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アート解説

KYNEとは?現代のストリートカルチャーを代表する、注目のアーティストの魅力に迫る!

KYNEとは?

KYNE(キネ)は1988年生まれ、福岡を拠点に活動するアーティスト。地元で描いていたストリートアートが話題となったことを機に、2006年頃に活動をスタートさせる。余計な表現を極力削ぎ落としたシンプルでミニマムな表現が特徴。絵の中心的モチーフとなる女性はクールな表情で、いつもどこか物憂げな表情を浮かべている。都会的でリアルなストリートカルチャーの世界からそのまま飛び出してきそうな女性は、今の時代を反映するアイコニックな人物像として身近さを感じさせるばかりでなく、世代を超えて愛される不思議な魅力がある。

画像引用元:https://kyne.jp/

そんな現代性と普遍性を共存させる絶妙なミックス感や、シンプルでミニマムな独自のスタイルが、多くの人々を惹きつけているのだろう。ストリートカルチャー周辺での人気はもちろん、作品がオークションにも度々登場するなど、今やファインアートの世界でも着実に知名度を上げつつある。直近では、7月3日(土)・4日(日)に行われた「第45回 SBIアートオークション|LIVE STREAM AUCTION」にて、落札価格トップを記録したことでも話題に。現代のアートシーンにおいて国内外から注目されている、重要人物の一人である。

KYNEの作風

シンプな線と面に、クールな表情の女性が佇む作風が特徴。余計な表現を極力削ぎ落としたシンプルでミニマムなその表現は、学生時代に学んだという日本画の影響からのものだろうか。本格的に活動をスタートさせてからは、 “KYNE-girl”ステッカーを福岡の路上や壁にあちこちに貼るうちに、ストリート界隈で認知されるようになったという。そうした中で、現在のスタイルが徐々に確立されていった。

ちなみに絵を描く時は、始めにスケッチブックにシャープペンシルで下絵を描くところからスタートするのだとか。また作品の中に登場する女性については、Casa BRUTUSのインタビューで以下のように語っている。

ネットで見つけた素材、実際の人物などの髪型やポーズを参考にすることはありますが、顔を似せることはないですね。喜んだり、悲しんだりといった感情がこもらないようにもしています。見る人がその時々でいろんな感情を汲み取れるようにしたいので。

敢えて表情を感じさないような描き方を選び、鑑賞する者に感情を想像させて委ねるのが、KYNEのスタイル。一目見れば「KYNE」と分かることも、アーティストを強く印象づける重要な要素であり、大きな魅力となっている。またいくつかのインタビューで本人も語っているように、「80年代の大衆文化から受けた影響は大きい」という。好きな漫画やバイクからインスパイアされたカルチャーの要素を、アートワークに上手く反映させている。当時の時代の空気感とノスタルジックな雰囲気を作品の端々に感じ取れるのも魅力であり、KYNEの作品をいっそう味わい深いものにしている。

KYNEのこれまでの代表的な活動履歴

・福岡のUNION SODAで、展覧会「STAY GOLD MEGURU YAMAGUCHI × KYNE」を開催

2017年5月には、KYNEの活動の拠点でもある地元・福岡に、山口歴との初の合同展を開催した。過去の作品のみならず、本展のために制作された新作や、二人の貴重なコラボレート作品​である、シルクスクリーンのリミテッドエディションも特別に展示された。

画像引用元:https://mastered.jp/

NYブルックリンで活動する筆跡(ブラッシュストローク)で知られるアーティストで、昨今では数々のアパレルブランドとのコラボでも話題の山口歴と、日本画をベースに現代のストリートカルチャー、サブカルチャーの世界に表現を落とし込んだKYNEの共演は、フレッシュで大きな刺激に満ちたものであったに違いない。

・福岡美術館にて、「KYNE《Untitled》2020年」が開催される

昨年、2020年には福岡市美術館にて、「KYNE《Untitled》2020年」と題するコレクション展がスタート。コロナ禍において新なことに挑戦したいという意欲的な福岡市美術館とKYNEの熱意が一つになり、巨大な壁画ペインティングが誕生した。高さ3m横13mの壁面に目いっぱい描かれた作品のテーマは、「公共性と自由」。KYNEにとっても過去最大となるこの直筆作品は現在も福岡の街の中心にあって、人々を勇気づける存在となっている。公開は2022年12月末まで。

【アート観光】KYNE(キネ)の直筆壁画(イラスト)を見に福岡市美術館、グッズを買いにON AIRへ|感想や写真など

画像引用元:https://nichiyogogo.com/

・シンガーソングライター、iri(イリ)の新作のジャケットを担当

80年代カルチャーに大きな影響を受けてきたKYNEは、この時代の音楽にも造詣が深く、「アイドルの曲やAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック/アルバム・オリエンテッド・ロック)など、よく聴いています」とインタビューの中でも語っている。また、純粋に音楽からの影響だけでなく、80’sアイドルのレコード・ジャッケットの構図からもインスパイアされたと振り返っている。

