ストリートとアートの間を華麗に横断する才能 バリー・マッギー

バリー・マッギーはサンフランシスコにて「TWIST」というタグネームを使ったストリートアートからアーティスト活動を開始。ニューヨークの<アレッジド・ギャラリー>に参加し「Beautiful Losers」展にも関わったことで知られる。この展覧会は世の中から”落ちこぼれ(ルーザーズ)”と烙印を押されたストリートの若者を取り上げたもので、のちに映画化もされて一大ムーブメントを巻き起こした。アイルランド系と中国系の両親の元に生まれたという個性的エスニシティや、グラフィティ文化出身という背景からも注目を集め、都市生活の孤独や貧困に対する問題提起など、社会的メッセージを込めた作品も多い。(1)

ストリートアート出身ながら現代アートの世界でも徐々に評価を受け、世界各地の美術館で年間数本のプロジェクトをこなし精力的に活動している。メガギャラリーである<PERROTIN(ペロタン)>への移籍が決まり、同ギャラリーにおいて香港・東京と続けて個展を開催していることから、今後アジアでも人気が高まることが予想される。

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概要


出典:https://www.timeout.com/newyork/news/graffiti-artist-barry-mcgee-brings-streets-smarts-to-his-latest-gallery-show-010818

出生  1966年生まれ

出身地 アメリカカリフォルニア州サンフランシスコ 

学歴  1991年サンフランシスコ・アート・インスティチュート卒業

所属  PERROTIN(ペロタン)、Ratio3

URL  https://www.perrotin.com/artists/barry_mcgee/774#news

主な活動歴


1984年 「TWIST」というタグネームでグラフィティを始める

1992年 ニューヨークのアレッジド・ギャラリーに参加

1993年 サンパウロのラザール・シガール美術館で初の個展開催

1994年 サンフランシスコのイエルパ・ブルナ芸術センターでアメリカ国内では初となる個展開催

1999年 ジェフリー・ダイチの「ダイチ・プロジェクト」内において個展開催

2001年 ヴェネツィア・ヴィエンナーレに参加

2002年 ミラノのプラダ財団で個展開催

2007年 東京のワタリウム美術館で個展開催

2013年 テキサス州フォートワース現代美術館で個展開催

2017年 東京のワタリウム美術館でパートナーであるクレア・ロハスとの2人展開催

2019年 ペロタン香港で個展開催

2020年 ペロタン東京で2月から3月にかけて個展開催 (2)

作品の特徴


《Portrait #1》1997年Acrylic on paper envelope.15.9×13.7cm

出典:https://www.phillips.com/detail/barry-mcgee/NY000208/396?fromSearch=barry%20mcgee&searchPage=1

バリー・マッギーの代名詞といえば、独特の苦味を醸し出す「顔」のモチーフだ。マッギーは1984年に「TWIST」のタグネームでグラフィティアーティストとして活動を開始。サンフランシスコにはメキシコ移民のアーティストが多く、彼らが手がけていた政治的なメッセージを含む壁画などから影響を受けたといわれる。1991年の大学卒業後は市内のアーティストグループ「ミッション・スクール」(都市生活の希望と悲哀や、それに隣接するフォーク・アートやアウトサイダー・アートなどを特徴とする)の一員として活動し、この頃から「顔」の作風で認知されている。これらの「顔」は路上のホームレスや現代の都市生活者のポートレートともいわれ、またホーボー文化の影響も指摘される。ホーボーとはアメリカに以前存在した季節労働者で、根なし草的な移動をしながら独自の文化を発展、「モニカー」という落書き言語も発明していた。実際、マッギーの個展ではホーボー関連の資料も過去に展示されている。(3)

僕の作品に登場する人たちは、ストリートで見かける人たちなんだ。アメリカのストリートは絶望しているんだよ。

美術手帖、2000年4月号、47ページ (4)

バリー・マッギーを知る為のキーポイント

ストリート・アートから活動を始め、現代アートのフィールドでも支持を得て双方を自由に往来

一般的に、ストリート・アートの実践者が現代アートのフィールドへ活動を拡大すると、「転向」と見なされかつてのファンが離れることがあるといわれる。しかし、マッギーは例外的に幅広いオーディエンスの強い支持を受け続ける稀有な存在だ。グラフィティと現代アートが異なる枠組の中にあることを認識しつつ、「ギャラリーでやるときもグラフィティのフィーリングを忘れないようにしている」という姿勢がファンを惹きつけるのであろう。

