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アーティストインタビュー

山口歴に直撃取材!限界を超えた先に見える景色がある《後編》

前回のインタビューでは、初お披露目となる立体作品や、過去最大級となる平面作品へのチャレンジについて、制作過程も含めて話してくれた山口歴。今回は作品を制作の際に大切にしている姿勢や心構えについて、またニューヨークでの生活やコロナ禍という中で制作をした際の思いなどについてのエピソードを語ってくれた。

作品は嘘をつかない。だからこそ、いつも自分を良い状態に保っていたい

ANDART編集部:
いつもどのような気持ちや態度で、作品作りに臨まれているのでしょうか。制作する上で大切にしていることや心がけていることなどあれば、教えてください。

山口歴:
この作品を制作していた時は、特に後半、仕上げにかけて大事な部分になるので、毎朝5時に起きて筋トレや瞑想をして、しっかりコンディションを整えてからいつも制作に臨んでいました。

自分の今の状態が、全部作品に出る。だから嘘がつけないんです。どんなに言葉でうまいこと言っても、誤魔化せないものって絶対あると思うし、わかる人にはわかってしまう。だからそういう意味でも、自分の状態を整えるのは基本ですし、日々の自分のあり方も含めて表裏なく生きるということが、何より重要かなと思っています。

≪MÖBIUS NO. 17≫ / 山口歴(部分) (山口歴「LISTEN TO THE SOLITUDE」展 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM)

ANDART編集部:
作品は嘘をつかない。すごく心に響く言葉でした。たしかに作品からも大地のエネルギーとか、そういう研ぎ澄まされたものが伝わってきました。お話をお聞きして、普段からしっかりコンディションを整えいらっしゃるからこそ、いい作品ができるし、作品から受け取れるエネルギーみたいなものも大きいのかなと腑に落ちました。

目標を決めてしまうと、それ以上の可能性があっても見逃してしまう

ANDART編集部:
今回、過去最大級の作品サイズにチャレンジされたとお伺いしております。これを踏まえて、これから先どういうものを作っていきたいですか。次に作りたい作品のテーマなどがあれば、ぜひ教えてください。

山口歴:
今はまだ先のことはわかりません。といっても、いつもあまりないんですよ、次に作りたいものとか目標とかって。というのも、目標を決めるとそれ以上はいかないということが往々にしてあると思っているからなんです。目標を立てるってつまり、自分にリミットをかけるってことじゃないですか。これくらい、ここまでって。色々な考え方があると思うので、目標を立てることが合っている方ももちろんいると思いますが、僕の場合はそう考えるのが嫌なんです。

ただ、目標を設定しないかわりに、毎回ギリギリの限界までやる、力を出し切るということは大事にしています。そういう意味では今回も限界までやったので、次に何があるか正直わからないです。

ANDART編集部:
毎回、真剣勝負で全力を出し切ることがやっぱり大事なんですね。目標の捉え方や概念も、ガラッと変わった感覚があります。すごいですね!

山口歴:
恐らくですけど、これも自分の過去の経験からきているものだと思います。僕、芸大四浪してるんですよ。その時は目標を立てて、その時は真剣にやったけれど結局ダメだったので。だからそういうこともあるのかも知れない。目標を設定した時点で、自分にリミットをかけてしまって、結局それ以上はいかないことにあの時気づいてしまったんだと思います。それだけしか、目標しか見えなくなると、それ以外の可能性、本当はあるかも知れないもっとすごいチャンスも目に入らなくなってしまったりすることもあると思うので。もっと自由でいいんじゃないかな、と思います。

もっと自由に、多くの人がアートを楽しめる場があったら

ANDART編集部:
貴重なお話をありがとうございます。それでは現在ニューヨークを拠点に活動されている山口さんの目から見て、日本のアート界をどのようにご覧になっているかお伺いできたら嬉しいです。また山口さんご自身が、精力的に関わっていらっしゃる他業種とのコラボレーションについても、ぜひお聞かせいただけますか?

山口歴:
私見ですが、例えばアーティストを志そうと思っても、いわゆる模範的なコースがあって、ここをステップアップしていくと評価されるとか、逆にここに出ないと評価されないとか、そういうこともあるのではと感じることがあります。日本に限ったことではないことかもしれないですけど、少なくとも僕が日本にいた頃はそうだったように自分は思ったので、そういう意味ではもっと自由でいいのかな、と思います。せっかく皆すごい可能性をもっていても、そういう環境的な要素で狭められちゃうのは本当にもったいないですよね。そういうこともあるので、アートの裾野を広げるという意味でも、よく僕はファッションとのコラボをしているんです。若者はやっぱりTシャツとか好きだと思うので、そういうものを色々展開してみたり。やっぱり結局は、そういう若い層にも展覧会に来て欲しいですし、もっとアートに親しんでもらえたらいいな、という思いがあります。

ANDART編集部:
そうですよね。ちなみに今日着ていらっしゃるのは、山口さんがコラボに関わられた、ISSEY MIYAKE MEN(イッセイミヤケメン)のシャツですよね。

山口歴:
そうです。やっぱりファッションからだとアートに入りやすいんじゃないかなと思います。それから僕の場合、両親がファッションデザイナーだったので、そういう部分も大きいと思います。だから、ちゃんと後に繋いでいきたいという思いもありますね。元々ファッションというメディアに自分のアートを絡めて発信するのは好きなので、これからも色々なブランドとのコラボレーションは続けていきたいです。

山口歴。新作立体作品 ≪PROMINENCE NO. 1≫ の前で。 (山口歴「LISTEN TO THE SOLITUDE」展 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM)

常に自分の感覚を研ぎ澄ませて、素直に表現していきたい

ANDART編集部:
色々なお話をありがとうございます。では最後の質問になります。今回の新作はコロナ禍の中で作られたものですよね。NYでの制作はかなり大変だったのではないかと思うのですが、そういった影響についてはいかがですか。

山口歴:
それは、ないと言えば嘘になりますが。なるべくそういうことには触れないように、いつも通り過ごすようにしていました。今は不安になってしまうようなニュースばかりが情報として溢れているので、そういうものに振り回されてしまうくらいだったら、自分の心を平静に保てるような環境を作ることも大事なんじゃないかと思います。

ANDART編集部:
たしかにそうですよね。今回色々とお話を伺って、改めてマインドの部分だったり日頃作品に向き合うあり方や姿勢が大事なんだなと思いました。

山口歴:
そうですね。自分のコンディションをいつも良い状態に保つことは、本当に大事なことだと思います。そういう意味でも、瞑想はおすすめです。続けていると客観的になれて、自分軸みたいなものがわかってくるんです。例えば今考えていることが自分の内から出てきたものか、他人の思考に影響されて出てきたものなのか、ということが段々見えてくるようになるんです。人は感情の生き物なので、自分の気持ちを観察してちゃんとコントロールできるようにならないと、いいものは作れないですからね。

ANDART編集部:
自分自身の感覚や感性を研ぎ澄ませていくこと、これからは特に大事かもしれないですね。

山口歴:
そうですね。そういう感覚を研ぎ澄ませていくことが、自分の作品にも良い影響を与えていくと思うので。あと大事なのは自分が好きなものがわかった上で、素直に出せるかどうか、というところですよね。自分の感覚を大切に、正直になって、嘘のないものをこれからも真っ直ぐに表現していきたいです。

山口歴。過去最大級の新作 ≪MÖBIUS NO. 17≫ の前で。 (山口歴「LISTEN TO THE SOLITUDE」展 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM)

ありがとうございました!

文:小池タカエ