水戸部七絵の個展「Rock is Dead」東京・渋谷 biscuit galleryにて6月24日から開催
東京都・渋谷にある「biscuit gallery」では2021年6⽉24⽇〜7⽉11⽇の会期にて水戸部七絵の個展「Rock is Dead」を開催している。本展示ではディビッド・ボウイやザ・ランナウェイズなど70年代のロックスターを描いた作品を発表。本展示のテーマ「Rock is Dead」は「Art is Dead」と重ねられ、水戸部七絵自身が昨今のアートマーケットに感じる資本主義へのアンチテーゼを表している。
まずギャラリーに入って感じるのは強い絵の具の匂いと、BGMで流れる往年のロックミュージック。水戸部七絵の作品の特徴でもある絵の具を大量に使って盛り固めた絵が集められた空間では、絵の具の匂いは醍醐味とも言える。さらに今回の個展のテーマに合わせてギャラリストの小林さんによって選曲されたBGMは、「美術は静かに鑑賞するもの」という概念を覆し、耳馴染みのある曲にノリノリで鑑賞できる新しい空間であった。まさに五感で楽しむアート。ちなみにBGMのプレイリストがギャラリーの公式サイトにて公開されているので、観賞後もギャラリスト小林さんの選曲センスをたっぷり堪能しながら、展示を思い返すのも楽しそうだ。
biscuit galleryは3階建てとなっており、それぞれのフロアで展示している作品の印象も異なる。
まずギャラリーに入って最初に目に入る作品は、2m×2mの大きなディビッド・ボウイの肖像画。本展示のメインビジュアルともなっている作品で、鮮やかな色彩と大胆な構図が非常に印象的だ。
階段を上がる途中にも大小様々な絵が展示されている。
2階のフロアにもロックスターたちの肖像画が。「これは誰の顔だろう」と想像しながら作品を見るのも楽しい。さらに壁には水戸部七絵自身が鉛筆で書いたという歌詞などの文字が。このフロアで特に印象的だったのは絵に本物のギターが取り付けられている作品だ。本物のギターも立体的な絵の中に組み込まれていると違和感がなく、絵の中の肖像画が実際に手持っているかのようだった。
3階に上がると雰囲気がガラッと変わり、1階で流れているBGMもほとんど聞こえない落ち着いたスペースとなる。ここでは抽象画が展示されており、絵画の原理を意識して描いた絵画至上主義的で、アカデミックな作品が多い。このフロアで特に印象的な、台に乗せられた青と黄色の作品は、作家がイタリアに旅行に行った際に現地の教会の色や鮮やかな青の顔料に魅せられ、制作したものなのだそう。
在廊中のご本人へのインタビュー
ご自身にとってのロックスターは？
そもそもロックミュージックはあまり聴かず、誰かのファンとかではない(笑)
もちろん好きで、リスペクトしていて、憧れの存在ではあるが、絵のモチーフとして描く場合は単純な好きとはまた違うものがある。昔からマイケル・ジャクソンをモチーフとして描いてきたが、彼は絶頂期とそこからの下降など人生に天地がある人の方が描きやすく、対してディビッド・ボウイは完璧に美しい対象だから、2017年に大回顧展に訪れた際は描くことが出来なかった。しかし彼の「僕は宇宙人だ！」という発言から、異端な自分を認めるという価値観が自分の中で救いになり、今回描くことができた。ザ・ランナウェイズは女性用下着を身につけたパフォーマンスで社会問題を表現したバンドで、ロックの文脈的な重要性からリスペクトしている。美しいや好きという基準だけでなく、社会との関わりなどのプラスアルファを要素として描くようにしている。
Art is Deadはどのようなところに感じる？
自分が美術を本格的に学び始めた時から「絵画は終わっている」と言われていたし、歴史的背景から見ても繰り返し言われ続けていることでもある。日本が海外に比べてコンセプチュアルアートやインスタレーションがあまり評価されないのは、絵画がコレクションしやすく商品として扱われやすいと言う理由で高い評価を受けているからであり、そこにあぐらをかいた状態で絵画を続けていくのは抵抗がある。絵の具の匂いや重さを加えることでわざとコレクションされにくい絵画を描いたりもしている。資本主義への抵抗。
1階2階のロック×アートの作品と、3階の絵画主義的な作品の対比はこのギャラリーならではの構図や、感覚全てで楽しめる展示はぜひギャラリーに足を運んで味わってほしい。
展示概要
水戸部七絵個展「Rock is Dead」
会期 2021年6⽉24⽇（⽊）～7⽉11⽇（⽇）
時間 13：00～19：00（土日：12：00～18：00）
休み 月曜日～水曜日
会場 biscuit gallery 1階～3階
オンラインストア「YOUANDART」では水戸部七絵の作品を扱っている。今すぐ買える作品が販売されているので、ぜひご確認いただきたい。
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