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ポップアートの代表格 ロイ・リキテンスタインを解説

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ロイ・リキテンスタインとは?

ロイ・リキテンスタインは、1923年ニューヨーク生まれのアンディ・ウォーホルらと並ぶアメリカのポップアートを代表する画家。新聞連載の漫画の一コマを大きく拡大してキャンバスに描いた絵画作品で有名である。

出典:https://commons.wikimedia.org/

1940年オハイオ州立大学美術大学に入学し、兵役期間を経て49年に修士号を獲得。その後は同大学で講師をしながら抽象表現主義の作品を制作していた。ある日、自分の息子のためにミッキーマウスの漫画を描いた時、絵画にはない強いインパクトと表現方法があることに気付き、画風を変化させる。

リキテンスタインの作品は、黒の太い輪郭線と赤・青・黄などの原色を用いて、単純だが強烈な印象を与える色彩を油彩で表現している。特に均一に配置した印刷インクのドットの大きさや密度で影を描写し、単純化されたモチーフを平面的に強調しているのが特徴だ。60年代初頭に代名詞となった漫画のコマを拡大した作品を発表し、ポップアート作家として注目を浴びるようになる。長期的なキャリアのなかで、絵画の他にも彫刻や版画作品も手掛けている。

アンディ・ウォーホルとのエピソード

大量生産・大量消費社会や大衆文化をテーマとして表現されるポップアートは1950年代半ばにイギリスで誕生し、1960年代アメリカ・ニューヨークで全盛期を迎える。当時を賑わせていた作家の多くが作品と共に、クレイジーな私生活などで世間の関心を引いていたが、リキテンスタインは現在も派手な逸話が出てこない。そのため「正統派」なポップアート作家だったと言える。

そしてリキテンスタインと同じく、時代を牽引する代表的な作家に挙げられるのがアンディ・ウォーホルである。

ウォーホルがリキテンスタインの完成度の高い作品を見て競争を避けるために、漫画をモチーフにすることを諦め、《キャンベルスープの缶》を作ったことは有名な話。ウォーホルはシルクスクリーン技法を用いて作品を大量生産したのに対し、リキテンスタインは量産される新聞などのマスメディアから、大衆文化である漫画を絵画に持ち込んで世界的に影響を与えることになる。二人ともポップアートを語る上では欠かせない作家だ。

左:アンディ・ウォーホル 右:ロイ・リキテンスタイン
出典:https://sketcheverybloodyday.wordpress.com/

アンディ・ウォーホルについての記事はこちら

ロイ・リキテンスタインの代表作

《Look Mickey》

《Look Mickey》(1961年)
出典: https://www.wikiart.org/

《Look Mickey》は、自身の息子が持っていた絵本のワンシーンを元に制作されており、最初に大衆文化をアートに取り入れた作品だ。絵本の通りに描くのではなく、色彩や構成を簡略化し、吹き出しのセリフも描くことで、より漫画風に表現している。

著作権の問題で、当時『ライフ』誌から「史上最悪のアメリカ人アーティスト」と酷評されることになるが、当の本人は全く気にせず黙々と制作を続けたそう。今ではリキテンスタインの抽象表現主義からポップアートへの転換となる重要な作品として知られている。

《溺れる少女》

《溺れる少女》(1963年)
出典:https://www.wikiart.org/

1963年〜65年の間、リキテンスタインはアメリカの漫画やテレビドラマの典型的なヒロイン像の顔をテーマにして一連の作品を制作していた。大衆の期待のためにドラマティックに涙を流したり、微笑んだりする少女たちの通俗的な感情表現を強烈に表している。

《溺れる少女》は、その中の「ラブ・コミック」と呼ばれる恋愛漫画シリーズの作品で「メロドラマの傑作」とも評される。(メロドラマとは、感情の起伏を誇張した大衆的な恋愛劇のこと。)

《Whaam!》

出典:https://www.wikiart.org/

《Whaam!》は、「ラブ・コミック」と同様に戦争漫画のシーンを取り入れた作品。左側はロケットを発射する戦闘機、右側は炎の中で爆発する飛行機が2枚のパネルで描かれることによって、物語性と空間に奥行きを出している。右側の「WHAAM!」は、日本語で言う「ドカーン!」の意味になるオノマトペである。

