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【ダミアン・ハースト編】2021年を振り返り!アートニュース総まとめ

アーティストでありながら、ビジネスパーソンとしても有能なダミアン・ハースト。2021年も、世界中で多数の展覧会を開催しながら、ビジネスとしてもユニークな活動を行ってきた彼の1年間を振り返ってみよう。(オークション落札額は手数料込み、1ドル=114円、1ポンド152円で換算)

仮想通貨

▍「私は仮想通貨の世界を愛している。」ダミアン・ハーストが初めて作品に仮想通貨の支払いを受け付け。版画作品として過去最高額での販売に

≪The Virtues≫ / ダミアン・ハースト 画像引用:https://fadmagazine.com/

2月、ダミアン・ハーストによる桜の版画8点セット≪The Virtues≫が発売された。8枚のプリントにはそれぞれ、新渡戸稲造による武士道の8つの徳目にちなんだタイトル(Justice, Courage, Mercy, Politeness, Honesty, Honour, Loyalty, Control)が付けられている。

ハーストは、この作品で初めて支払いにビットコイン(BTC)またはイーサ(ETH)の仮想通貨を受け付けた。仮想通貨について、ダミアンは「私はアートを愛し、仮想通貨の世界を愛しています。私の信念をビットコインとイーサに託し、作品を世に出すためにそれらを受け入れることを嬉しく、誇りに思っています。」と語った。(COINTELEGRAPH)

これらの版画は、総額約25.6億円 (22,443,000ドル) の売上となり、「史上最も成功した版画販売」と報じられた。各エディションには固有の番号が振られ、アーティストの直筆サインが入っている。

この作品に対してのインタビューの中で、ハーストは仮想通貨やブロックチェーンへの興味を語り、NFTへの関心も口にしていたが、これは次の大きなプロジェクトのための布石だったようだ。

NFT

▍「物理的作品」と「デジタル作品」、どちらを選ぶ?価値観を揺さぶられるNFTプロジェクト

7月、ダミアン・ハーストは自信初となるNFTプロジェクト「The Currency」をスタートさせる。これは、単にデジタル作品をNFTとして販売するのとは異なる取組みだった。

約23万円 (2,000ドル) でこのNFT作品を購入した1年後、作品の所有者は「NFTを物理的な作品と交換してNFTを破棄する」のか、「NFTを保持して物理的な作品を破棄する」のかを選択しなければならない。「物理的な作品」を所有するのか「デジタルの作品」を所有するのか、コレクター自身が判断を迫られる作品だったのだ。

話題となったこの作品は、発売後1ヶ月足らずで約27.5億円のセカンダリー取引を記録。現在の値動きは落ち着いているものの、もともと約23万円 (2,000ドル) の作品が、最大約1,824万円 (160,000ドル) で取引が行われるなど、その価値は1ヶ月で最大80倍にも増大した。

11月には物理的な作品との交換も開始しており、ハーストのInstagram上で、実物の作品手に取って楽しむ鑑賞者たちの様子も公開されている。

▍話題を呼んだドレイクのアルバムカバーアートもNFTへ

画像引用:https://www.dazeddigital.com/

本稿でも後述するが、ダミアン・ハーストは今年、ラッパーであるドレイクのアルバムカバーイラストを手がけたことでも話題を呼んだ。そして、11月には、このイラストをモチーフにしたNFTも公開した。

ただし、このNFT作品は購入出来るわけではなく、先述のNFTプロジェクト「The Currency」の所有者に無償で配布されたのだ。

さらに、「The Currency」をモチーフにしたiPhoneケースやキーホルダー、帽子などのアイテムも「The Currency」の所有者限定でプレゼント。

自身の作品価値を上げ続けるための施策を怠らない、ハーストのビジネス的な戦略も目の当たりにできるような試みだ。

コラボレーション

▍ダミアン・ハースト ✕ 大久保鉄三  のよるワードローブ、ヴァージル・アブローのオークションで販売

画像引用:https://fadmagazine.com/

2月、ダミアン・ハーストと大久保鉄三によるアップサイクルされた服が、ヴァージル・アブローのウェブサイトCanary Yellowで販売された。ハーストの特徴的なモチーフである薬のカプセルや頭蓋骨などがあしらわれている。

ハーストは英国に、大久保は米国に在住しているため、移動が制限されるコロナ禍で、コラボレーションはリモートで行われた様子。ヴァージル・アブローは、「ダミアンとテツがやったことは、この12ヶ月を完全に象徴しています。コラボレーションとクリエイションは、世界が一時停止するように言われたからといって止める必要はありません。」と語った。(artnet news)

▍ダミアン・ハーストがドレイクのニューアルバムのジャケット・アートワークを担当

ドレイクのアルバム「Certified Lover Boy」ジャケットデザイン 画像引用:https://news.artnet.com/

カナダのラッパー・ドレイクは、9月3日、自身の6枚目のアルバム「Certified Lover Boy」のジャケットアートワークをInstagramで発表し、後に同アートワークを手がけたのがダミアン・ハーストであることが明らかとなり話題となった。

白い背景に12人の妊婦の絵文字が描かれたアートワークだが、このアートワークについてネット上では、等間隔に並んだ多人種の女性たちがハーストの代表「スポット・ペインティング」シリーズを想起させることや、2005年にハーストがパブリック彫刻の≪Virgin Mother≫等の過去作品で妊娠中の女性をモチーフとしていることなどが指摘された。(artnet news)

