」は今後のNFT市場にどのような影響を与えるのか?NFTの「分類」にまつわる動きを見てみよう。(記事中のレートは1ドル115円で計算)

これまでの常識では「分類」ができないNFT作品

これまでのアート市場では、時代、媒体、ムーブメントなどによって作品を分類してきた。NFTではこうしたまだ分類がはっきりと定まっていない。革新的で多くの領域に広がるNFTでは、分類が難しいものもある。

≪Everydays – The First 5000 Days≫ / Beeple
NFTアートの火付け役となった ≪Everydays – The First 5000 Days≫ / Beeple 画像出典:https://en.wikipedia.org/

アート価格のデータベースである「Artprice」のデータベースに2021年に掲載されたNFT作品は、300点弱、総額2億2800万ドル (約262億円) 。世界の美術品二次市場の約1.5%になる。NFTの2021年のオークション結果ベスト100の中では、これまでのアートの分類に基づいて「デジタルアート」作品が65点、「コレクターズアイテム」32点、「デジタルゾーン」2点、「フィルム映像」1点と分類されている。※2

今後、コレクターたちが安心して購入していくためには、明確で透明性を高めることが必要であり、オークションハウスやデータベースがNFTについての必要な情報(制作された地域、エディション、供給と需要など)を明確かつ客観的に提示していく必要があるとしている。 

「CryptoPunks」や「ジャック・ドーシーの最初のツイート」はアートなのか?

「NFT」とひとことで言っても、その中にはアート以外にも様々なジャンルが含まれる。

NFTの市場の売買の割合を見ると、NFT取引の66%は「コレクティブル」 (デジタル版のコレクターズアイテム) が占めており、「アート」はそれに次ぐ14%となっている。※3

2021年2QのNFT取引ジャンルの比率のグラフ
2021年2QのNFT取引ジャンルの比率。 (NonFungible社「NON FUNGIBLE TOKENS QUARTERLY REPORT」より引用)

例えば、最古のNFTプロジェクトの1つであり、度々オークションでの高額落札で話題となる「CryptoPunks」も、分類としては、プロフィール画像(PFP;Profile-Picture)であり、「コレクティブル」のカテゴリに入るものだ。

CryptoPunksのプロフィール画像が並んだ様子
CryptoPunks 画像出典:https://www.businessinsider.com/

それでも、こうした 「コレクターズアイテム」と「アート」のカテゴリーが曖昧になっているのは、価格に起因する部分もある。数百万ドルで購入したプロフィール写真は、その価値から、おそらくアート作品でもあるともいえるだろうと、Artpriceでは考察している。※2

同様に、2021年3月に、ツイッターの創設者であるジャック・ドーシー氏のツイートを290万ドル (約3.1億円(当時))で落札したシーナ・エスタビ氏は、取得したコードの断片を世界で最も有名な芸術作品であるダ・ヴィンチの ≪モナ・リザ≫ に例えている。

フィナンシャルタイムズ誌も、2021年は「デジタル・コレクターズアイテムに、従来のアートとほぼ同額の購入者がついた画期的な年」と言及しており※4、NFTの技術によって、これまでの感覚ではアートとは捉えられていなかったものにも、同様な価値が与えられつつあると言えるのかもしれない。

NFT作品は「アート」か「証券」か?分類によっては課税額が変化する可能性も

一方、別の観点の「分類」によっては、NFTを売買する際にかかる税金などが変化してくる可能性もある。

NFTにまつわる法整備は途上だが、例えばアメリカでは、NFTはデジタル投資と似ている部分があるため、規制当局から「証券」とみなされるのではないかとNFTを取り扱う企業は懸念しているという。その場合、NFTはキャピタルゲイン税の対象となる可能性がある。※4

実際、米国のNFT企業「Particle」が、バンクシーの≪Love is in the Air»を1万枚のNFTに分割して販売するなど、NFTアートを「証券」に近い扱いをする企業も出はじめている。※5

≪Love Is in the Air≫  / バンクシー
分割してNFT化されたバンクシーの≪Love is in the Air≫  画像出典:https://www.artnews.com/ (COURTESY PARTICLE)

国内に目を向けると、NFTの税制の整備は追い付いておらず、NFTの売買にもとづく収益は事業所得や譲渡所得、雑所得などにケース・バイ・ケースで分類されているようだ。※6

所有するNFT作品が「アート」と見なされれば、条件によって減価償却の対象になるかもしれないし、その売買による収益を「譲渡所得」と分類されるか、「雑所得」と分類されるかによっては課税額も大きく変化し、売買にも影響を与えるかもしれない。

NFTは黎明期であり、その分類もまだ途上だ。まさに現在進行形のルール形成が今後のNFTの市場にも影響を与えていきそうだ。

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文:ANDART編集部

参考)

※1 「Wikipedia Editors Have Voted Not to Classify NFTs as Art, Sparking Outrage in the Crypto Community」(artnet news)
※2 「For a classification of NFTs on marketplaces and in Artprice databases」(artprice.com)
※3 「NON FUNGIBLE TOKENS QUARTERLY REPORT」 / NonFungible Corporation
※4 「How NFTs became a $40bn market in 2021」(FINANCIAL TIMES)
※5 「Banksy’s ‘Love Is in the Air’ to Be Fractionalized into 10,000 NFTs」(ARTnews)
※6 「【NFTの確定申告】売買した際の税金はどうなる?暗号資産(仮想通貨)取引を参考に考える」(ミツモア)