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個性強めな作品がランクイン!10月15日フィリップスイブニングセール落札額TOP5作品解説

2021年10月15日(現地時間)、フィリップスの「20th Century & Contemporary Art Evening Sale」がロンドンで開催。20世紀以降の現代アート作品が出品され、前日に開催されたDay Saleと併せて、約54億5,697万円の落札総額となった。本記事はEvening Saleで落札価格トップ5の作品とANDART関連アーティストの落札情報を紹介。金額は1ポンド=157.01円(10月15日終値)で手数料込みで計算。

5)ジョージ・コンド《Showing Girl》

落札価格:約1億9,351万円(£1,232,500)

《Showing Girl》(2008年)
画像引用:https://www.phillips.com/

ジョージ・コンド(George Condo)は1957年アメリカ生まれ。現在ニューヨークを拠点に活動するアーティスト。アンディ・ウォーホルのFactoryで働いていた経験があり、キース・ヘリングやジャン=ミシェル・バスキアとも親交を持っていた。コンドは1980年代に「Artificial Realism(人工的リアリズム)」という言葉を生み出し、抽象的な要素とリアルに近い要素をミックスさせた独特な肖像画を描く。本作は、所々がデフォルメされた身体と顔はパブロ・ピカソの「キュビズム」を連想させると同時に、3本ある腕と脚、緑の立体的な背景が視覚の位置関係を惑わせ、不思議な感覚を与える作品。

予想落札価格:約1億5,701万円〜2億3,551万円(£1,000,000 – 1,500,000)

4 アルベルト・ウールン《Retrospektiv》

落札価格:約2億1,251万円(£1,353,500)

《Retrospektiv》(1986年)
画像引用:https://www.phillips.com/

スイスとスペインを拠点に活動をする、ドイツ生まれのアーティスト、アルベルト・ウールン(Albert Oehlen)。80年代末に抽象画へと移行したウールンは、「新表現主義」(70年台末から80年代にかけてアメリカ、ドイツ、イタリアなどで活発になった新しい具象絵画の動向のこと)に呼応する形で、具象画、抽象画、自画像など20枚の小さなキャンバスをまとめて本作を制作した。ウールンの新たなキャリアのフェーズに入る前の重要な作品としても捉えられている。

予想落札価格:約1億7,271万円〜2億3,551万円(£1,100,000〜1,500,000)

3 )マルレーネ・デュマス《The Believer》

落札価格:約2億6,000万円(£1,656,000

《The Believer》(2005年)
画像引用:https://www.phillips.com/

オランダのアムステルダムを拠点に活動する南アフリカ人アーティスト、マルレーネ・デュマス(Marlene Dumas)は人種差別や性、暴力など社会性の強いテーマを元に制作をしている。デュマスはメディアや写真から引用してポートレートを制作し、2006年アムステルダムで開催された展覧会「Man Kind」では、パレスチナの少年たちの写真、自爆テロ犯の写真などから作品を展開。本作《The Believer》は、その展覧会で展示されたものである。

予想落札価格:約2億5,121万円〜3億7,682万円(£1,600,000〜2,400,000)

2)草間彌生《Silver Nets (EOKI)》

落札価格:約2億8,850万円(£1,837,500)

草間彌生の水玉やかぼちゃと同様に代表作に挙げられるのが、無数の網の目で埋め尽くされた「網目模様(ネット)」のシリーズである。《Silver Nets(EOKI)》(2011年)は、アクリル絵具で描かれた小さな網目模様が黒地のベースのほとんどを埋め尽くす作品。縦162.2cm、横130.5 cmの大きなキャンバスで結ばれた網目模様は、狂気とも言えるほどに強い制作意思とともに、没入感を鑑賞者に与える。

予想落札価格:約1億8,841万円〜2億3,551万円(£1,200,000〜1,500,000)

1)ジグマー・ポルケ《Negerplastik》

落札価格:約4億7,848万円(£3,047,500)

《Negerplastik》(1968年)
画像引用:https://www.phillips.com/

ジグマー・ポルケ(1941-2010)はドイツの画家・写真家。ゲルハルト・リヒターなどど並び、ドイツを代表する現代画家として知られている。布地と絵画を組み合わせた「Stoffbilder」シリーズが有名。動物たちがプリントされた布にアフリカ彫刻風の黒の人物像がペイントされ、そして右端の赤の部分は医療用のテープで区切られ、多様な素材が用いられた本作が今回のオークションのトップに。この作品は「Stoffbilder」シリーズの中で、市場に出回った最後の作品の一つでもある。

予想落札価格:約3億1,402万円〜4億7,103万円(£2,000,000〜3,000,000)

ANDART関連アーティスト落札結果

ダミアン・ハースト《N-(9-Acridinyl) Maleimide》

落札価格:約1億1,562万円(£736,400)

《N-(9-Acridinyl) Maleimide》(1992年)
画像引用:https://www.phillips.com/

イギリスが産んだ奇才、ダミアン・ハーストの代表作「スポット・ペインティング」シリーズは、覚醒剤の錠剤のイメージを元に各ドットが全て違う色で描かれており、タイトルに薬品の名前がつけられる。本作は「N-(9-アクリジニル)マレイミド」という薬品。制作年である1992年は、ハーストが初めてターナー賞(50歳以下のイギリス人、もしくはイギリス在住の美術家に対して毎年贈られる賞)にノミネートされた年。そして本作は、1993年のヴェネツィア・ビエンナーレにイギリス代表として参加する直前に制作され、ハーストの初期キャリアにおいて重要な位置付けがされている作品である。ANDARTでは、「スポット・ペインディング」シリーズの作品《M-Fluorobenzylamine》を取扱い中。

予想落札価格:約7,850万円〜1億990万円(£500,000〜700,000)

アンディ・ウォーホル《Lenin》

落札価格:約6,726万円£428,400

《Lenin》(1986年)
画像引用:https://www.phillips.com/

ポップアートの代表的アーティスト、アンディ・ウォーホルが制作したロシアの革命家・政治家であるウラジーミル・レーニン(1870-1924)のポートレート。ロシア革命を成功に導き、世界で初めての社会主義国家(ソビエト連邦)を樹立した人物である。ウォーホルは友人が入手した珍しい写真を元に制作した。この「赤」はソビエト連邦の国旗を連想させ、また20世紀初頭より「左翼」を意味する色として多用された色でもある。マリリン・モンローや毛沢東などといったセレブリティや指導者を描いたポートレート作品よりも意図的に色を少なくして「赤」を目立たせていることから、政治的かつ象徴的でパワフルな作品と言える。

ANDARTでは、セレブリティポートレートシリーズの《Liz》を取扱中。

予想落札価格:約6,280万円〜9,420万円(£400,000〜600,000)

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文:ANDART編集部