ジェフリー・ダイチ(ロサンゼルス現代美術館長、アートディーラー)は自身が主宰したダイチ・プロジェクトで行われた1999年の個展「The Buddy System」のオープニングの熱狂ぶりを語っている。(5)

「オープニングの日に人がたくさん来ることは予想していたよ。でも、その何日も前からすぐ脇の路上でキャンプをして待つ人がいるなんで想像もしなかったし、展覧会がオープンしたら、熱狂的なファンが無数に押し寄せたんだ。(中略)彼は、ギャラリーの入り口すぐ横の階段のところで、ブラック・ブックにタグやドローイングを描いて欲しいってせがむファンたちに囲まれながら一晩中過ごしていた。」(ジェフリー・ダイチ)

アゲインスト・リテラシー ーグラフィティ文化論、大山エンリコイサム、LIXIL出版、2015年
(6)

多岐にわたる素材・技法を取り入れ、抽象度の高い独自のスタイルを追求

マッギーは、マルチパネル・ペインティング、額装作品、個々に絵を描いた陶器やボトル、写真の利用など、多岐にわたる素材や技法を追求しており、彼の多才さとアートへの包括的なアプローチを示すものとなっている。こうした多様な要素は、出身地であるサンフランシスコ特有のコミュニティや多様性の感覚を想起させるものでもある。(7)

ペインティングの内容に着目すると、具象(文字・数字など)と抽象(幾何学的で色鮮やかなパターン絵画)が、ない交ぜとなっている。彼がグラフィティ文化出身であることから、文字・数字の意味よりもその造形のスタイル、外見的な“かたち”を重視して創作しているともいわれている。(8)

関連作品

《(i) Untitled (blue face bottle) (ii) Untitled (blue face bottle)》2006-2007年 Acrylic on glass bottle 20.5 x 9.5 x 4 cm.16.5 x 7.5 x 3.5 cm.

出典:https://www.phillips.com/detail/barry-mcgee/UK000209/169?fromSearch=barry%20mcgee&searchPage=1

KAWSのキャリア初期から親交を深める

マッギーは、現代アメリカを代表するアーティストの1人であるKAWSのキャリア初期から親交がある。屋外の広告などにグラフィティアートを描いていたマッギーが、そのとき持っていたバスの待合所と公衆電話のブースの鍵をKAWSに渡したのだという。KAWSはそこにアートを描き始め、さらには地下鉄の表面にもアートを残すようになり徐々に有名になったというのだ。(9) 彼らは1997年には共同作品を制作、またマッギーの作品はKAWSのブルックリンの自宅に飾られていることでも知られる。(10)

KAWS自宅での展示風景、画像右奥の壁にマッギーの作品が展示されている

出典:https://plainmagazine.com/brooklyn-home-street-artist-kaws-art-design-art/

ユニクロやBEAMSなどコラボ実績も多数

特徴的なキャラクターや造形のスタイルをもつマッギーは、企業とのコラボ商品も多く手がけている。キャラクターを印字したユニクロUT、幾何学模様を生かしたクマ型フィギュアのBE@RBRICKのほか、ペロタン東京での個展に合わせてBEAMSともコラボレーションを実施。BEAMS原宿にて2020年2月に「バリー・マッギー ポップアップストア」をオープンし、Tシャツ、キャップ、トートバッグなどを販売している。(11)

ユニクロ SPRZ NY UT バリー・マッギー

出典:https://www.uniqlo.com/jp/kw/detail-412100001/

Barry McGee Pop-Up Store(バリー・マッギー ポップアップストア)

出典:https://www.beams.co.jp/news/1846/

近年のオークション落札総額は右肩上がり

ストリートのみならず現代アートの世界でも徐々に評価を受けており、特に2015年以降、マッギー作品のオークション落札総額は右肩上がりの伸びを示している。2017年の落札総額は約$12万程度だったが、2018年は約$29万、2019年は約$32万と近年の伸び幅が大きい。これまでで落札価格が最も高い作品は《61 Framed Works》で、想定落札価格のおよそ1.5倍にあたる$122,232で落札された。(12)

関連作品

《61 Framed Works》2005年 acrylic paint on panel, spray paint, pen, screenprint, graphite, coloured pencil, photograph, collage, wood, found frames およそ463 x 229 x 20.5 cm

出典:https://www.phillips.com/detail/barry-mcgee/UK010214/208?fromSearch=barry%20mcgee&searchPage=1

