イラストからキャリアをスタートし、海外で才能を見出された気鋭の日本人画家 五木田智央 <前編>

五木田智央はイラストレーションからキャリアをスタートし、1960~70年代アメリカのサブカルチャーやアンダーグラウンドの雑誌や写真にインスピレーションを受けた作品を展開する現代日本を代表する画家。黒と白のモノクロームを基調とし、速乾性のあるデザイン用絵の具アクリルガッシュを用いた計算されたグラデーション、デフォルメされた造形、具象と抽象の間を行き来するイメージなど、多彩な表現を特徴とする。 (1)2014年ニューヨークの老舗現代美術ギャラリー<メアリー・ブーン・ギャラリー>にてモノクロの人物像15点を展示、初日で全作品を完売するという快挙を成し遂げたことをきっかけに、ニューヨークのアートシーンで一躍有名になり、国内外からの注目を集めるように。五木田作品の2019年の落札総額は前年の3倍を超える伸びを示しており、現代アート界で有名なKAWS(アーティスト)、前澤友作氏(実業家)、桶田夫妻(アートコレクター)などに所蔵されている。

#日本画家 #抽象画 #キュビズム #ニューペインティング

概要


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五木田 智央

出展:https://www.operacity.jp/ag/exh208/j/profile.php

出生 1969年生まれ

出身地 東京

学歴 1988年文化学院芸術専門学校卒業

所属 タカ・イシイギャラリー(国内)、Blum & Poe(海外)

URL https://www.takaishiigallery.com/jp/archives/3868/

主な活動歴


高校時代 知人の依頼でパーティーのフライヤーデザインを始める

1995年 デザインユニット「アントニオ・デザイン・サービス」を結成

1998年 月刊誌『BARFOUT!』にて、歌手UAを描いた作品が表紙を飾り話題に

2000年 モノクロのドローイングを中心に300点を掲載したデビュー作品集『ランジェリー・レスリング』を発表

2005年 アーティスト、テイラー・マッキンスからの誘いでニューヨークのグループショーに参加

2014年 ニューヨークの老舗現代美術ギャラリー<メアリー・ブーン・ギャラリー>にて個展開催

2014年 DIC川村記念美術館にて個展「THE GREAT CIRCUS」を開催

2015年 丸の内ハウスにて個展「GOKITA HOUSE」を開催

2018年 東京オペラシティアートギャラリーにて個展「PEEKABOO」を開催

作品の特徴


《New Sad》2014 年 アクリルグワッシュ カンヴァス 80.3 x 80.3cm 

出典:http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/20141225_tomoogokita.html#highlight

五木田の絵画を印象づけるのが、上記の《New Sad》(2014)のように、顔が鮮明としない抽象的なモノクロームの人物像。通常の油絵の具ではなく、速乾性のあるデザイン用絵の具アクリルガッシュを用い、キャンバスに素早く描き上げてグラデーションを表現しているのが特徴的だ。 (2)新しい表現を模索する中でたまたま白と黒のアクリルガッシュを使って遊んでいたところ、偶然きれいなモノクロのグラデーションができ、周りにも評価されたのだという。 (3)五木田はインタビューでも「グラデーションは快感ですね。(中略)グラデーションがいい感じで描けると、本当にぶっ飛びそうになる。」と語っており、グラデーションは五木田作品の重要なポイントと言える。(4)

──肩書きを自称するとしたらどうなります?
「芸術家とか美術家とかペインターとかいろいろありますが、画家がいちばんしっくりきます。俺はもう絵でいい。絵が好きなんですよ」

出展:https://numero.jp/interview93/p9

五木田智央を知る為のキーポイント


五木田作品はKAWS、前澤友作、桶田夫妻らなどに所蔵

五木田作品は、現代アート界では有名なKAWS(アーティスト)、前澤友作氏(実業家)、桶田夫妻(アートコレクター)などに所蔵。(別表:五木田作品の過去所蔵歴)

前述の<メアリー・ブーン・ギャラリー>および、2014年の国内美術館での自身初の展覧会「THE GREAT CIRCUS」でも展示された《Showgirl》(2013)は、アーティストのKAWSに所蔵されている。KAWSは2015年アメリカでの展覧会「A SHARED SPACE」で、所有している五木田作品10点(絵画9点、彫刻1点)と並べて自身の新作を展示するという試みを行なっており、「絵画をコレクションすることは毎日いつでもアクセスできる図書館を建設するようなもの。まずは自身の楽しみのためにコレクションするが、同時に自分が生活し働くこの世界を理解するためでもある。あるアート(とアーティスト)を理解することは、他のアート(とアーティスト)を理解することに繋がり、とてもエキサイティングだ。」と語っている。(5)

関連作品

《Showgirl》 2013年 アクリルグワッシュ、木炭、ジェッソ、カンヴァス 227.3 x 181.8cm
出典:https://maryboonegallery.com/exhibition/455/work

「A SHARED SPACE」での展示の様子
出典:https://newcombartmuseum.tulane.edu/portfolio-item/kaws-shared-space/

国内外のアート市場で高く評価される五木田作品ー2019年の落札総額は前年の3倍を超える伸び

五木田作品のオークション落札総額は、2015年から顕著に伸び始め、2017年$444,565、2018年$2,248,654、2019年$7,432,054と右肩上がり。2019年の落札総額は前年の3倍を超える伸びを示している。2017年の最高落札額は$145,000だったものの、2018年には《Club Mature》(2015)が$660,000で落札と大幅に伸長、さらに2019年5月には《Be Just Like Family》(2015)が想定落札価格の3.5倍にあたる$880,000で落札され、自身のオークションレコードを更新した。(6)

