1. HOME
  2. アート解説
  3. 5分でおさらい、ジャスパー・ジョーンズの代表作を解説
アート解説

5分でおさらい、ジャスパー・ジョーンズの代表作を解説

ジャスパー・ジョーンズとは?

ジャスパー・ジョンズ(Jasper Johns)は、1930年アメリカ・ジョージア州オーガスタ生まれ。サウスカロライナ州立大学で美術を学んだ後、1949年にニューヨークのパーソンズ美術学校に入学し、徴兵されるまで在籍する。兵役を終えてニューヨークへ移ると、ロバート・ラウシェンバーグと出会い、共にティファニーなどのウィンドー・ディスプレーの仕事に携わった。

旗や標的(ターゲット)、数字、地図などの記号を題材にした絵画を描き、60年代にはコラージュや版画、オブジェを絵画に組み合わせた作品を制作。70年代にはフラッグ・ストーン(敷石)やクロス・ハッチ(網目)を文様のようにして描いた抽象絵画を、80年代には人のシルエットなどの新しいモチーフを取り入れた四季シリーズを手がけている。

抽象表現主義の最後の世代となる作家であり、1950年代初頭にアメリカで台頭した美術動向ネオ・ダダの旗手として、ロバート・ラウシェンバーグと共に語られる重要な作家の一人である。

ジャスパー・ジョーンズの代表的なシリーズ

ジャスパー・ジョーンズは既存のイメージやモチーフを反復して用いながら、多彩かつ複雑に作風を展開させている。その中でも代表的なシリーズを紹介していきたい。

旗シリーズ

《旗》(1954 – 1955年)

《旗》(1954 – 1955年)
画像引用:https://www.wikiart.org

ジョーンズは1954年のある日、自分が星条旗の絵を描いている夢を見たという。さっそく星条旗をキャンバス全体に描いた《旗》を制作。1958年のニューヨークのレオ・カステリ画廊の初個展で発表された。

蜜蝋をメディウムとして使う「エンカウスティーク」を駆使し、絵の具を塗った筆跡を残している。エンカウスティークは、ジョーンズのトレード・マークとも言える手法となった。星条旗の縞模様の下には、蜜蝋で塗り固められた新聞紙がコラージュされている。

《ホワイトフラッグ》(1955)

《ホワイトフラッグ》(1955)
画像引用:https://www.wikiart.org/

1つの星条旗のイメージを切り分け、3つのキャンバスに描き、支持体であるキャンバスを物質的に繋ぎ合わせることで、1つのイメージになるように再度構成している。

単色であることで、より蜜蝋の凹凸やコラージュの重層的なテクスチャーが増幅され、なおかつ白以外の色彩も感じられる作品となっている。

《スリーフラッグス》

《Three Flags》(1958)
画像引用:https://www.wikiart.org

《スリーフラッグス》は3つの星条旗をそれぞれキャンバスに描き、重ねて構成している。キャンバス上に描かれた平面の星条旗に、キャンバス自体の物質性と奥行きが加わっている。

さらに上にキャンバスが置かれて重なっている下のキャンバスの部分は、隠れて見えない。絵画と彫刻の境界が曖昧な作品となっている。

標的シリーズ

標的(ターゲット)をモチーフに使ったシリーズは、旗のシリーズと同様に、ジョーンズが深めていった絵画や平面に対しての探究の過程を追うことができる、初期の重要なモチーフである。

ターゲットは、旗のイメージを追及していく中で取り入れたのだという。ターゲットは、アメリカの国旗である星条旗と違って、何かを象徴する固有のイメージではなく、色なども使うものが自由に選択することができる。

そして中央に配置され、同心円で表されるターゲットは、旗のように要素を四角に分割することができない。

《4つの顔のある標的》

《Target》(1955)
画像引用: https://www.wikiart.org

《4つの顔のある標的》は、キャンバスに的(ターゲット)を描き、型取りした頭部のオブジェを組み合わせて構成している。キャンバスの奥行きに合ったサイズのオブジェを配置し、二次元的な絵画に空間性を持たせている。