バリー・マッギーのアート作品について


「ダイチ・プロジェクト」内での個展「The Buddy System」 -1999年

前述のジェフリー・ダイチ主催の個展では、壁全面を赤く塗り、トレードマークである「顔」や滴、文字などが表現された。力強いグラフィックでありつつ、都市生活の中で排除された人たちへの眼差しや共感を感じさせるものとなっている。(13)

関連作品

「The Buddy System」での展示風景

出典:https://deitch.com/archive/exhibitions/the-buddy-system

ミラノのプラダ財団での個展「Today Pink」-2002年

この個展では、自動車事故のあとを思わせる打ち捨てられた車、壁のペイントからなる混沌としたインスタレーションが展示された。車の外側には主に文字からなるグラフィティ、壁にはトレードマークの「顔」などが描かれ、現代の都市生活における疎外感や危険を想起させる大規模な展示となり、大きな注目を浴びた。(14)

「Today Pink」カタログ

出典:http://www.fondazioneprada.org/project/barry-mcgee/?lang=en

ボストン現代美術センターでの個展「Mid-Career Survey」-2013年

題名の通り、これまでのキャリアを振り返るかのような多数のペインティングを集めたインスタレーションが展示された。マッギーが常に注目してきたストリートに暮らす人々の息づかいが感じられる作りになっている。(15)

関連作品

「Mid-Career Survey」での展示風景

出典:https://www.brooklynstreetart.com/2013/04/10/barry-mcgee-mid-career-at-ica-in-boston/

パートナーであるクレア・ロハスとの2人展「Big Sky Little Moon」-2017年

本展では2人の作品が混ざり合って飾られた。マッギーのカラフルな模様やトレードマークの「顔」に加え、クレア・ロハスの抽象的な壁画など、作風は異なるが色彩・構図などに共通点も感じられる。(16)

関連作品

「Big Sky Little Moon」での展示風景

出典:https://ginzamag.com/culture/barrymcgee-exhibition/

サンフランシスコで「TWIST」のタグネームから出発したマッギーは、社会的な風刺やストリートの現実に根ざしたメッセージ性の高い表現を続けてきた。近年は抽象的な表現が増えているが、インタビューなどでは常に社会や政治への課題意識を語っており、今後も何らかのかたちで表現を続けていくのだろう。ストリートとアートの間を華麗に行き来しながら伸び伸びと創作活動を続けるマッギーに、これからも注目したい。(17)

世の中にクソみたいなことがある限り、自分のやっていることが成功しているなんて感じられない。これは、みんなで乗り越えなきゃいけないことなんだ。1、2人がいい車に乗って、お金を持って好きなことができたって、もちろん個人がやりたいことに文句はないんだけど、それと“成功が何か?”ということとは関係がないんだ。“成功”というものは、みんなが一緒になって、少しでも現実の前に立てるようにならなければいけないんだよ。

https://www.honeyee.com/feature/art-culture/000152 (18)

<バリー・マッギー作品の過去所蔵歴>

<参考文献>

(1)(3)(5)(6)(8)(17)アゲインスト・リテラシー ーグラフィティ文化論、大山エンリコイサム、LIXIL出版、2015年

(2)同上、https://www.perrotin.com/artists/barry_mcgee/774#biography

(4)美術手帖、2000年4月号、47ページ

(7)(19)https://www.perrotin.com/artists/barry_mcgee/774#biography

(9)https://www.highsnobiety.com/tag/kaws/

(10)https://plainmagazine.com/brooklyn-home-street-artist-kaws-art-design-art/

(11)https://www.uniqlo.com/jp/kw/detail-412100001/

http://www.medicomtoy.co.jp/prod/dt/8/49/13971.html

https://www.beams.co.jp/news/1846

(12)https://www.artprice.com/artist/230866/barry-mcgee

(13)https://deitch.com/archive/exhibitions/the-buddy-system

(14)http://www.fondazioneprada.org/project/barry-mcgee/?lang=en

(15)https://www.brooklynstreetart.com/2013/04/10/barry-mcgee-mid-career-at-ica-in-boston/

(16)https://ginzamag.com/culture/barrymcgee-exhibition/

(18)https://www.honeyee.com/feature/art-culture/000152

ANDARTにて取り扱い中の作品


《Untitled》2018年 Acrylic Gouache & Spray-paint on Canvas 154×133cm

作品詳細はこちら(ANDARTホームページ)