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コンセプチュアルアート

話題のダミアン・ハーストって一体誰?初期〜最新作まで代表作20選をご紹介

ダミアン・ハーストとは

画像引用:https://casie.jp/

ダミアン・ハースト(Damien Hirst)は1965年生まれのイギリス・ブリストル出身の現代美術家。ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)と呼ばれる1990年代のイギリスで活躍した若手のコンテンポラリー・アーティストの中でも代表的な存在である。86年、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ美術学部に入学。88年には廃ビルで学友たちと展覧会「Freeze」を自主開催し、イギリス美術界の新たなムーブメントとして注目を浴びる。

本物のサメや羊をホルマリン(ホルムアルデヒドの水溶液)漬けにして保存したり、蝶やハエの死骸を使うなど生と死を感じさせるセンセーショナルな作品でよく知られている。2008年にはサザビーズがロンドンで開催したオークションにて、223点の作品を出品したところ、落札総額が1億1100万ポンド(約211億円)に達し、1人の芸術家の作品落札総額としては最高記録を樹立した。ハーストはビジネスとしてアート活動を行う芸術家としても知られており、このオークションで、ギャラリーやディーラーなどを通さず直接オークションに出品するという美術界では前例のない行動をとり話題となった。

過激なコンセプトで一度見たら忘れられない彼の作品。日本でも過去に森美術館で展示が行われたことがあるので、作品を見たことがあるという人も多いのではないだろうか。この記事ではダミアン・ハーストの代表的な作品20選を作品解説とともに紹介する。

ダミアン・ハーストの作品20選

「Spot Painting(スポット・ペインティング)」シリーズ

《Agaricin》画像引用:https://damienhirst.com/

ハーストの最も有名な代表作の一つである本シリーズは、白地に等間隔に並べて描かれたカラフルな円形が特徴の作品。この円形は錠剤を表しており、このシリーズでは《Agaricin(アガリシン酸)》など薬剤の名前をタイトルにし、それぞれの作品が描かれている。ハーストは薬剤をモチーフによく使用するが、これは人間の死に抗う欲望を表している。

《A Thousand Years(1000年)》(1990年)

画像引用:https://damienhirst.com/

ハーストにとって初めての動物を使ったインスタレーション作品。ガラスケースの中には牛の頭、多数のハエ、殺虫灯、ウジ(ハエの幼虫)を培養するための箱が設置されている。ハエが牛の頭に卵を生み、ウジが牛の頭を食べてハエになり、飛び回るハエは殺虫灯に当たって死ぬという食物連鎖が表現されている。

《The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living(生者の心における死の物理的な不可能性)》(1991年)

画像引用:https://damienhirst.com/

ハーストのYBAs時代のコンセプチュアル・アート作品。巨大なショーケースに全長4.3メートルのイタチザメがホルマリン漬けにされている。本作は2004年に約800万ドルで売却されたと言われている。なお、オリジナルのイタチザメは劣化のため、2006年に新しい標本に入れ替えられている。

「Spin Painting(スピン・ペインティング)」シリーズ

《Beautiful, childish, expressive, tasteless, not art, over simplistic, throw away, kids’ stuff, lacking in integrity, rotating, nothing but visual candy, celebrating, sensational, inarguably beautiful painting (for over the sofa)》画像引用:https://damienhirst.com/

モーターで回転する大きなキャンバスに絵の具を撒くことで、色の軌道が見えるような躍動感のある描写ができるという表現方法使ったシリーズ作品。鮮やかな色合いと「Beautiful」から始まり「painting」で終わる、長く単語の羅列のようなタイトルが特徴。ドローイングに機械を取り入れることで、アーティストの意思だけではない偶発的な表現が生まれる。

《Mother and Child, Divided(母と子、分断されて)》(1993年)

画像引用:https://damienhirst.com/

縦二つに切断された状態の牛と子牛をホルマリン漬けにした作品。ハーストの代表的な表現方法であるホルマリン漬けした動物の中でも、最も有名な作品の一つ。切断された牛の間を通ると体内の内臓の様子を見ることができる。ヴェネツィア・ビエンナーレに出品され、1995年にターナー賞を受賞した。

「Visual Candy Paintings(ビジュアルキャンディーペインティング)」シリーズ

《Super Silly Fun》画像引用:https://damienhirst.com/

このシリーズは、キャンバスにカラフルな油絵の具が抽象的に塗られた作品である。彼の代表作である《スポット・ペインティング》を美術評論家が「ただの視覚的なキャンディー」と評したことが発端となり制作された。視覚を楽しませることが目的の美しいアートが批判されることに対して、皮肉を込めた作品。

《Pharmacy(薬局)》(1997年)

画像引用:https://damienhirst.com/

イギリスのノッティング・ヒルにあるレストランを薬局のように装飾してオープンしたインスタレーション作品。薬品が効く体の部位をそれぞれシステマチックに並べることによって人体が表現されている。本作の第1弾は2003年に閉店したが、2016年に第2弾が、ハーストが経営する「ニューポート・ストリート・ギャラリー」内にオープンした。

《Hymn(賛美歌)》(1999年)

画像引用:https://damienhirst.com/

解剖学玩具を5.5mに巨大化し、ペイントしたブロンズの彫刻作品。医学的なモチーフだが、カラフルで親しみやすい。2000年にハーストと密接な関係があったコレクターであるチャールズ・サーチが創設したサーチ・ギャラリーでの展示『Ant Noises』に出展され注目を集めたが、のちに著作権違反として訴えられることとなる。ハーストはこの作品に似たものを3作制作して販売している。

