
写真家「荒木経惟」とは?3分で解説シリーズ
荒木経惟とは?

荒木経惟(あらきのぶよし)1940年5月25日東京都生まれ。「天才アラーキー」の愛称で知られる日本を代表する写真家兼現代美術家。千葉大学工学部写真印刷工学科を卒業後、広告代理店「電通」に入社。広く知名度を獲得したのは、妻陽子の死をめぐる写真集、『センチメンタルな旅・冬の旅』(1991年)以降のこと。愛妻を亡くして以降、妖艶な花々、緊縛ヌード、空景、食事、東京の街、飼い猫、様々な被写体から強烈なエロス(生/性)とタナトス(死)が漂う独特の写真世界を確立。タカ・イシイギャラリーや東京都写真美術館をはじめ、国内外で多くの個展を開催し続けている。
写真以外の活動としては、1981年に映画作品として日活ロマンポルノ『女高生偽日記』の監督、出演。1986年からスライド写真と音楽を同期して投影するライブパフォーマンス「アラキネマ」の制作など。
写真家としての荒木経惟

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アマチュアのカメラマンであった父の影響で幼い頃からカメラに親しむ。学生時代はカメラ雑誌の投稿写真のアルバイトで学費を払っていたという。千葉大学工学部写真印刷工学科に進学するものの、授業は化学の実験ばかりで嫌気がさし、フィルムセンターで映画を見たり写真を撮ったりしてよくサボるようになった。そんな中三ノ輪駅の近くで小学生男児の「さっちん」に出会い、そこで撮った写真で平凡社第1回「太陽賞」を受賞し、写真家としてデビューする。
大学卒業後に入社した電通にて、社内報の撮影で青木陽子と出会い、結婚。この出会いは荒木の写真家人生においてとても重大なものとなる。新婚旅行を記録した「センチメンタルな旅」から始まり、「センチメンタルな旅・冬の旅」に掲載された陽子夫人の遺体写真まで、荒木にとって彼女は荒木作品の中で最も重要な被写体であり、死後もなお彼の創作に影響を与え続けている。
1972年に電通を退社しフリーになり、以来陽子夫人との日常や東京の風景、女性モデルを被写体とした過激なヌード写真などを次々と発表し、現在までに500冊を超える作品集を出版する。
主な展覧会に1999年東京都現代美術館にて「センチメンタルな写真、人生」、2005年東京オペラシティーアートギャラリーにて森山大道との共作「森山・新宿・荒木」、2017年には東京都写真美術館総合開館20周年を記念した「荒木経惟 センチメンタルな旅 1971-2017-」などがある。
2008年、オーストリア政府より科学・芸術勲章、2013年異日芸術賞を受賞するなど、日本を代表する写真家として国内のみならず海外評価も高い。
唯一の弟子に写真家の野村佐紀子がいる。
荒木経惟の代表作品
センチメンタルな旅
これまで500冊以上の写真集を出版してきた荒木だが、その最初の作品が1971年に発表した自身の新婚旅行を記録した写真集。それまで私写真など個人的な写真を写真集として出版するという例は少なく、また荒木の自費出版で1000部限定で制作するという挑戦的な作品となった。序文には荒木直筆の「私写真家宣言」が挿入されている。
さっちん

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1964年に平凡社第1回「太陽賞」を受賞した荒木にとってのデビュー作とも言える本作。雑誌掲載後にネガが紛失したことから写真集になることはなかったが、1994年に受賞作以外のアウトテイクから選出された作品で構成し、新潮社から写真集として出版された。また2017年には幻の受賞作を現代の技術で甦らせ再編集した写真集「オリジナル版 さっちん」も刊行された。
さっちんとは荒木が大学生時代に出会った星野幸夫(さちお)君(当時小学4年生)のことで、荒木は1年にわたりこの少年のことをドキュメントで撮影し続けている。
わが愛、陽子

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1978年、朝日ソノラマから発売。「陽子によって写真家となった」というほど荒木にとってミューズ的存在である妻・陽子にフォーカスを当てた写真集。この作品中には陽子夫人のエッセイも綴られ、夫婦共同制作的な作品となっている。
愛しのチロ

1990年に平凡社から刊行された荒木が飼っていた猫の「チロ」を撮影した写真集。チロは陽子夫人が貰ってきた猫で、夫婦でこよなく愛していた。夫人が亡くなった後も共に生活し、22歳で亡くなるという大往生だったという。陽子夫人はこの写真集をとても楽しみにしていたが、刊行を待たずして他界、棺桶には本書が入れられた。
食事

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陽子の手料理を撮影し続けたシリーズ。食材を至近距離で撮影することによって艶かしさを感じる作品となっている。また、このシリーズはカラーとモノクロの2種類があり、カラー作品は「生」として陽子夫人が元気だった頃の料理、モノクロの作品は「死」として入院していた陽子夫人が一時帰宅を許された際に作った料理を撮影したもの。1993年マガジンハウスから写真集が出版される。
東京日和

