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アート解説

エネルギッシュな筆跡がダイナミックに光る!山口歴とファッションの絶妙な相性

アートの楽しみ方とは、美術館に足を運んだり、家に絵を飾ってみたりするだけにとどまらない。かねてよりアートとファッションは近しい関係にあり、アーティストとデザイナーの間では様々なコラボレーションが生まれてきた。そうした中で、昨今ではとりわけ、ストリートアートやグラフィティを含む現代アートとファッションとのコラボが活性化している流れがあり、いずれのシーンも目が離せない。

鑑賞だけにとどまらない、アートの魅力とは何か?今回は前回のKAWSに続き「アートとファッション」というテーマで、ANDART編集部が注目しているアーティストの一人、山口歴の世界観とファッション界とのコラボ模様に迫ってみたい。

山口歴とは?

大胆で躍動感あふれる筆跡(ブラッシュ・ストローク)を、PC上でコラージュして再配置する「カット&ペースト」という独自の手法で知られる、山口歴。90年代から2000年代初頭にかけて、多感な時期を裏原宿で過ごしたことも大きいのだろう。その独自のスタイルには、先鋭的なストリートカルチャーからの影響が色濃く反映されている。

画像引用:https://heapsmag.com/

そんな山口歴の生み出す世界観は、ファッション界からも注目されており、これまでにも様々なコラボが生まれてきた。今回はその一部を紹介したい。

山口歴×ISSEY MIYAKE MEN

山口歴が行ったコラボの中でも代表的なのが、2017年に「ISSEY MIYAKE MEN」と行なった、‟OUT OF BOUNDS”シリーズのリリースだろう。‟OUT OF BOUNDS”シリーズをモチーフに、シルクスクリーンで幾重にも染料を重ねて顔料を組み合わせることで凸凹感と光沢を表現したというシャツをはじめ、転写プリントが施されたデニム、さらにインクジェットプリントの大判ストールや花モチーフのカットソーまで、個性的で多彩なアイテムが出揃った。

画像引用:https://www.fashion-press.net/

山口歴の独自のスタイルである、筆跡が立体的に浮かび上がる有様を表現するために、丁寧に施された最先端技術の結晶は、一度目にしたら忘れられない強烈なインパクトを放つ。それとともに、山口のカッティング・エッジな手法と、「ISSEY MIYAKE MEN」がブランド哲学の中に大切に受け継がれてきた「日本の匠の技」という美の遺伝子の融合が織りなす独自の風合いもまた、このコラボの魅力をさらに味わい深いものにしているように見てとれるだろう。

画像引用:https://hues.co.jp/

2017年から2020年にかけて、NikeやUNIQLO、HUFなど、様々なブランドとのコラボを次々と実現!

ISSEY MIYAKE MENとのコラボに続き、2017年にはもう一つ、日本初展開の新業態店舗としてオープンした「ナイキキックスラウンジ表参道」(※2020年9月閉業)の空間アートを山口が手がけたことでも話題となった。

さらに2018年と2019年には、「UNIQLO」とのコラボレーションが実現。シンプルな白地にダイナミックな筆跡が鮮やかに走るTOKYO UTをはじめ、ドライ素材のアクティブウェアなどが発売された。

2020年には、アメリカのストリートブランド「HUF」とのコラボレーションも注目された。カプセルコレクションでは、ポンチョやウエストバックをはじめ、Tシャツやスウェットまで多彩なアイテムの展開に注目が集まった。いずれのアイテムも、筆跡が鮮やかに走っており一目見て、山口歴とのコラボアイテムだとわかるのも、ファンにとっては大きな魅力の一つなのではないだろうか。

画像引用:https://mastered.jp/

山口歴×OAKLEY

直近のニュースとしては、アメリカのアイウェア、アパレルブランドの「OAKLEY」と2020年のコラボ企画が挙げられる。スポーツを愛するすべてのアスリートの心をひとつにするというテーマの「KOKORO COLLECTION(ココロコレクション)」の続作となる新たなコレクションが先般、6月10日に発表されたばかりだ。

画像引用:https://prtimes.jp/

第二弾となるKOKORO COLLECTIONでは、新作アイウェア5モデルに加え、バッグ、Tシャツ、スウェットシャツなどのアパレルコレクションも同時に発売された。自身も「高校時代からずっとオークリーのファンだった」と語るように、山口が敬愛していたブランドとのコラボが、ついに実現したかたちとなる。

こちらのOAKLEYの特設サイトでは、本コラボの制作過程の一部も動画で公開されている。山口がダイナミックに絵の具をストロークさせる様子や、メーカーとの打ち合わせの様子など他では見られないダイナミックな映像が楽しめる、必見の内容だ。ぜひチェックしてみてほしい。

画像引用:https://www.oakley.com/

「ISSEY MIYAKE MEN」「UNIQLO」「NIKE」、さらには「HUF」や「OAKLEY」まで、既定のファッションジャンルの境界線を自在に超えるクロスオーバーなコラボが光る、山口歴。未だ予想もしていなかったような、あっと驚くようなコラボが、今後も実現しそうな可能性は大いにある。常に”最先端”を感じさせるダイナミックでシャープなアートワークはもちろん、ファッション業界とのコラボにおいても、ますます目が離せない存在である。

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文:小池タカエ