「Kaleidoscope(万華鏡)」シリーズ

《Eternity》画像引用:https://damienhirst.com/

2001年に絵画《It’s a Wonderful World》の制作にてビクトリア朝のティートレイに触発され、何千ものカラフルな蝶を幾何学模様に配置したのが始まり。その模様はステンドグラスを彷彿とさせ、実際に聖堂のステンドガラスをコピーすることもあるという。2002年から2004年にかけて制作された約2m×5mの《Eternity》はこのシリーズの代表的存在。

「Mandalas(曼荼羅)」シリーズ

《Unveiling》画像引用:https://whitecube.com/

ハーストはカレイドスコープに派生して曼荼羅をモチーフに使用することも多い。曼荼羅とは密教で生まれた絵で、仏様の世界や悟りの境地が描かれている。このシリーズでもカラフルな蝶を画面いっぱいに敷き詰めることで表現している。

《Who’s Afraid of the Dark?(暗所恐怖症は誰ですか?)》(2002年)

画像引用:https://damienhirst.com/

黒で塗られたキャンバスに、まるで星のように無数のハエが樹脂を合わせてコーティングされている作品。ハーストは1997年に初めてハエをペインティングしたが、当初の作品は技術的にも未完成でコレクターは異臭に耐えられず、作品を手放さざるを得なかったそう。ハーストはハエの周期と自分の人生を重ね、ハエを人間の比喩として表している。

《Lullaby spring(子守唄の春)》(2002年)

画像引用:https://www.sothebys.com/

3m幅のキャビネットに6136錠の錠剤を敷き詰めた作品。現在ハーストのオークションレコード1位の作品。2007年にハーストはこの作品でヨーロッパで活動する現役アーティストの内最も高額な作品を制作する作家となった。カタールのハマド・ビン・ハリーファ・アール=サーニーが1,920万ドル(約22億円)で購入した。

《For the Love of God(神の愛のために)》(2007年)

画像引用:https://damienhirst.com/

18世紀の人間の頭蓋骨を型取ったプラチナに、8601個の純ダイヤモンドで敷き詰めた彫刻作品。主題は「メメント・モリ(死を想う)」。制作費は約33億円で、50ミリオンポンド(約120億円)の価格がつけられた。

《Mickey(ミッキー)》(2012年)

画像引用:https://damienhirst.com/

単純な円形と色の組み合わせだけで、ミッキーマウスのモチーフだとわかるハーストのキャンバス作品。ミッキーマウスはこれまでにも様々な有名アーティストに影響を与えてきたモチーフでもある。本作はハーストがディズニーに招待されて制作し、慈善団体に寄付するためにオークションにかけられた。

《Verity(真実)》(2012年)

画像引用:https://damienhirst.com/

イギリスの小さな港に立つ高さ20.25メートルのブロンズ像。モチーフはエドガー・ドガの《14歳のダンサー》からとられているが、像の右半分は解剖学的断面となっており、彼女のお腹の中に胎児がいることがわかる。左手に伝統的な正義のシンボルである剣を持ち、堂々と掲げている様子には自信が表れている。

《Gone but not Forgotten(なくなったが忘れられなかった)》(2014年)

画像引用:https://damienhirst.com/

巨大なガラスケースに設置された高さ3メートルの金色に塗られたマンモスの骨格。本作は「何かを見るために何かを殺さなくてはいけない」という博物館の宿命的問題、絶滅したマンモスが持つ神話的イメージを題材としている。マンモスを金メッキで塗ることで、鑑賞者がマンモスをみたときに感じる「死」のような現実のイメージから遠ざけようとしている。

「Black Scalpel Cityscapes(黒いメスの街並み)」シリーズ(2014年)

《Berlin》画像引用:https://damienhirst.com/

一見衛星写真のようにも見える本作は、よく見ると医療用のメスや剃刀の刃、安全ピンなどで構成された作品であることがわかる。ハーストはホワイトキューブの展覧会のためにこのシリーズを制作し、ハーストに関わりのある場所、紛争のある場所、政治的に重要な都市を再現し、「生きている都市の肖像」を表現している。

「Cherry Blossoms(桜)」シリーズ(2020年)

画像引用:https://www.fondationcartier.com/

2021年7月からカルティエ現代美術財団にて開催された個展で発表された桜をモチーフにしたシリーズ作品。本作のテーマは「自然に湧き起こる絵画の楽しさを見直したもの」。無数の点が敷き詰められた桜の花びらを、数枚のキャンバスにわたって壮大に描いている。ハーストはこれまでにも、桜を描いた作品を制作している。

《Butterfly Rainbow(蝶の虹)》(2020年)

画像引用:https://ringofcolour.com/

新型コロナウイルスの危機において、NHS(国民保険サービス)や全国の医療従事者に敬意を表して制作された作品。虹に蝶の羽が敷き詰められるように描かれている。虹は希望の印であり本作はハーストの自身のウェブサイトで無料でダウンロードできる。また、限定版も制作されており、その利益は全てNHSに寄付される。

《THE CURRENCY(通貨)》(2021年)

画像引用:https://www.bloomberg.com/

「通貨」と名付けられた新作のNFTプロジェクトで、似通ったデザインで平等に制作された1万点の作品が2,000ドル(約21万円)で販売された。この作品の興味深いところは、NFT作品を購入した1年後に作品の所有者が「NFTを物理的な作品と交換してNFTを破棄する」のか、「NFTを保持して物理的な作品を破棄する」のかを選択しなければならない点である。

過激な死生観と斬新なアイディアでセンセーショナルな作品を発表し続けるダミアン・ハースト。現在もNFTプロジェクトが大きな話題をよんでおり、アートの世界でNFTの人気が高まる中、そこにただ乗っかるだけではなく、新しい在り方や、価値を見出した点も非常に彼らしい。今後も美術史の常識が覆るような作品を期待したい。

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文:ANDART編集部