関連作品

《Be Just Like Family》2015年 アクリルガッシュ カンヴァス 193.8 x 259 cm
出典:https://www.artsbma.org/event/be-just-like-family/

五木田智央のアート作品について


「展覧会のポスター用に1枚早く仕上げろという指令が来たのが、個展で香港にいた今年1月。帰ってきてすぐキャンバスに向かいました。最初は『THE GREAT CIRCUS』の時期に近い作風を試みて仕上がりも悪くなかったんですが、翌朝、アトリエであらためて見てダメだなと思った。せっかく新曲を発表するんだから、ちょっと前のと似たような曲だとね、ということですよ。
ちょうどその日、ギャラリーの方から電話があって、進み具合を聞かれて、できたけど消しちゃいましたと答えたら『大丈夫ですか!?』と叫んでいました。真っ白なキャンバスを前にして、焦りながら昔のエロ本をパラパラ見ていたら、両手を上げた女性の写真があって、それをヒントにしたのが『Come Play with Me』。この絵を描いて、目の前が開けた感じがありました。『ランジェリー・レスリング』時代に戻ったというか、絵を描くのが楽しかった頃の感覚を思い出しました」

出展:https://numero.jp/interview93/p4

2018年開催の個展「PEEKABOO」では約40点もの作品を展示。そのおよそ半分は新作、かつ半年足らずで描き上げたものであり、五木田の旺盛な制作意欲が伺える。(7)メインビジュアルとなる《Come Play with Me》(2018)は、スポットライトを浴びて舞台に立つダンサーのようにも見え、濃淡のコントラストが強調されてドラマティックな画面効果が生み出されている。(8)展覧会のポスターとして早く仕上げることを要求される中、一度描いた絵を「昔の作風に似ている」とのことで一旦全て消し、ふと見た雑誌の女性の写真からインスピレーションを受け一気に仕上げたという作品だ。五木田は「この絵を描いて目の前が開け、絵を描くのが楽しかった頃の感覚を思い出しました」と語っており、その後1ヶ月半で16枚の新作を仕上げている。(9)

関連作品

《Come Play with Me》2018年 アクリルグワッシュ カンヴァス 259×194cm
出典:https://www.operacity.jp/ag/exh208/j/exh.php

前述の個展「PEEKABOO」の最後の展示室の作品が、800点以上のドローイングからなる《Untitled》(2008, 2014-15)(写真右側)だ。もともと3つの集合体に分かれていたものを、五木田自身がフレームも手作りしながら3日をかけて再構成したものである。黙々と作業しているうちに自然な丸い形になったとのことで、本人も特に印象に残っている作品として挙げている。(10)

関連作品

《Untitled》2008年 2014年 2015年 mixed media
出典:https://www.operacity.jp/ag/exh208/j/gallery.php#20

五木田は自身の作品について、「コンセプトはない」と語る。 (11)創作過程から、即興で絵を描いているように捉えられる五木田だが、一方で、影響を受けた画家として、国内では横尾忠則、湯村輝彦、大竹伸朗、海外ではマルセル・デュシャン、ジュリアン・シュナーベルなどを挙げている。(12) 2014年に展覧会を開催したDIC川村記念美術館の学芸部担当課長である鈴木尊志によれば、「五木田は青春期にニュー・ペインティングの洗礼を受けつつ、キュビスム、シュルレアリスム、ポップアート、コマーシャル・デザインなどの多様な要素を自己流に取り込みながら昇華している」、ともされている。(13)五木田は「模倣は得意だが、自己模倣は楽しくない、いつも新しく何かを試している」とも語っており、これからも新たなチャレンジで観る者を楽しませてくれるのであろう。(14)

<別表 五木田作品の過去所蔵歴>(15)

<参考文献>

(1)PEEKABOOカタログ、東京オペラシティ文化財団、2018年

(2)https://www.japandesign.ne.jp/interview/gokitahouse-2/

(3)https://www.cinra.net/interview/201409-gokitatomoo

(4)美術手帖2014.12, 228-235ページ

(5)

http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/20141225_tomoogokita.html#highlight

https://newcombartmuseum.tulane.edu/portfolio-item/kaws-shared-space/

(6)https://www.artprice.com/artist/310953/tomoo-gokita/index

(7)http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/20141225_tomoogokita.html#highlight

(8)https://www.cinra.net/interview/201409-gokitatomoo

(9)https://www.operacity.jp/ag/exh208/j/exh.php

(10)PEEKABOOカタログ、東京オペラシティ文化財団、2018年

(11)https://numero.jp/interview93/p4

(12,13)https://forbesjapan.com/articles/detail/25977/2/1/1

(14)広告批評2000.02 64-67ページ

(15)

THE GREAT CIRCUSカタログ、DIC川村記念美術館、2014年

PEEKABOOカタログ、東京オペラシティ文化財団、2018年

https://nodehotel.com/

https://casabrutus.com/design/44863

https://news.artnet.com/art-world/im-buying-collector-alan-lo-1710126

ANDARTにてお取り扱い中作品


《LAZY BONES》2014年 アクリルグワッシュ カンヴァス 80.3×65.3cm

作品詳細はこちら(ANDARTホームページ)