
【ゲルハルト・リヒター編】2021年を振り返り!アートニュース総まとめ
2021年も残すところあとわずか。1年の締め括りに、アート界のニュースを振り返ってみよう。今回は「ドイツ最高峰の画家」と呼ばれるゲルハルト・リヒターの2021年の主要ニュースをお届け。(オークションの落札価格は手数料込み、当時のレートで計算)
オークション
▍リヒターの絵画、数百万ドルの価値がつくと判明し売却へ
11月、フランス・リヨン近郊にある小さな町の美術図書館で保管していた《Abstraktes Bild 630-2》(1987年)の売却が決定した。この作品は、1988年に町が当時約10万フラン(約470万円)で購入したもので、専門家によると現在は300万ユーロ(約280万〜330万ドル/約3.9億円)の価値がつく可能性があるという。売却のスケジュールはまだ決まっておらず、セキュリティの懸念から売却前に展示はしないそう。

「Abstraktes Bild 」(アブストラクト・ペインティング)シリーズはリヒターの代名詞とも言える代表作群。スキージ(シルクスクリーンで使われるゴムベラ)などで残す筆致と鮮烈な色を組み合わせて構成される画面は、多くのファンを呼んでいる。ANDARTでは、本シリーズより2014年に制作された16の限定版プリントの一つ《Abstraktes Bild (P1)》を取扱い中。
▍2021年上半期オークション総売り上げトップ10入り
アート市場の情報を提供するArtmarket.comが、2021年上半期の世界のオークション市場で落札総額の高かったトップ10のアーティストを発表。リヒターが落札額9,792万ドル(約108億円)で7位にランクインした。
▍香港のフィリップスオークションで更新続く
全ての開催地を含むフィリップスの2021年春のオークションのロットランキングで、《Abstraktes Bild (940-7)》が約1,226万香港ドル(約13億4,842万円)で落札され、2位を記録。ちなみにトップは奈良美智で、落札価格は約1,595万香港ドル(約17億5,429万円)だった。

《Abstraktes Bild (940-7)》(2015年)
出典:https://www.phillips.com/
11月30日には、同じく香港オークションで落札価格を更新。リヒターの初期の抽象作品の代表作である《Kerzenschein (Candle-light)》が1億197万香港ドル(約14億8,162万円)で落札。本作は同日のオークションで落札価格トップの作品となった。

《Kerzenschein (Candle-light)》(1984年)
出典:https://www.phillips.com/
▍サザビーズ、リヒターの今年最高額を出す
2021年、一番高値がついたリヒター作品は、サザビーズ(ニューヨーク)の「The Macklowe Collection」に出品された《Abstraktes Bild》だった。落札価格は約3,301万ドル(約38億円)。1993年に制作された本作は、代表作シリーズ「Abstraktes Bild」の中でも特に色彩の完成度の高さが評価されている。

《Abstraktes Bild》(1993年)
出典:https://www.sothebys.com/
展示
▍リヒターのインスタレーションをウェブカメラで鑑賞
ドイツ・ミュンスターにある教会でリヒターのインスタレーション作品《Two Grey Double Mirrors for a Pendulum》(振り子のための2つの灰色のダブルミラー)が公開された。これは、鏡張り・高さ6Mの空間で、3億8千年前の岩石でできた目盛り付きの円盤の上を、28.75mのワイヤーにつり下げられた金属製の48キロの球体が往復する作品。この作品は、終日、振り子の上部に設置されたウェブカメラから鑑賞することもできて(こちらから)、アートブックも販売されている。

出典:https://www.stadt-muenster.de/
▍エスパス ルイ・ヴィトン大阪で「Abstrakt」展開催中
ルイ・ヴィトンのアートスペース、エスパス ルイ・ヴィトン大阪で「Abstrakt」展が2022年4月17日まで開催中。ルイ・ヴィトンの20世紀のアートに特化した芸術機関「ファンダシオン」の所蔵作品から選び抜かれた作品が展示されている。詳しくはこちらから。
▍ホロコーストに向き合ったシリーズ「ビルケナウ」日本上陸予定
ドイツ・デュッセルドルフにある美術館で、リヒターがホロコーストに向き合ったシリーズ「Birkenau(ビルケナウ)」を12月18日から展示している。これは、強制収容所の囚人が命がけで撮影して持ち帰った4枚の写真を元に完成させた作品であり、ダークな色調がその恐怖を見る人へ語りかける。本シリーズは来年開催される「リヒター展」で日本初公開の予定だ。

今後の展覧会情報
▍ポーラ美術館で「モネからリヒターへ−新収蔵作品を中心に」開催
開館20周年となる2022年、ポーラ美術館の収蔵品を中心とする企画展「モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」が2022年4月9日〜9月6日で開催される。同展で去年ポーラ美術館が約30億円で落札したリヒターの《Abstraktes Bild (649-2)》が初公開される。

《Abstraktes Bild (649-2)》(1987年)
出典:https://www.sothebys.com/
続く20周年の企画は「歿後50年 ピカソ 青の時代を超えて」を2022年9月17日から2023年1月15日まで開催する。パブロ・ピカソの原点である「青の時代」から晩年までを掘り下げるこちらの展示も見逃せない。詳しくは以下の記事から。
▍待望の大規模個展「ゲルハルト・リヒター展」が開催
リヒターの生誕90周年・画業60周年を記念して、2022年6月7日から10月2日、東京国立近代美術館で「ゲルハルト・リヒター展」が開催される。ホロコーストに向き合ったシリーズ「Birkenau(ビルケナウ)」も本展で初公開となり、会期終了後は愛知県の豊田市美術館へ巡回する予定。展覧会公式ホームページはこちら。
その他
▍リヒターが最も重要な現代アーティストとして選出
1970年から毎年ドイツで発表されている、各部門毎の現代アーティストのランキング「Kunstkompass」において、リヒターが世界で最も重要なアーティストのトップとして選出された。リヒターは18年間連続でトップの座を守っている。ちなみに、「Starts of Tomorrow(明日のスター)」という部門では草間彌生がトップに選ばれた。

出典:https://www.monopol-magazin.de/
▍その他アーティストの2021ニュースまとめ
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文:ANDART編集部