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ポップアートの先駆者 ジャスパー・ジョーンズを解説

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ジャスパー・ジョーンズとは

ジャスパー・ジョーンズ(Jasper Johns/誕生日1930年5月15日)は抽象表現主義、ネオ・ダダやポップアートの先駆者とされる画家、彫刻家、版画家。代表作はアメリカの星条旗を描いた《旗》シリーズ、《4つの顔のある標的》など。1993年、高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門受賞。2011年にはオバマ大統領(当時)から大統領自由勲章を受賞し、名実ともにアメリカを代表する作家だ。

画像引用:https://www.hollywoodreporter.com/

ジョーンズの経歴

出生地はジョージア州オーガスタ。両親が離婚したため、幼少期をサウスカロライナ州で祖父母とともに過ごす。その後一年間は母親と、以降は叔母と暮らし、不安定な環境で育った。

1947年から48年にかけてサウスカロライナ大学で美術を学んだジョーンズは、49年ニューヨークに移動し、パーソンズ美術大学に入学。52年から53年の朝鮮戦争間は徴兵されて、日本の仙台に駐留していた。

1954年、兵役を終えてニューヨークに戻ったジョーンズは美術家のロバート・ラウシェンバーグに出会い、意気投合。後に彼らはカップルだったことが示唆されている。1956年から58年の間、二人でティファニーのウィンドウディスプレイデザインを手掛けた。

同じ時期にゲイカップルのマース・カニンガム(振付師)とジョン・ケージ(作曲家)からも影響を受けたジョーンズは、この頃から国旗、数字、標的やアルファベットなどをテーマにした作品を発表し始める。

1958年、ラウシェンバーグのアトリエを訪れた美術商のレオ・カステリがジョーンズの才能に惚れ込み、即座に初個展をオファー。個展では、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の館長アルフレド・バルが彼の作品を4点購入。ここで代表作《旗》(1954-55年)が展示され、美術界に衝撃を与えた。

1963年、ジョーンズとケージはニューヨークに現代パフォーマンス芸術財団(現在の現代美術財団)を創設。77年には、ホイットニー美術館をはじめとする世界各国の美術館を巡回する回顧展を開催。

左:ジャスパー・ジョーンズ 右:ロバート・ラウシェンバーグ
画像引用:https://www.formidablemag.com/

ネオ・ダダとは

1950年代から60年代のニューヨークで起きた芸術運動のこと。その代表的な芸術家がジョーンズとラウシェンバーグである。

ネオ・ダダの手法は、廃物(ジャンク)や印刷物、日用品などの大量消費社会が持つ俗悪さのイメージを表すような既製品を素材にコラージュなどで制作する。50年代アメリカでは抽象表現主義が全盛期を迎え、彼らはその影響を受けつつも、その手法で新しい表現方法を打ち出した。従来の芸術の概念を否定するような反芸術的な傾向がアンディ・ウォーホルなどの後の世代に続く道を拓いたのである。ジョーンズがポップアートの先駆者と呼ばれる理由はここにある。

アンディ・ウォーホルについての記事はこちら

ジャスパー・ジョーンズの代表作品

反骨的な精神で新しい表現を生み出したジョーンズは、標識や地図、数字などの日常的な事物を本来の持つ意味を排除して、平面的な「オブジェ」として描くことにこだわった。ここでは彼の代表的な作品を紹介していく。

《旗》

《旗》(1954-55年)
画像引用:https://www.wikiart.org/

《旗》は、星条旗という記号が持つ「アメリカ」の意味を排除して、絵画として仕上げた作品。色彩を重ねた新聞のコラージュで制作。これはフランスの美術家マルセル・デュシャンの作品《泉》(1917年)(既製品の男性用小便器を横に倒して、《泉》と名付けた作品)の応用だとされている。

《4つの顔のある標的》

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《4つの顔のある標的》(1955年)
画像引用:https://www.wikiart.org/

ダーツの標的をモチーフにして、上部にはめ込まれた人間の石膏がまるでこちらを見ているかのように見える。ジョーンズは自身の性的指向を明言したことはないが、同性愛者嫌悪の傾向が強かった当時の時代の生きづらさなど、彼の社会への葛藤の意味も込められているのではないかと言われている作品。

《四季》

《四季(春)》(1987年)
The Seasons (Spring) 1987 Jasper Johns born 1930 Presented by the American Fund for the Tate Gallery, courtesy of Judy and Kenneth Dayton 2004 http://www.tate.org.uk/