画像引用元:https://twitter.com/

そんな音楽をこよなく愛するKYNEが、2017年に手掛けたのが、シンガーソングライター、iriの新作EP『life ep』のジャケット。アーティスト本人をモデルに、KYNEがイメージイラストを描き下ろした。この他にも、過去にはiriがライブ会場で販売していたシングル「会いたいわ / ナイトグルーヴ」のジャケットイラストも手掛けた。

また、2017年には「FUJI ROCK 2017」のオフィシャルTシャツも担当した。

画像引用元:https://asbs.jp/

さらに2018年には、音楽ストリーミング・サービス「AWA」公式アカウントにプレイリスト「夜の街をドライブ」を公開した。ジャケットを描き下ろしたことに加え、KYNE自身が実際に選曲をしたということで話題になった。

画像引用元:https://spincoaster.com/

・Casa BRUTUS「カフェとロースター」の表紙に!

KYNEの存在が広く知られるきっかけとなったのが、2018年に発売されたCasa BRUTUSの4月号。「カフェとロースター」という特集号の表紙にKYNEのイラストが起用されたことで、さらに知名度が上がっていくことになる。

画像引用元:https://www.facebook.com/

さらに2020年にも、イラストの別バージョンが表紙の「カフェとロースター」のムック版が販売された。

・福岡にクリエイティブスタジオ兼ショップ〈ON AIR〉をオープン

2017年には、福岡で人気のイラストレーター、NONCHELEEE(ノンチェリー)とともに、スタジオ兼ショップの〈ON AIR〉をオープン。事の始まりは、親しいアーティストとの飲みの席で、それぞれが選曲した音楽をかけながらふと生まれたアイデアだという。その時のノリや空気感を、そのままラジオにしたいと話が盛り上がり、東京で展開していた番組の福岡版として、地元でも新たな番組がスタートすることになった。

画像引用元:https://www.herenow.city/

ラジオの収録スタジオに始まりアトリエにショップと、様々な目的を兼ねたスペース〈ON AIR〉。また、こちらはカルチャーの発信地としても知る人ぞ知る場所で、オープン以来、依然として感度の高い人たちを魅了している。

2019年には、東京・代田橋にも同名のスペースをオープン。オープニングパーティーではTowa TeiもDJとして出演した他、〈ON AIR〉のクルーで現代美術アーティストの加賀美健とのコラボレーションも。スウェットフーディやパンツ、Tシャツなリリースした。

・アディダスとのコラボレーションが実現。「adidas Originals by KYNE 」が発売!

そんなKYNEであるが、最新ニュースとして、アディダス オリジナルズとのコラボが実現。2021年6月18日より販売スタートとなったことが、最新のホットなトピックとして、話題となっている。

画像引用元:https://liveinrugged.com/

今回のコラボでは、KYNEのグラフィックを配したスニーカーとTシャツが発表された。スニーカーは、アディダスブランドの定番「STAN SMITH(スタンスミス)」をベースに製作。ホワイトにパステルカラーのブルーが調和し、シンプルで爽やかなルックスが印象的なアイテムだ。さらにこちらは、パステル調のカラーと絵柄は左右で異なるのも特徴。ミニマルなデザインの中にもKYNEのアートがきらりと光る。

画像引用元:https://liveinrugged.com/

一方のTシャツは、シューズのデザイン同様、女性アイコンのグラフィックをフロントに配置し、バックの首元にはKYNEのシグネチャーサインが、さりげなく施されている。まさに、これからの季節にぴったりのアイテムだ。

近年ますます注目が集まる「アート×ファッション」の文脈でも見逃せない、本コラボ。好きなアーティストのアートをファッションとして取り入れ、身に纏うスタイルも、今のトレンドとしてぜひチェックしておきたい。

まとめ

福岡のストリートカルチャーから出発し、今や日本国内ばかりでなく、世界にも知られるようになったKYNE。すでにカルチャー界隈では絶大なる支持を得ているが、これからより広い世界に向かって羽ばたいていく可能性がある。

画像引用元:https://www.herenow.city/

80年代のカルチャーを作風の中にうまく滲ませながらも、今の時代の空気を敏感に取り入れ、独自のスタイルで発信を続けているKYNE。公開されている情報もまだ少なく謎めいた部分も多いだけに、これから何が飛び出してくるかわからないおもしろさや期待感を掻き立てる存在でもある。今後の活躍に、ますます目が離せない。

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