1. HOME
  2. アート鑑賞
  3. 美しい彫刻と建築に思わず惚れ惚れ。ダニエル・アーシャムの展覧会「Sands of Time」が中国で開催中
アート鑑賞

美しい彫刻と建築に思わず惚れ惚れ。ダニエル・アーシャムの展覧会「Sands of Time」が中国で開催中

ダニエル・アーシャムの展覧会「Sands of Time」が中国のUCCA砂丘美術館(UCCA Dune Art Museum)にて、2021年7月11日から10月10日まで開催中。本記事は、美しい外観の美術館と展覧会の様子をお届け。

ダニエル・アーシャムとは?

ダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)は、1980年アメリカ・オハイオ州生まれ。「フィンクションとしての考古学(fictional archaeology)」をテーマに彫刻やペインティング、インスタレーション、映像など幅広く作品を制作する現代アーティスト。色覚異常(色盲)があるため、作品の多くが白や黒を基調としているが、近年は色覚補正メガネなどの医療の発達や周囲のサポートもあり、フルカラーの作品も発表している。

これまでにアディダスやディオール、リモワ、IKEAなど数々のブランドとのコラボレーションを実現。また2020年には、「ポケモン(Pokémon)」とのプロジェクトでユニクロからUTを発売、渋谷PARCOで展覧会「Relics of Kanto Through Time」を開催。先日は西武渋谷店の美術画廊で開催された「モダン→ポストモダン展」にてピカチュウの作品などを展示した。

画像引用:https://www.yatzer.com/

開放感溢れるアート空間とアーシャムの彫刻

ニューヨークと北京を拠点とする「OPEN建築事務所」によって、2018年に中国北部の沿岸に建設されたUCCA砂丘美術館。この浜辺の地形は、風が長い時間をかけて砂を数メートルの高さの砂丘へと押し上げ、低木などの植物によって固められて形成されている。この美術館は、子ども達が夢中で砂を掘る姿にインスパイアされて砂丘の下に掘られて建設された。

上から見たミュージアムの写真
画像引用:https://www.collater.al/

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://www.collater.al/

砂丘に掘られた長くて暗いトンネルとレセプションを抜けると、広々としたギャラリーにアーシャムの作品が展示されている。天窓から太陽光をたっぷりと取り込み、海を目の前にして眺めるアートは、都会の美術館ではなかなか感じることのできない贅沢な空間。

設置された多くの天窓はそれぞれ向きとサイズが異なり、特に三つの窓がついたスペースは年間で変化する太陽の位置を計算して、どの季節の光も取り込めるようにこだわり抜かれた設計がされている。

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://www.collater.al/

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://www.collater.al/

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://ucca.org.cn/

アーシャムの彫刻作品の特徴は「侵食」。侵食されたように、彫刻を部分的に化石のように結晶化させることによって、まるで古代から発掘した彫刻物のように表現。一方で、わざと崩して古びたように見せて、作品として新しく制作した彫刻作品のいずれは朽ちていく「未来の姿」も表現している。これがアーシャムの取り組む「フィンクションとしての考古学」のこと。時間が進んでいるのか止まっているのか、よく分からない感覚を覚えさせるのがアーシャムの作品の魅力だ。

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://ucca.org.cn/

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://ucca.org.cn/

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://ucca.org.cn/

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://ucca.org.cn/

展覧会のタイトル「Sands of Time(時間の砂)」にあるように、作品の周りには砂が敷き詰められている。「時間の砂」と聞いて思い出すのは砂時計。アーシャムは、砂時計の中を落ちていく砂が表す「時間の経過」と長い時間を経て朽ちていく彫刻物の姿を重ね合わせたのではないだろうか。

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://ucca.org.cn/

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://ucca.org.cn/

一際目を引くのが、屋外に展示されている《Unearthed Bronze Eroded Melpomene》(2021年)。顔の側面は侵食が始まり、ゆっくりと崩壊しながら砂の一部になって沈んでいるようにも見える。この作品はアーシャムが制作したブロンズ像で一番大きいものだ。

《Unearthed Bronze Eroded Melpomene》(2021年)
画像引用:https://ucca.org.cn/

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://ucca.org.cn/

屋内外の自然光が入るギャラリーの他に、絵画などのペーパーワークを展示するのに適したギャラリーも設計に組み込まれており、様々な形の展覧会にフィットできる仕様のデューン美術館。12体の彫刻作品の他にドローイング作品もいくつか展示されたギャラリーは、また少し雰囲気の違うシンプルでモダンな建築を作品とともに楽しむことができる。

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://ucca.org.cn/

「Sands of Time」展示風景
画像引用:https://ucca.org.cn/

ギャラリーの他にもカフェが併設されていたり、階段を登ると海を一望できるビュースポットがあったりと、アートと自然を満喫しながら、ゆったりとした時間を過ごすことができるUCCA砂丘美術館。昨今の世界状況下では海外へ旅行に行くのは難しいけれど、いつか行ってみたい美術館のひとつに加えたい。今回展示されたアーシャムの作品は、近年制作されたものばかりなので、今後日本でも鑑賞できる日が来るのが楽しみだ。

ANDARTに無料会員登録すると、オーナー権販売情報などをいち早くお届けします。是非お試しください。

参考URL

・UCCA(Center for Contemporary Art) https://ucca.org.cn/

・Giulia Guido, Collater.al, “Sands of Time, Daniel Arsham’s solo exhibition between sand and caves”

https://www.collater.al/en/sands-of-time-daniel-arsham-exhibition-art/

・Archdaily, “UCCA Dune Art Museum / OPEN Architecture”

https://www.archdaily.com/907596/ucca-dune-art-museum-open-architecture

・OPEN ARCHTECTURE 建築事務所 http://www.openarch.com/

文:ANDART編集部