展覧会

ビジネスパーソン的な側面も見せるダミアン・ハーストだが、一方では世界中で多数の大規模展覧会を開催し、世界的なアーティストである様子も存分にみせつけた。その展覧会の一部を紹介する。

▍ロンドンの「ガゴシアン」で 自身の展示会を1年間キュレーション

「Emergency Paintings, Danger Paintings, Hazard Pictures and Seizures」展の展示風景
Artwork © Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved, DACS 2021
Photo: Matteo D’Eletto

まず大きな話題として、メガギャラリーである「ガゴシアン」のロンドンギャラリーで、ハーストは1年間、自身の展示をキュレーションした。ロンドンの「ガゴシアン」では、以下3つの展示が行われた。

●第1弾「Fact Paintings and Fact Sculptures(ファクト・ペインティングとファクト・スカルプチャー)」(4月12日〜5月24日) (Gagosian)
●第2弾「Relics and Fly Paintings(遺物とフライ・ペインティング)」(6月5日〜9月11日)(Gagosian)
●第3弾「Emergency Paintings, Danger Paintings, Hazard Pictures and Seizures(エマージェンシー・ペインティング、デンジャー・ペインティング、ハザード・ピクチャー、押収物)」(10月5日〜)(Gagosian)

さらに、2021年7月6日〜10月23日には、ローマの「ガゴシアン」でも個展「Forgiving and Forgetting(許すことと忘れること)」を開催。ペインティングと彫刻を合わせて披露した。(Gagosian)

展覧会の様子は、以下の記事で詳しく紹介している。

▍「Mental Escapology (精神的脱出術)」展 (スイス、サンモリッツ)

画像引用:https://damienhirst-stmoritz.com/

2月から、サンモリッツの4か所で開催。凍った湖に設置された高さ12フィートのモンクなど、2つの大型屋外彫刻も話題となった。(Mental Escapology)

▍最新ペインティングを披露 「Damien Hirst, Cherry Blossoms (桜) 」展  カルティエ現代美術財団(フランス、パリ)

Damien Hirst in his studio, 2019. 撮影 Prudence Cuming Associates. © Damien Hirst and Science Ltd. 禁無断転載, DACS 2021 (プレスリリースより)

2021年7月6日 〜2022年1月2日、ダミアン・ハーストの最新シリーズ「Cherry Blossoms」が展示されている。絵画を「避けてきた」というハーストが「絵を描くことの爽快な喜びを再発見した」作品となったようだ。(カルティエ現代美術財団)

▍美術館の歴史的コレクションとのコラボレーション「Archaeology Now(考古学、いま)」展  ボルケーゼ美術館(イタリア、ローマ)

11月7日まで。同美術館の歴史的な美術コレクションの展示品とともに、ハーストが制作した”架空の難破船からの偽物の骨董品”を展示。架空の物語はNetflixでの派手なモキュメンタリー (※ドキュメンタリー映像のように見せかけて演出する表現手法) のコンテンツを制作されるなど、手の込んだ演出の展覧会となった。

ハーストはInstagram上でその展示ツアーも実施した。

▍アジアでの初個展 「HIS OWN WORST ENEMY (彼自身の最悪の敵)」 White Cube 香港(香港)

画像引用:https://whitecube.com/

2021年11月24日– 2022年1月8日。アジアでは初めての個展となった。

▍フォトジェニックなインスタレーション 「Pharmacy 特別展示 (プラダ モード モスクワ)」  The Levenson Mansion(ロシア・モスクワ)

12月3〜4日は会員限定、その後はインスタレーションとして一般にも公開された。《Pharmacy》はその名の通り、「薬局」を模したインスタレーション作品で、1992年にニューヨークのコーエン・ギャラリーで初めて公開された。《Pharmacy》のレストランは、今回のPRADAで4回目の開催。

オークション

最後に、今年のダミアン・ハーストの落札額Top3作品を見てみよう。

3位 ≪Precious Moments≫ 落札価格:約1億5,056万円 (£ 990,500 )

画像引用:https://www.phillips.com/

2021年10月15日に開催されたPhillips「20th Century & Contemporary Art Evening Sale」での落札。

なお、同オークションでは、≪N-(9-Acridinyl) Maleimide≫も約1億1,193万円 (£ 736,400) で落札され、こちらはハーストの今年の落札額第5位の作品となっている。

画像引用:https://www.phillips.com/

2位 《Veil of Hidden Meaning》落札価格:約1億6,758万円($1,470,000)

画像引用:https://www.artprice.com/

2021年11月9日、クリスティーズオークション(NY)「21st Century Evening Sale」での落札。

1位 ≪The Warrior and the Bear≫ 落札価格:約3億9,330万円 ($ 3,450,000 )

画像引用:https://www.artprice.com/

2021年5月11日、クリスティーズ(NY)「21st Century Evening Sale」での落札。ハースト史上では17位の落札額となった。

仮想通貨やNFTといった流行をタイムリーに取り入れるだけでなく独自のアートプロジェクトとして昇華したり、美術館での大規模な個展や、キュレーションまで手がけなど、幅広く活躍するダミアン・ハースト。

2021年も彼がアート界に何を仕掛けていくのか、目が離せなさそうだ。

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文:ANDART編集部