イラストからキャリアをスタートし、海外で才能を見出された気鋭の日本人画家 五木田智央 <後編>

五木田智央はイラストレーションからキャリアをスタートし、1960~70年代アメリカのサブカルチャーやアンダーグラウンドの雑誌や写真にインスピレーションを受けた作品を展開する現代日本を代表する画家。黒と白のモノクロームを基調とし、速乾性のあるデザイン用絵の具アクリルガッシュを用いた計算されたグラデーション、デフォルメされた造形、具象と抽象の間を行き来するイメージなど、多彩な表現を特徴とする。 (1)2014年ニューヨークの老舗現代美術ギャラリー<メアリー・ブーン・ギャラリー>にてモノクロの人物像15点を展示、初日で全作品を完売するという快挙を成し遂げたことをきっかけに、ニューヨークのアートシーンで一躍有名になり、国内外からの注目を集めるように。五木田作品の2019年の落札総額は前年の3倍を超える伸びを示しており、現代アート界で有名なKAWS(アーティスト)、前澤友作氏(実業家)、桶田夫妻(アートコレクター)などに所蔵されている。

前編に引き続き、五木田智央のこれまでの画家人生を辿っていきたいと思う。

#日本画家 #抽象画 #キュビズム #ニューペインティング

五木田智央を知る為のキーポイント


ニューヨーク <メアリー・ブーン・ギャラリー>展示初日で即完売

2014年、ニューヨークの老舗現代美術ギャラリー<メアリー・ブーン・ギャラリー>でモノクロの人物像15点を展示し、初日で全作品を完売するという快挙を成し遂げた。メアリー・ブーンは、ジャン=ミシェル・バスキアを発掘し、1980年代のニュー・ペインティングの流れをリードした著名なギャラリストで、現代アーティストKAWSが所有していた五木田作品を一目で気に入り、個展を開催するに至ったと言われている。同ギャラリーでは2016年、2017年と続けて個展を開催、2019年にもグループ展に参加しており、五木田作品への高い評価が伺える。2016年の個展「OUT OF SIGHT」では、それまでの抽象的な人物像と異なり、1930~50年代のハリウッドの銀幕スターらを題材にした12点を発表。2017年の個展「BEAUTY」ではセザンヌの模写をした《FAKE CEZANNE》を発表するなど、ひとつの表現に止まらない幅の広さが感じられる。(2)

関連作品

《Perfect Pair》2016年 アクリルグワッシュ カンヴァス 259 x 194 cm
出典:https://maryboonegallery.com/exhibition/37

《FAKE CEZANNE #2》2017年 アクリルグワッシュ カンヴァス 45.7 x 53.3cm
出典:https://maryboonegallery.com/exhibition/1935

忌野清志郎、歌手UA、TOWA TEIのアートワークを手がけ話題に。トランペット奏者としての一面も!?

そもそも、五木田のキャリアのスタートは、グラフィックデザインやイラストレーションの分野だ。青春期にYMO(細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一の3人で結成されたテクノ・ポップ・グループ)の影響を受けた音楽好きでも知られる五木田は、Tシャツに加えCDジャケットなどのデザインを多く手がけていた。1997年に忌野清志郎の『GROOVIN’ TIME』のジャケットを手がけ、 (3)さらに1998年に歌手UAを描いたイラストが月刊誌『BARFOUT!』の表紙を飾り、注目を集めるように。その後、打ち合わせが多いデザインの仕事よりも絵を描くことを志望し、画家としての活動に注力。(4)アートの仕事がメインとなった後も、個別の依頼でデザインも手がけており、有名なものではDJ TOWA TEIのCDジャケットを2014年以降5枚デザインしている。TOWA TEIは2000年に出版された五木田の作品集『ランジェリー・レスリング』の頃から五木田作品のファンで、国内はもとより海外の個展にも足を運んでいたという。2017年のTOWA TEIのアルバム『EMO』で五木田はアートワークのみならず、トランペット奏者としても参加しており、絵画に留まらないアーティストとしての顔も見せている。(5)なお近時のTシャツデザインにおけるコラボレーションでは、2016年にカジュアルブランドStüssyの限定コレクションを手がけている。(6)

関連作品

《BARFOUT! May 1998 volume 33》1998年発売 雑誌
出典:http://barfout.jp/old/backnumber/1998/

《忌野清志郎 GROOVIN’ TIME》2016年発売 CDジャケット
出典:https://www.universal-music.co.jp/imawano-kiyoshiro/products/toct-11110/

小学生の頃からプロレスの大ファン。プロレスモチーフのデザインや作品も多数

五木田は、子供の頃から大のプロレス好きというのも有名である。小学3年生くらいでプロレスに巡りあい、「アントニオ猪木!こんなにカッコいい人がいるんだ!」とのめり込んだと語る五木田は、1995年に結成したデザインユニットの名称も「アントニオ・デザイン・サービス」としており、アントニオ猪木のオフィシャルTシャツも手がけている。(7)2018年の展覧会「PEEKABOO」ではプロレスラーをレコードジャケットのフォーマットに描いた作品《Gokita Records》(2002-18)を発表。全225点にも及ぶこの作品は、プロレスラーの名前・似顔絵・実在する楽曲のタイトルで構成されている。もともと息抜きで描いていたものとのことで、楽曲はジャンルレスに様々なものを含み、五木田の音楽好きな一面も感じられる作品となっている。(8)

関連作品

《Gokita Records》(部分)2002 – 2018年 mixed media 31.3 x 31.5 cm each
出典:https://casabrutus.com/art/74151/3

五木田智央のアート作品について


五木田が「青の時代」と語る新しい試み 《This Misunderstanding》2009年

五木田の特徴はモノクロの人物像だが、2009年ロサンゼルスの<オナー・フレイザー・ギャラリー>で開催された個展で、青を基調とした抽象的な絵画も発表している。2014年の「THE GREAT CIRCUS」でも展示された、下記の《This Misunderstanding》(2009)は (9)五木田にとっては新しい試みとなる青いシリーズであったが、モノクロ絵画を期待するギャラリストからは評判が芳しくなかったとのことで、その後はモノクロに回帰している。(10)

関連作品

《This Misunderstanding》2009年 アクリル カンヴァス 194 × 162cm
出典:http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/20141225_tomoogokita.html#highlight

(6)https://hypebeast.com/2016/3/stussy-tomoo-gokita-capsule-collection

(7)BRUTUS 2017/6-15 96ページ

(8)https://casabrutus.com/art/74151/3

(9)http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/20141225_tomoogokita.html#highlight

(10)https://www.cinra.net/interview/201409-gokitatomoo

ANDARTにてお取り扱い中作品


《LAZY BONES》2014年 アクリルグワッシュ カンヴァス 80.3×65.3cm

作品詳細はこちら(ANDARTホームページ)