
注目の展覧会から ファッションコラボ情報まで。今週のアートニュース (21.07.10-21.07.16)
1週間の国内外のアートニュースから、ANDART / YOUANDART取り扱いアーティストの情報を中心にお届けします。今週は「アーティスト」「展覧会」「美術館・ギャラリー」「ファッション」の4つのテーマから。気になるアーティストの話題をさくっとチェック。
アーティスト
▍KAWSが2年ぶりに来日。日本初の大規模個展にあわせて。
KAWSによる国内初の大型展覧会「KAWS TOKYO FIRST」が、7月16日、六本木の森アーツセンターギャラリーでスタートした。これに合わせ、KAWSが2年ぶりに来日。7月11日に日本に到着したKAWSは、Instagramで同展覧会の設営の様子もレポート。同展のオープニングイベントでは、同展の日本側監修を務めた山峰潤也とのトークセッションも行った。
▍クリスチャン・ボルタンスキー、76歳で死去。

家族の写真や着古した服などを、集合的な記憶やトラウマを探求する作品に変えることで知られるフランスのアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーがパリで死去した。享年76歳だった。ボルタンスキーの所属するギャラリー「Marian Goodman」によって発表されたものであり、ギャラリーは死因を明らかにしていない。ナチスから解放された直後の1944年9月6日にパリで生まれたボルタンスキー。独学で芸術を学び、ドクメンタに2回、ヴェネツィア・ビエンナーレには6回出品している。(artnet news)
▍マウリツィオ・カテラン、ミラノの新作展で9.11をテーマにした作品を発表。

マウリツィオ・カテランが9.11をテーマにした新作≪Blind≫を、7月15日にミラノの展覧会「Pirelli HangarBicocca」で発表した。カテランは、バナナを壁にダクトテープで貼り付け、約1320万円 (12万ドル)で販売した ≪Comedian≫ など、不条理なユーモアに満ちた作品で知られるが、本作は対照的な作品であり「私たち全員に影響を与える実存的な疑問、生まれてから死ぬまでの生命のサイクル」に対するアーティストの考えを提示するという。2017年にグッゲンハイム美術館のチーフ・キュレーターに本作のアイディアを相談した際には「テロから16年しか経っていないニューヨークでは、有害であるとさえ思われた」という理由で実現しなかったといい、事件から20年の節目となる今年実現することとなった。(The Art Newspaper)
展覧会
▍台湾で奈良美智の大規模個展。チケットは20分で完売に。

7月24日から台湾にある高雄市美術館で奈良美智の特別展が開催される。今年、最初の巡回先である台北の關渡美術館はCOVID-19の再拡大に伴い、中断となったものの、閉館前の5月初旬には訪問者数が4万人を超えるなど、台湾でも人気ぶりを見せている。2カ所目の巡回先となる高雄市美術館では、奈良美智の台湾向け新作≪A Hazy, Wet Day≫をはじめとする26点の新作が展示される。チケットは予約制であるが、最初の2週間分は20分で完売となった。なお、奈良は展覧会の設営のため台湾を訪問。現在2週間の隔離生活を送っており、自身のtwitterでその様子を伝えている。(中央社)
▍巨大な ”誰かの顔” が東京の空に浮上! 目 [me]によるプロジェクト《まさゆめ》を都内で実施。

7月16日、 現代アートチーム 目[me]が企画する《まさゆめ》が実施され、東京の空に巨大な「誰かの顔」が浮かんだ。《まさゆめ》は、 年齢や性別、 国籍を問わず世界中からひろく顔を募集し、 選ばれた「実在する一人の顔」を東京の空に浮かべるプロジェクト。現代アートチーム目[mé]のアーティストである荒神明香が中学生のときに見た夢に着想を得ている。2019年の「顔募集」で世界中から集められた老若男女の顔から「顔会議」を通じてただ一人を選び、また、COVID-19による1年の延期を経て、2年以上をかけ、見なれた空に巨大な顔が浮かぶという圧倒的な風景が東京に出現した。
▍牧田愛と門田光雅の2人展「Out of the Blue」、ANAインターコンチネンタル東京で開催中。

牧田愛と門田光雅の2人展「Out of the Blue」が、7月26日までANAインターコンチネンタル東京で開催されている。牧田は東京とニューヨークで活動し、機械や金属類、プラスティックなどの無機的なモチーフを有機的なイメージで描き出す画家。今回の展覧会では、油彩と3Dプリントを組み合わせた作品も展示されるほか、141cm✕298cmという大判に金属の物質感を綿密に描いた≪Augmented Reality≫も印象的だ。

一方、門田は自身の記憶や感情の揺らぎを、絵画の色彩や筆致に置き換えて表現を探求している画家。MoMAのヤング・パトロン・プログラムに招聘され、2019年にリンカーンセンターで個展も開催している。今回の展覧会では、162cm✕228cmといった大判の作品も複数展示されている。(参考:牧田愛 + 門田光雅 「Out of the Blue」展)
▍イラストレーター・Hayataが表参道で個展を開催。ポートレート作品を展示。
イラストレーターのHayataの個展が、7月18日より表参道のコーヒーショップLattestではじまった。7月24日まで。ポートレートを中心にアイコニックで色彩豊かなイラストを作成するHayataだが、今回はポートレート作品のみで構成。「甘々なイラストとコーヒーの組み合わせを愉しんでいただけると嬉しいです。」と記している。
関連記事:YOUANDARTアーティスト・Hayataインタビュー
▍砂丘と洞窟の美術館「UCCA Dune Art Museum」で、ダニエル・アーシャムの大規模個展を開催中。