《四季(夏)》(1987年)


《四季(夏)》(1987年)

《四季(秋)》(1987年)

《四季(秋)》(1987年)

《四季(冬)》(1987年)

《四季(冬)》(1987年)
全画像引用:https://www.tate.org.uk/

80年代に入ると人のシルエットなど新しいモチーフが作品に登場。《四季》シリーズは自伝的要素の強い版画作品である。1988年ヴェネツィア・ビエンナーレ(2年に1度開催される国際美術展覧会)でグランプリを受賞した。

特徴的な絵画技法

エンコスティック技法

彼の制作技法の中で特にユニークなのが、蜜蝋を使ったエンコスティック技法である。着色した蜜蝋と樹脂を混ぜて作った絵の具で絵を描くもので、美術史上最古の絵画技法のひとつ。代表作《旗》(1954-55年)もこの技法で描かれている。

リトグラフ版画

リトグラフとは、石板石や金属板を用いて、木版画と違い原版を彫らない版画技法。油と水が混ざらない性質と化学反応を利用して、版にインクが付くところと付かないところを作る版画である。1960年以降、ジョーンズは様々な版画技法を研究し、最終的に行き着いたのがリトグラフだった。

また、たびたび日本を訪れていたジョーンズは18世紀の歌舞伎演目『新薄雪物語』の「薄雪」という言葉に興味を持ち、1974年から2004年にかけてリトグラフで「usuyuki」シリーズを制作。同シリーズ内で絵画、ドローイング作品も展開し、2019年東京・表参道で展覧会「usuyuki」が開催された。そしてこのクロスハッチング(方向の異なる線を交差させる技法)を用いるきっかけとなったのが、友人から送られたエドヴァルド・ムンクの自画像のポストカードに同じ柄のベッドカバーが描かれていたからだそう。

《usuyuki(1979年)》
画像引用:https://www.tate.org.uk/

アート市場からの評価

2021年5月で91歳になるジョーンズ。彼の作品の販売価格は年を追うごとに上がり、オークション市場、個人取引ともに莫大な値段がつけられ、その人気と評価の高さが窺える。

1988年、《間違った始まり》(1959年)がサザビーズオークションにて1700万ドルで落札(現在で約18億5000万円)。当時の生きているアーティストの作品として、オークション取引金額を更新。2006年には78億円へとさらに値を上げてアートコレクターに売却された。

《間違った始まり》(1959年)
画像引用:https://blog.singulart.com/

2010年、《旗》(1966年)がクリスティーズオークションにて約33億1000万円で落札、2014年のサザビーズでは《旗》(1983年)が41億6300万円の値をつけた。人気の《旗》シリーズのオークション市場価値はこれからも上がっていくだろう。

さらに2010年、ジョーンズの才能を見出した美術商レオ・カステリから相続した息子のジーン・カステリが《旗》(1958年)を約120億円で売却。こちらがジョーンズ作品の取引金額最高額となる。

《旗》(1958年)
画像引用:https://www.nytimes.com/

ジャスパー・ジョーンズを家で楽しむ

書籍

ドイツの出版社がベーシックアートシリーズとしてジョーンズの日本語訳の書籍を出版している。MoMAが購入した作品やダーツ、数字の作品も収録されているため、彼をもっと知りたい人にはおすすめの本。

画像引用:https://www.amazon.co.jp/

ポスター

オリジナルペインティングには手が届かなくても一般に流通しているポスターで自宅にアートを取り入れて、インテリアをアップグレードしたり、家で過ごす時間を充実させたりすることも彼の作品を楽しむ一つの手段だ。

《Zero Nine》(1958-59年)
画像引用:https://www.amazon.co.jp/

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まとめ

画像引用:https://blog.singulart.com/

現代でも人気を誇るポップアートは、ジャスパー・ジョーンズらが新しい表現を打ち出したことにによって道を拓かれていた。ジョーンズの作品は旗や数字などの記号が多く、見た目にはシンプルだが、凝った技法や作品の意図などを鑑みると、彼のアートに対する強い思いが込められていることが感じ取れる。

そして、作品をただ「見る」だけではなく「観る」ことで、現代美術家として彼が歩んできた活動の歴史も理解することができる。インパクトの強さとは裏腹に、その味わい深さが当時も今も人々を惹きつけてやまない彼の作品の魅力なのだろう。