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アーティストインタビュー

YOUANDART アーティスト・中津川翔太インタビュー

YOUANDARTで作品を取り扱いしているアーティストに様々なお話を伺うインタビュー企画。今回はアーティストの中津川翔太をピックアップし、この道に進もうと思ったきっかけや作品に込める思いなどについて、お話しいただきました。ぜひお楽しみください!

中津川翔太 プロフィール

1987年 神奈川県生まれ。
伝統工芸に魅せられ日本画を独学で学び、グラフィティのイメージを取り込む事に成功する。日本画界では珍しいシルクスクリーン技法を取り入れ、世界に通用する作品を世に輩出している。伝統工芸が失われつつある日本の文化を、現代的なアートを取り入れることで今の時代にあった作品を制作し、各方面から絶大なる支持を得ている。

最近では、上野の森美術館、金沢21世紀美術館と二代美術館での展示に成功し、2019年10月にはパリのルーブル美術館で行われた「SALON ART SHOPPING」での出展も成功させた。

小さい頃からアートが好きだったのでしょうか?アーティストを志したきっかけなどあれば、教えてください。

昔から絵は好きで、落書きくらいでしたけど、色々と描いていましたね。それと、たしか僕が小学生くらいの頃だったと思いますが、北野武さんがアートを紹介する番組があって、大好きでよく見ていた記憶があります。当時はそのほかにもアート系のいい番組が結構あって、そういうものからの影響もあったのだと思いますが、昔から絵は身近な存在として、いつもそばにあった気がします。

そういう中で、大学は美大を目指すことになるんですけど…。その前のことに少しだけ触れると、僕はもともと、高校は進学校に通っていたんですよ。でも、そういう環境の中にいると、どうしても「この先は大学に行かなきゃいけない」みたいな空気になるんですよね。ただ、卒業後の進路を冷静に考えてみた時に、自分は会社に就職したりサラリーマンとして働くイメージが、どうしても浮かばなかったんです。ちょうどそんな時に、たまたま村上隆さんの作品が海外のオークションで、高額で落札されたというニュースを見つけて!そこで「絵ってものすごく夢がある世界だな、アートっていいな」と思って、純粋にものすごくワクワクしたんです。今思えば、すごく安易だったなぁと思うんですけど(笑)、そこからの展開は早かったですね。もう好きな方向に進もう、美大に行こう!と決めて、動き始めました。

そうだったのですね。すごい決断力と行動力ですね。ちなみに東京芸大では漆学科を専攻されていますが、なぜ漆学科に行こうと思われたのでしょう?

工芸の中でも漆学科に行こうと思ったきっかけは、芸大の卒業制作を見に行った時に、「すごく造形的でかっこいい」と思ったからです。そこで調べてみたら、漆学科があるところが都内だと芸大くらいしかないことがわかって。そこで自然と、芸大一本に焦点が絞られることになりました。

もう一つ、工芸というところでいうと、高校生の頃に宮川香山という作家さんの展覧会にたまたま行く機会があって、初めて作品を見た時にすごく衝撃を受けたことも、この世界に興味をもつきっかけになりました。宮川香山は、江戸後期から明治にかけて活躍した「超絶技巧」で有名な方なんですけど、本当に素晴らしい作品をたくさん残されているんです。当時はパリ万博にも出品されていたりと海外でも評価されている方で、最初に見た時にすごい!と圧倒されました。

明治時代を代表する陶工、宮川香山の作品

中津川さんは伝統工芸も好きでご覧になっていたのですね。YOUANDARTで人気の餓鬼シリーズはどちらかというとポップな印象で、伝統的なモチーフからの影響が一見、わからないと思うのですが、なぜこのようなスタイルが生まれたのかというところに、とても興味があります。早速作品のお話になりますが、そもそも餓鬼シリーズが生まれたきっかけはどんなことだったのでしょう?

きっかけはなんだろう(笑)。もともと餓鬼っていう鬼がいるんですけど、鬼は鬼でも怖いほうの鬼ではなくて、子供のいたずらをするような、ちょっと可愛いお茶目な鬼なんですよ。僕はもともとコレクショントイだったり、アニメが好きだったりするので、そういうところにインスパイアされている部分もありますね。家に飾ってみた時に、可愛いな、なんだか見ると和んでホッとするな、と思ってもらえるようなーーそんな愛着の湧く作品にできたらいいなと思って、餓鬼をモチーフに選びました。

中津川翔太の人気作品、餓鬼シリーズのモチーフになった鬼

えっ!コレクショントイですか!?