ロイ・リキテンスタインを鑑賞できる日本の美術館

日本の美術館にもリキテンスタインの絵画、版画作品が所蔵されている。定期的に展覧会やイベントなどをチェックして、世界的に有名な作品を一度は鑑賞してみたい。

東京都現代美術館《ヘアリボンの少女》

《ヘアリボンの少女》(1965年)
出典: https://ichigoichie.exblog.jp/

リキテンスタインの代表作品として必ず挙げられる絵画作品《ヘアリボンの少女》。東京都現代美術館が1995年開館時に約6億円で購入し、話題を呼んだ。(公式HP

横浜美術館《夢想》

《夢想》(版画集『11人のポップ・アーティスト』より)(1965年)
出典:https://www.pen-online.jp/

その他の所蔵版画作品:《泣く女》(1963年)、《筆触》(1965年)、《ピカソのある静物》(版画集『ピカソへのオマージュ』より)(1973年)
現在、横浜美術館は現在改修工事のため休館中。2023年にリニューアルオープン予定(公式HP

国立国際美術館《日本の橋のある睡蓮》

《日本の橋のある睡蓮》(1992年)
出典:https://www.tate.org.uk/

その他の所蔵版画作品:《スイート・ドリームス,ベイビー!》(1965年)、《ルームメイト(スード・シリーズより)》(1994年)、《『Works by Artists in the New York Collection for Stockholm』より無題》(1973年)(公式HP

オークション市場での価値

1997年73歳で没後、リキテンスタインの作品はその文化的価値とともに値段も上がっている。近年では2020年7月に開催されたクリスティーズ・オークションにて、過去最高額の約449億円を達成。リキテンスタインの《Nude With Joyous Painting》(1994年)が、約49億3000万円の落札価格でセールを牽引した。また、2015年には、同オークションで《ナース》(1964年)が日本円にして約117億円で落札されている。

《ナース》

《ナース》(1964年)
出典:https://www.wikiart.org/

《ヘアリボンの少女》を6億円で購入した東京都現代美術館は、当時「漫画に6億円」と批判を受けた。しかし《ナース》と《ヘアリボンの少女》は同じサイズ、同時期に描かれた同じテーマの作品ということを鑑みると、こちらも《ナース》と同価格、またはそれ以上になる可能性を秘めている。今後もし売却されるようなことがあったら、その市場価値に大注目だ。

ユニクロとのコラボレーション

世界中のアーティストとコラボレーションをするユニクロが、リキテンスタインの作品をプリントしたUTとエコ・フレンドリー・バッグを発売している。ファッションと相性が良いリキテンスタインのアートをオンラインの通販で手軽に楽しむことができる。

出典:https://www.uniqlo.com/

ロイ・リキテンスタインをもっと深く知る

数々の作品を残してきたリキテンスタイン。作品を買うことは難しくても、オンラインで手に入る画集などの本で手元に残すのも良いかもしれない。インテリアの一部としてもフォトジェニックに映える上に、リキテンスタインの生涯や作品の解説をより深く知るにはうってつけだ。

『Roy Lichtenstein 1923-1997: The Irony of the Banal (Basic Art Series 2.0)』
出典:https://www.amazon.com/

『ロイ・リキテンスタイン』
出典:https://www.kosho.or.jp/

まとめ

出典:https://www.sothebys.com/

ポップアートの代表作家として名を残したロイ・リキテンスタイン。画風を変えた初期は批判を浴びたが、全く動じずに最後まで一貫したスタイルで制作を続けた。

大衆文化である漫画を取り入れ、見た目そのもののポップさ、分かり易いシンプルな構成、吹き出しのセリフが入ったキャッチーさなど、リキテンスタインによってアートの解釈の幅がより広がり、一般大衆にもアートが身近なものになったことは、今後も続くアート史において語り継がれていくだろう。

非凡で高い技術力を駆使して、明快な色彩と正確に配置されたドットで描く完成度の高い作品は、当時もこれからも人々の心を掴んで離さないリキテンスタインにしか描けないポップアートだ。


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文:ANDART編集部