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アート解説

アンディ・ウォーホルの代表作「キャンベル・スープ」を3つのポイントで解説

1960〜70年代のアメリカで席巻した、テレビやコミック、広告、プロダクトなど大衆文化や消費社会のイメージを主題とする芸術運動「ポップアート」。その代表的な作家である、アンディ・ウォーホルの「キャンベル・スープ」を題材にした象徴的な代表作品をポイントの3つを解説。

アンディ・ウォーホルとは?

出典:https://therakejapan.com/

1928年、アメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグ生まれ。1949年にカーネギー工科大学(現カーネギーメロン大学)の絵画・デザイン学部を卒業。ニューヨークへ移ったウォーホルは、イラストレーターとして雑誌の広告などの商業美術を手掛けていたが、1960年にファイン・アーティストへと転身する。大衆に親しまれるプロダクトやドル紙幣、広告、セレブリティなどをモチーフにシルクスクリーン技法で作品を量産し、ポップアートの巨匠として美術史に名を残したアーティストである。

キャンベル・スープを知る3つのポイント

誕生のきっかけ

ファイン・アートの世界へ移った当初、ウォーホルはアメリカン・コミックをモチーフに作品を制作していた。しかしある時、同じくポップアーティストであるロイ・リキテンスタインの作品に触れて以来、コミックを題材にした制作からは身を引いてしまう。新たな題材を探していたウォーホルは、友人であったディーラーのミュリエル・ラトウに「キャンベル・スープのような、誰もが知っているものを描いたらどうか」と提案されたことが、不朽の名作「キャンベル・スープ」が生まれるきっかけとなったのだ。

3つのキャンベル・スープ

よく知られているキャンベル・スープの作品は、実際には3つの作品が存在している。一番最初の作品は、1962年アメリカのフェレスギャラリーで展示した《Campbell’s Soup Cans》である。これは、32枚のキャンベル・スープをキャンバスにトレースして描いたもの。機械的に見えてもそれぞれの絵が微妙に違い、細かな部分に手書きならではの味わいが出ている作品。

《Campbell’s Soup Cans》(1962年)
出典:https://www.sothebys.com/

その後、シルクスクリーンで制作されたのが1968年の《Campbell’s SoupⅠ》と1969年の《Campbell’s SoupⅡ》。それぞれ10枚組250部限定の作品であり、ウォーホルが版画の販売のために設立した会社「ファクトリー・アディションズ(Factory Additions)」で制作されたもの。パッケージを見て、それぞれどんな味なのかを想像してみるのも楽しい。

《Campbell’s SoupⅠ》(1968年)
出典:https://www.artsy.net/

《Campbell’s SoupⅡ》(1969年)
出典:https://www.artbasel.com/

フェレスギャラリーでの発表以降、批評家から厳しい意見を浴びながらもウォーホルの知名度・人気度は上がる一方だった。その様子を見て、ギャラリーのオーナー、アーヴィング・ブラムは当時《Campbell’s Soup Cans》を個別に販売したことを後悔して、すでに販売した幾つかの絵画を買い戻し、シリーズを維持させた話は有名である。そして1996年、ブルムは全作品を1,500万ドル(約16.5億)でニューヨーク近代美術館に売却した。

・特徴的な見せ方と作品の意味は?

ウォーホルは、外食できる金銭的余裕が生まれるまでの20年間、毎日ランチにキャンベル・スープを食べていたそう。ウォーホルの下積み時代が垣間見えるストーリーのように、「同じもの」を繰り返し「反復」して見せる表現方法はウォーホルの作品の特徴の一つである。

同じイメージを繰り返し提示することによって、本来それが持っていたイメージや意味のインパクトが薄くなったり、または新しいイメージや見え方が生まれたりする効果が期待できる。それを実現したのが、ウォーホルの代名詞的な版画技法「シルクスクリーン」なのだ。

《Marilyn Monroe》(1967年)
出典:https://www.phillips.com/

より作品を量産できるようになったウォーホルは、「大量生産」と「反復」に焦点を当てた作品を多く発表するようになる。消費社会のイメージを主題とするポップアートにおいて、このキャンベル・スープは、大量に商品を陳列するスーパーマーケットを再現し、大量生産や消費主義を揶揄していると言われている。しかし、ウォーホルは生前「I want to be a machine.(機械になりたい)」と発言していることから、作品には特に何の意味もないのでは、との声もある。

出典:https://www.subculture.at/

日常に浸透した大衆的な製造物をファイン・アートに取り入れた、ポップアートの真髄とも呼ばれるウォーホルのキャンベル・スープ。揶揄や政治的メッセージを込めたというよりも、ウォーホルがアーティストとして自身の芸術表現の追求、または「真の芸術作品とは何なのか?」と私たちに問いかけているだけなのかもしれない。

ANDARTで取扱い中】キャンベル・スープ

ANDARTでは、1968年のシルクスクリーン作品《Campbell’s SoupⅠ》から「Pepper Pot」を共同保有作品として取扱い中。ウォーホルのように非常に人気だったり値段が高かったりして手が届かない作品も、1万円からオーナー権を購入可能。また、オーナー限定の鑑賞イベントなどで実際に作品を目にする機会など、オーナーならではのメリットが用意されている。

他に取り扱っているウォーホルの作品は、《Cow》《KIKU (F&S II.308)》《Lizの3作品。どれも貴重な作品なので、気になる方はぜひチェックしてみてほしい。

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文:ANDART編集部

参考URL
https://www.sothebys.com/en/articles/the-story-of-andy-warhols-campbells-soup-cans
https://www.myartbroker.com/artist/andy-warhol/campbells-soup/
https://www.masterworksfineart.com/artists/andy-warhol/campbells-soup