そうなんです。僕はもともとコレクショントイがすごく好きで、子供の頃からずっと集めているんです。フィギアでも色々な色が並んでいるものがあって、そういうものを見ているのは本当に楽しい時間ですね。

ちなみに昔、高円寺発祥のBAARO(ベーロ)というキャラクターがフィギア界隈で流行っていて、それがすごく可愛くてハマっていた時期がありました。だから、その頃はBAAROも集めていて。他にはスライムもいたりで、僕の家はちょっとしたおもちゃ屋みたいになってるんですよ(笑)。最近はスニーカーにも興味があって、集めています。

アーティストの自宅にて。蒐集しているコレクショントイの一部を特別に見せてくれました。

それからコレクショントイやスニーカーの他にも、アニメもめちゃくちゃ好きです!たとえばアトムのような昔のものから直近の、今の時代のものまで含めて、アニメはずっとチェックしてますし、好きなものは見続けていますね。

中津川さん自身がまさかのコレクターだったのですね!なんだかいろいろなことが繋がった気がします。ちなみに餓鬼シリーズはカラーが鮮やかでビビットですごくいいなと思うのですが、色使いの点で何か苦労されていることや意識されている点などはありますか?

そうですね。色彩というところでいえば、昔の神社建築の色の組み合わせなんかをよく見るようにはしています。たとえば、栃木の日光東照宮なんかはすごくわかりやすいと思うんですけど、煌びやかな金と緑の組み合わせだったり、赤やピンクが入っていたりと、明るくてはっきりした原色が外観や壁面に多く使われているんです。日本の伝統色はわりと淡いトーンの色が多いので、神社建築に原色が使われているイメージがあまり浮かばないかも知れませんが。

ただ、今は一見地味に見えても、創建当時は煌びやかで鮮やかな色を使っていたところが実は結構あるんです。経年変化によって、素材の風合いが変わったり色が剥げてしまって、今ではもとの姿をイメージできないかも知れませんが、神社だけでなく乾漆でできた大仏も、昔はすごく鮮やかな色彩が施されていたりすることもあって。だから、そういう日本古来の、伝統的な色彩がいいなと思って、参考にすることはよくありますね。

目にも鮮やかな、神社建築の豪華な色使い

確かに。そう言われてみると、餓鬼シリーズはビビッドでありながら淡い色が混在していたり、日本の伝統色であったり神社建築を思わせるような色使いが施されているように見えます。ちなみに中津川さんご自身は、神社によく行かれたりはするのでしょうか。

はい。僕、出身が城下町、小田原城の近くで、小さい頃からお城や神社がいつも近くにある環境で生まれ育ったんです。それから、そういう場所にもよく遊びに行っていて、子供ながらに神社やお城がある風景というのがいつも心にあったので、普段強く意識することはありませんが、そういうところからの影響は多分大きいんでしょうね。

そうそう。これは余談ですが、僕、方位学もすごく好きなんですよ!だから方位を見て出かけることもあるんですけど、良い方位が出た時には神社にもよく行きます。そこでお札を買って、帰ってきたらちゃんと家の神棚に飾るようにしています。

モダンなデザインが印象的な、オリジナルのお札。

お札のコレクション、私もインスタで拝見しました。お札って古いイメージがありますけど、すごく現代的でカッコよくてびっくりしました。ちなみに、制作される中で心がけている点、また苦労されている点などはありますか?

