
抽象表現主義絵画が躍進!10月1日開催クリスティーズオークション落札額TOP5と作品解説
2021年10月1日、クリスティーズ(ニューヨーク)の「Post-War to Present」ライブオークションが開催された。最初期に発行されたNFTを対象とし、暗号資産イーサリアムで入札が行われることでも話題となった。本記事は落札額トップ5の作品とANDARTに関連する注目作品をピックアップして紹介。落札価格は手数料込み、1ドル=111.05円(10月1日終値)で計算。
5)ウェイン・ティーボー《Ridge Valley Farms Study》
落札価格:約1億993万円($990,000)

画像引用:https://www.christies.com/
100歳を超える長寿アーティストのウェイン・ティーボーは、ケーキやパイなどアメリカの日常に溶け込んだものの静物画で知られる。大衆文化に関心を見せた点ではアンディー・ウォーホルやロイ・リキテンスタインらと共通しているが、時代としてはポップ・アートに先行しており、また作風も平面的ではなく影を印象的に用いている。本作は、山間の農村を描いた詩情あふれる油彩画で、画面外に太陽の位置が感じられる。予想落札価格をやや上回っての落札となった。
予想落札価格:約7,773万円〜約1億1,105万円
4)草間彌生《Pumpkins》
落札価格:約2億1,654万円($1,950,000)
4位には草間彌生のかぼちゃの作品がランクイン。2つのかぼちゃをモチーフに、ピンクと白の画面に黄色がアクセントで添えられている。水玉模様や網目模様は、幼少期の内面的なイメージと深く関係しているといわれ、草間の代名詞となっている。また、かぼちゃは草間の作品の中でも代表的なモチーフで人気が高い。草間らしさが盛り込まれた1987年制作の本作は、予想を大きく上回る価格で落札された。
ANDARTで取り扱っているかぼちゃをモチーフとした作品《赤色かぼちゃ》と《南瓜 B》は、ともに完売。現在、会員間での取り引きが可能となっている。
予想落札価格:約1億1,105万円〜約1億6,657万円
3)奈良美智《1, 2, 3…》
落札価格:約2億2,987万円($2,070,000)
無邪気さと残酷さを兼ね備えたような少女像は、奈良美智の代表的なモチーフだ。本作は、数字の描かれた三角帽をかぶった3人の少女が並んで描かれた作品。少女たちは鑑賞者をにらんではおらず、どちらかというと無邪気なかわいらしさが印象に残る。このキュートなモチーフは、カラフルなフィギュアにも展開された。アーティストの自作の木枠に入った本作は、予想の倍以上となる価格で落札された。
予想落札価格:約6,107万円〜約8,328万円
1)フィリップ・ガストン《The Clock II》
落札価格:約2億9,650万円($2,670,000)

画像引用:https://www.christies.com/
1位は2作品が同額で並んだ。戦後にアメリカで活動したフィリップ・ガストンは、リアリズム絵画から抽象表現主義へ転向し、晩年は政治問題などを取り上げコミカルな具象絵画を制作するなど、幾度も作風の変化を見せた。本作は、具体的なモチーフのない抽象表現主義的な作品。同シリーズの《The Clock》はMoMA(ニューヨーク近代美術館)に所蔵されている。ワシントン・ナショナル・ギャラリーでは2022年にガストンの回顧展が予定されているなど、近年注目が高まっているアーティスト。本作は予想の7倍以上ともなる高値をつけて落札された。
予想落札価格:約3,109万円〜約3,886万円
1)ヘレン・フランケンサーラー《Warming the Wires》
落札価格:約2億9,650万円($2,670,000)

画像引用:http://www.artnet.com/
1950年代、ニューヨークで活躍した抽象表現主義のアーティストたち「ニューヨーク・スクール」。その中でほぼ唯一の女性がヘレン・フランケンサーラーだ。すでにアクション・ペインティングで人気を博していたジャクソン・ポロックに影響を受け、キャンヴァスに絵具を直接染み込ませる「ステイニング」という技法を考案したことで知られる。フランケンサーラーが得意とした「カラーフィールド・ペインティング」は、大画面に広がる色彩を特徴的とし、偶然性によるところが大きいが、本作は美しいブルーに暖色がバランスよく散りばめられている。オークション開始前から注目されていたが、予想を上回る価格で落札された。
予想落札価格:約1億6,657万円〜約2億2,210万円
ANDART編集部が落札情報をピックアップ!
アンディー・ウォーホル《Haus Eppinghoven (Blue Version)》
落札価格:約6,385万円($575,000)

画像引用:https://www.christies.com/
アンディー・ウォーホルの作品が落札価格トップ10にランクイン。ウォーホルは大衆文化・大量消費社会を主なテーマにしており、それを象徴するモチーフのプリント作品も多数出回っているが、本作はアクリル絵具、シルクスクリーン用インク、ダイヤモンドの粉を用いたキャンヴァス作品。色違いの《Haus Eppinghoven (version rouge)》も同年に制作されている。予想落札価格をはるかに上回る結果となった。
予想落札価格:約2,776万円〜約3,886万円
アレックス・カッツ《Vincent》
落札価格:約9,022万円($81,250)

画像引用:https://www.christies.com/
2021年に94歳を迎えたアレックス・カッツは、1950年代から数々の肖像画を描いてきた。本作のタイトルにもなっている「ヴィンセント」はカッツの息子の名前で、誕生からたびたびモデルとなっている。カッツは薄い板に描いた肖像を切り出した「カットアウト」と呼ばれる作品を制作しており、本作はアルミニウムに油彩を施したもの。絵画と彫刻の中間のような作品には独特の存在感がある。カッツの故郷であるニューヨークのグッゲンハイム美術館では、2022年に大規模回顧展が予定されており、マーケットでの評価も近年急激に高まっている。本作も予想を上回る価格で落札された。
予想落札価格:約4,442万円〜約6,663万円
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文:ANDART編集部