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1987年に月刊誌『思想と科学』で始まり、荒木夫妻が東京を散歩しながら陽子夫人がエッセイ、荒木が写真を撮影する連載を元にした作品集。連載自体は夫人の入院により3回で休載となったが、その後荒木の手記や陽子の面影を求めて1人で東京を巡った写真などが綴られている。本書は1997年に俳優の竹中直人によって映画化され、荒木は駅員役で出演した。
左眼ノ恋

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2013年に荒木は網膜中心動脈閉塞症のために右眼の視力を失う。2014年にポジフィルムの右部分を黒く塗りつぶした作品や、右側だけフォーカスを外して光のハレーションを捉えた左右2枚組の作品など、自らの失明を作品に落とし込んだ「左眼ノ恋」というシリーズを発表する。2015年、同名の展示がタカ・イシイギャラリーで開催された。
荒木経惟の作品の特徴
私写真

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荒木の初の写真集『センチメンタルな旅』の序文でも描かれていたように、荒木は自らの作品を「私小説」改め「私写真」と表現し、これは彼の代表的な作品スタイルとなっている。陽子夫人や風景など、自分と身近な他者との関係性や日常を題材に、リアルに色濃く表現した作品を撮影する。被写体と撮影者の間の関係性が濃密に映り込むことで、真実味を帯び、その中に物語を見出すことができる。
エロトス

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エロトスとは荒木の代表的な制作テーマであるエロス(生、性)とタナトス(死)を組み合わせた造語。荒木は陽子夫人の死や自身が患った前立腺癌によって死に直面した経験を受け、「生」やそれにつながる「死」を表現するようになる。『遺作 空2』とタイトルがつけられた写真集の中には荒木にとって死を表すモノクロ写真にカラーの絵の具や写真が重ねられ、1枚の作品にの中にまさに生と死を表した作品が綴られている。
東京

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荒木の作品は東京を舞台に撮影されたものが多く、また写真集のタイトルにも1989年『東京物語』1997年『東京コメディー』、2009年『トーキョー・アルキ』など「東京」と名のつくものが多い。荒木にとって東京は単なる地元というだけでなく、彼の青春時代や陽子夫人の面影を残す街であり、日々変わりゆく街並みや人は彼の優れた被写体となっているのだろう。
緊縛

荒木といえば、緊縛された女性のヌード写真を思い浮かべる人も多いだろう。縄に縛られ、裸で宙に浮く女性の写真などは世界に衝撃的を与えた。このような緊縛写真は、緊縛される者(被写体)と緊縛する者(撮影者)との間にある信頼感や濃密な関係性を感じさせる。過去にはモデルの水原希子や歌手のレディー・ガガともコラボレーションし、彼の緊縛を受けている。ANDARTでもレディー・ガガの緊縛写真《Koki No Shashin : Photographs of A Seventy Years Old》を取扱っており、世界の歌姫が荒木のカメラの前で見せた素顔に近い表情は彼女の新しい一面を写し出す貴重な作品だ。
原宿でアラーキー作品に触れる

東京都原宿神宮前にあるアートスペース『artspace AM』では荒木経惟の作品を鑑賞することができる。ここでの展示は約2ヶ月ごとに入れ替えられ、様々なテーマで作品を鑑賞することができる。世間一般的に知られる“アラーキーの作品”の印象とは異なり、風景や静物を撮影した作品も多く鑑賞できるので、荒木ファンはもちろん、あらゆる写真好きの方が楽しめるであろう展示だ。
現在開催されている展示は『荒木経惟写真展「春枯れる」』で、これは6月6日(日)まで開催される予定なので気になる方はぜひ足を運んでみてほしい。
荒木経惟のオーナー権を購入
ANDARTでは荒木経惟の作品を取り扱っている。オーナー権は、数量限定で発行される優待付きの権利。オーナー権を保有している会員は、保有者限定の優待を受けることができる。ANDARTでは荒木のような著名なアーティストの作品も、“シェアする”という形で気軽にコレクションすることができる。そして価値が上がったアート作品のオーナー権はサービス内で簡単に売買することができ、そこで利益を得ることができる可能性もある。荒木の作品をコレクションしようとすると、貴重な作品ほどとても高価な取引となってしまうが、ANDARTでは1枠10,000円からオーナー権を購入できる。美術品はその価値を判断するのが非常に難しいこともあり、個人で購入するよりも安心感があるだろう。
また、オーナーには特典や優待イベントなどもあるので、デジタル上で手軽にアートコレクションしたい人や部屋に作品を置くスペースがない人、アートのオーナー権を投資感覚で売買してみたい方などはぜひ利用して欲しい。

まとめ

画像引用:http://www.switch-pub.co.jp/
「70は写真の入り口、100まで生きねば写真が撮れぬだろう」というコメントを残している通り、80歳を過ぎてもなお精力的に活動する荒木経惟。「傘寿」となった年には50点以上にも及ぶサイン入りの新作ポラロイド作品を制作するなど、写真家としての地位を確立した今もなお様々な挑戦を行なっている。今後も荒木の中で変化し続ける世界との関係性を、写真を通して世の中に発信し続けてくれることだろう。