心がけている点としては、あまり力を入れすぎない、ということですね。良い意味で、頑張らないというか(笑)。頑張りすぎて変な力が入ってしまうと、自分でも絵が硬くなってしまうのがわかるので、なるべく力を抜いて、ゆる〜く制作に取り組むというスタンスは大切にしています。

あとは、技術技術しないことですね。自分の作る作品で技に走りすぎたり主張が強すぎたりして「俺、これできます!」みたいな雰囲気が出てしまうと、ちょっと変に、違ったものになってしまうというか…。

それは自分でも見て感覚的にわかるので、そういう作品になってしまったときは完成してからボツにすることも当然あるし、その辺りのバランスはすごく重要だと思っています。世に出すものである以上、自分の本当に納得のいくものを出したいという気持ちは常にあって、そういう姿勢はこれからもずっと大切にしていきたいと思っています。

苦労している点は、箔の使い方と見せ方ですね。実際に餓鬼シリーズでは洋金箔を使って、独特の風合いを出すために、ちょっと錆びさせたりするということを敢えてやったりしているんですけど、なかなか思うに錆が出てこないことがあって、そこは結構大変だったりしますね。そもそも錆というのは、湿度や温度など、自然条件が入って生まれてくるものなので、人間が計算できない部分も多くて。そういう意味では、作品が完成した時点からどういう風に経年変化していくのか、予想できないこともあって、その点は一番苦労しています。

もちろん経験の中でわかってくることもあるんですけど、やはりどうしても自然まかせのところはありますからね。だから自分のスタンスとしては、経年変化することを前提に、これからどういう風に変化するのか?ということをも視野に入れて、そういう感覚も呼び起こしながら、下地を引いたり箔をおいていくようにしています。

アトリエ風景

パッとみると明るくてポップな印象を受けますけど、実はすごく繊細に細部まで工芸の技法や様々なこだわりが凝らされているのだということに気づかされます。そういう意味では、単に図柄や色を楽しむというだけでなく、変わりゆく色や風合いなど、経年変化を楽しめるという味わい深い魅力もありますよね。

そうですね。僕自身、錆が経年変化して醸し出される風合いもそうなんですけど、色に関しても、同じ色は使わないと決めているので、同じ図案でも一点一点が本当に違うものになります。経年変化によって色の見え方、錆の出方や趣も変わっていくので、自分で言うのもあれですけど(笑)、そういう変化の様子を見ていけるのもこの作品の大きな魅力の一つだと思いますし、そういうところも含めて楽しんでほしいですね。

一点一点が違うとなると、まさに中津川さんご自身がコレクショントイの蒐集に熱中したような気持ちで、ファンの方も楽しめるかもしれませんね。一度集め始めたら、コンプリートしたくなります

そうだったらいいですね。というか、もし手にとってくださる方がそういう気持ちであったとしたら、それは僕にとってもすごく嬉しいことです。同じ絵でも、色々な絵を手にしていただきたいというのが、もともとのコンセプトとしてもあるので。

僕自身も、未だになぜ集めているのか自分でもわからないんですけど、フィギアとかってものすごく蒐集欲を掻き立てる何かがあるんですよね。明確な理由みたいなものはまだ見つかってないんですけど、とにかく無性に欲しくなる、手元に持っておきたくなる欲求が自然と沸き起こってくるというような。強いて言うなら、コレクター魂みたいなものですかね(笑)。僕が未だにフィギアを集めているのも、そういう純粋な子供心みたいなものからくる「集めたい!」という気持ちだったりするので、この餓鬼シリーズもそんな気持ちで手にとっていただけたら、本当に嬉しいです。

色々と興味深いエピソードをありがとうございます!それでは、最後に読者の方に一言お願いします。

僕の作品を手にとったり部屋に飾っていただいた時に、「あっ、なんかいいな」とか「なんだかホッとするな」というような感じで、特別な感情でなくても、そんな風に日常の中にふと笑顔をもたらすような瞬間を届けられたらいいな、と思っています。生きていると誰でも毎日いろんなことがあって、もちろんいい事ばかりじゃなくて大変な時もあるけれど、たとえ嫌なことがあったとしても見るだけでホッとしてもらえたり、クスッと笑ってもらえたり、元気になってもらえたり。そんな風に、この餓鬼シリーズがみんなの心に届いたらいいなと思っています。

ありがとうございました。

中津川 翔太 Nakatsugawa Shota/鬼女

YOUANDART作品情報

家に飾れるアート作品を扱うオンラインセレクトストア「YOUANDART(ユーアンドアート)」では、中津川翔太の作品を取り扱っています。この機会にぜひご覧ください。

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取材・文/ 小池タカエ