《石膏の型のある標的》

《Target with Plaster Casts》(1955)
画像引用:https://www.wikiart.org

《石膏の型のある標的》では、オブジェの制作で型取りに使った型をコントラストのある色で着色し、絵画と構成した。さらにキャンバスに板をつけ、ターゲットの赤に近い色を着色することで、キャンバス自体もオブジェの一つであることが強調された作品となっている。

マップシリーズ

《地図》

《地図》(1961)
画像引用:https://www.wikiart.org

旗やターゲットよりも少し後に、取り入れたのがアメリカの地図である。モチーフとして使うようになったのは、ロバート・ラウシェンバーグからアメリカの地図を贈られたことがきっかけだった。ジョーンズは渡された地図に色を載せていき、作品を制作している。

地図シリーズでは、キャンバスを立てることで流れ落ちた絵の具の軌跡が残されていることが多い。これは、偶然性の音楽を生み出したジョン・ケージの影響だと言われている。

《地図》(1967 – 1971)

《地図》(1967 – 1971)
画像引用:https://www.pinterest.jp

キャンバスは、思想家でありデザイナーでもあったバックミンスター・フラーが考案したダイマクション地図の展開図になっている。マンハッタンのアトリエで5年をかけて制作された。

なお、この作品は発表後にもう一度、手直しを行っている。

数字シリーズ

《白色の数字》

《White Numbers》(1958)
http://www.davidtunklfineart.com

旗やターゲットよりもミニマルで抽象的な既存のイメージとして用いたのが数字のモチーフとなる。ジョーンズは数としての意味は無視し、文字の形に着目した。

このときに、蜜蝋を使ったエンカウスティークの手法が生かされたのが、ステンシルである。型を使うことで、反復する作業を正確なものにし、かつ蜜蝋の厚みを使い、形を浮き上がらせることもできる。

《白色の数字》では、ステンシルを使うことで、キャンバスの下地が透けて見えるように処理されている。整列している各数字が主張することなく、絵画の全体性を感じられる作品である。

《0〜9》

《0〜9》(1961)
画像引用:https://www.tate.org.uk

数字を配列させずに、複数の数字のアウトラインを重ねていくことで、より数字の形体を象徴的に描いている。

ジョーンズは数字のアウトラインを何層にも重ねる作品を複数手がけているが、この作品では数字同士の輪郭が交差した部分で区切り、色彩を配置していく構成をしている。

最新のアートニュースを受け取る

ANDARTは日本初、アート作品の共同保有プラットフォーム。オーナー権は、数量限定で発行される優待付きの権利。オーナー権を保有している会員は、保有者限定の優待を受けることができる。ANDARTでは一流アーティストの作品も、“シェアする”という形で気軽にコレクションすることができる。そして価値が上がったアート作品のオーナー権はサービス内で簡単に売買することができ、そこで利益を得ることができる可能性もある。真贋の判断が難しい作品もこういったサービスを通すことで安心して所有することができる。

また、無料の会員登録をすることで定期的にアートニュースを受け取ることが可能。解説記事の更新もお知らせしているのでぜひ登録を検討いただきたい。

まとめ

Jasper Johns
画像引用:https://www.wsj.com

日常的な事物を記号的題材として取り入れるジャスパー・ジョンズや、ロバート・ラウシェンバーグらネオ・ダダの作家が展開したスタイルは、アメリカの大衆文化を扱うポップ・アートの前身として位置づけられている。

ジャスパー・ジョーンズは、アメリカ文化に大きな功績を与えた文化人に贈られる国民芸術勲章を1990年に受賞し、2011年には大統領自由勲章をオバマ元大統領から授与された最も権威のある作家の一人だ。しかしネオ・ダダは反芸術を標榜する美術動向である。身近な題材を使いながらも、どの作品にも通底したダイナミズムが感じられるだろう。