中国の現代アート研究機関UCCA(Ullens Center for Contemporary Art)の1部門であり、中国北部の渤海沿岸にある静かな海岸に位置する「UCCA Dune Art Museum」で、ダニエル・アーシャムの個展「Daniel Arsham: Sands of Time」が開催されている。「UCCA Dune Art Museum」は、Open Architectureの設計による美術館で、ほとんどが砂丘の下に埋もれている。洞窟のような展示室は、天井の天窓やビーチを見下ろす大きな開口部から光が入る。ダニエル・アーシャムの「未来の考古学」をイメージした作品を演出するのに絶妙な空間となっている。(参考:UCCA Dune Art Museum 「Daniel Arsham: Sands of Time」)
美術館・ギャラリー
▍ハーシュホーン美術館の彫刻庭園を杉本博司氏が再設計する計画、最終的に承認される。

アメリカのハーシュホーン博物館の「彫刻庭園再生計画」にて、米国の芸術委員会は、杉本博司が提案した再生案を承認することを決定した。杉本は、同博物館のロビーの改装を指揮した後、続いて庭園の再生を指揮することになっていたが、ワシントン在住の造園家レスター・コリンズが設計した既存の庭園が消滅することに対してカルチュラル・ランドスケープ財団が反対を表明していた。問題となったのは、杉本が日本の乾式工法にヒントを得た石垣を庭園に追加する計画。財団は、コンクリートの集合体のみで構成された庭園のモダニズムの美学を石垣が崩すと指摘。議論を経て、最終的に委員会の中で5対2の賛成多数で承認となった。(参考:ARTnet)
▍TERRADA ART COMPLEXに2つのアートギャラリーがニューオープン。奥天昌樹 ✕ にいみひろき二人展も。

先週、天王洲アイルにあるギャラリーコンプレックス「TERRADA ART COMPLEX Ⅱ」に2つの新しいギャラリーがオープンした。これにより、合計で16のアートギャラリーが入居することとなる。ひとつは、7月16日にオープンした「MU GALLERY」。現代アートに特化したギャラリーとして、若手アーティストの作品を中心に展示する。こけら落としには、奥天昌樹と、にいみひろきによる二人展「HASSHIN」を開催している。(参考:MU GALLERY)

もうひとつは、7月14日にオープンした「SOKYO ATSUMI」。京都のギャラリー「現代美術 艸居(そうきょ)」による、3つめのアートスペースであり、国内外の現代アート作品を展示する。第1回の展覧会では、「三島喜美代個展:1950 年代から2021 年まで」を開催している。(参考:SOKYO ATSUMI)
▍お台場の「チームラボボーダレス」、単独のアーティストの美術館のなかで”世界で最も来館者が多い美術館”としてギネス世界記録に認定。

お台場の森ビル デジタルアート ミュージアム「エプソン チームラボボーダレス」は、2019年1月1日~12月31日の来館者数において、計219万8284名を記録。「単一アート・グループとして世界で最も来館者が多い美術館」としてギネス世界記録に認定された。世界の単独のアーティストの美術館の中で最も来館者数が多いと言われている3つの美術館である、オランダのゴッホ美術館、スペインのピカソ美術館、スペインのダリ劇場美術館の2019年の来館者数を上回るかたちとなった。(参考: エプソン チームラボボーダレス)
ファッション
▍KAWSが「SACAI」とコラボ。バッテン目をあしらったカラフルなコレクション。

「SACAI」は、KAWSのファインアート作品をウエア落とし込んだコレクションピースを、sacai 青山店とオンラインストアで7月17日より先行販売を開始した。その他直営店舗では 7月 21 日(水)に発売する。同コレクションは、メンズの2021-22年秋冬とウィメンズの21年プレ・フォールで発表したもの。カウズのキャラクターに特徴的なバッテン目をあしらったニットやファーコート、ナイロンパーカなどをラインアップしている。
▍KAWS と NIGO®️ がコラボレーションを予告。
Sacai, Supremeと、様々なファッションブランドとのコラボレーションが続くKAWSだが、これに続き、「NIGO®️」の「HUMAN MADE®️」とのコラボが予告された。7月13日にKAWSとNIGO®️はともに自身のInstagramアカウントに3枚の同じ画像を投稿。KAWSのキャラクターに特徴的な、“XX”の目となった「HUMAN MADE®️」のアイコニックなキャラクターたちが描かれている。今後アナウンスに注目だ。
▍ハイファッションブランドはなぜアートにラブコールを送るのか?

グッチ、ルイ・ヴィトン、ディオール、エルメス、カルティエなど多くの高級ファッションブランドは、アーティストとのコラボレーションを発表しているが、なぜだろうか。同徳女子大学校のLee Su教授は、「2010年以降、ファッション・トレンドは曖昧で多様化しており、ファッション・トレンドの先駆者としての多くのラグジュアリー・ブランドの役割が脅かされています。ラグジュアリー・ブランドの中心的な役割は、もはやファッション・トレンドだけではありません。」とし、ブランドイメージやコンセプトを構築するためにアートに目を向けたことで、実存的な危機を経験している高級ブランドにインスピレーションを与えたとしている。記事中では他にも様々な理由と成功・失敗の事例が挙げられている。(ILLINOIS NEWS TODAY)
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