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5月12日-14日開催 サザビーズオークション落札額Top5 作品解説

2021年5月12日から14日にかけ、サザビーズによる印象派・近現代美術のオークションがオンラインとニューヨークの会場で開催された。サザビーズは、世界40か国に80拠点を有し、香港、ニューヨーク、ロンドンをはじめ世界9箇所にてオークションを催している最も歴史のあるオークションハウス。

3つのイブニングセールで合計5億9,680万ドルが動くなど活況を呈した今回のオークション。この記事では今回のオークションで落札価格が高かった作品を順に紹介する。(落札価格は手数料込み。1USD=110円換算。)

1) クロード・モネ ≪睡蓮の池≫ (1917-19)

落札価格: 7,035万ドル (77.4億円)

画像引用:https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2021/impressionist-modern-art-evening-sale/le-bassin-aux-nympheas-2?locale=ja

今回のオークションの落札価格第一位の作品。モネの「睡蓮」シリーズは彼が生涯にわたる自然研究の集大成として制作した、印象派の中でも最も有名な作品のひとつ。1917年から19年にかけて描かれた≪睡蓮の池≫は、モネが抽象画の領域へと進み、後続の画家たちにインスピレーションを与えた革新的な晩年の作品群に含まれるものだ。

世界的に人気が高くオークションに出品される事も珍しいため、過去にも高額で落札されてきた「睡蓮」シリーズ。今回、5人の入札者の間で約5分間続いた激しい入札の戦いの末、当初の予想落札価格 4,000万ドルを大きく上回る7,035万ドルで落札された。結果としてこの作品は、これまでにオークションに出品されたモネの作品の中で高額な作品のトップ5に入ることとなった。

画像引用:https://www.sothebys.com/en/articles/monet-basquiat-and-twombly-headline-a-597-million-evening-of-auctions

2) ジャン・ミシェル・バスキア 《Versus Medici》(1982)

落札価格: 5,082万ドル (55.9億円)

画像引用:https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2021/contemporary-art-evening-auction/versus-medici-2?locale=en

2017年に前澤友作が約123億円で落札した《Untitled》と同年に完成した作品。制作当時バスキアはわずか22歳。彼は本作を通じ、西洋美術史の重要な礎であり、その固有の権力構造を通じて黒人を排除する西洋美術史の砦ともいえるイタリア・ルネッサンスと対峙している。

解剖学的なディテールや身体の複雑さは、レオナルドやミケランジェロといったイタリアの巨匠たちの作品を彷彿とさせつつも、ラディカルに再構築されたこの作品は、彼らの影響力に対する戦いを明確に示している。この剣闘士は、アフリカ系アメリカ人としての文化とアイデンティティの強さを主張し、野心的に芸術の歴史を再評価することを要求しているようだ。

予想落札価格の3500万〜5000万ドルを上回る5,082ドルで落札された。

画像引用:https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2021/contemporary-art-evening-auction/versus-medici-2?locale=en

3) サイ・トゥオンブリー ≪Untitled (Rome)≫ (1971)

落札価格: 4,163万ドル (45.8億円)

画像引用:https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2021/contemporary-art-evening-auction/untitled-rome?locale=en

アメリカ抽象表現主義の次世代を代表する画家・サイ・トゥオンブリー。黒字に白いラインを描く、有名な「ブラックボード・ペインティング」のシリーズの中ひとつ。そのシリーズを特徴づける切迫したラインを、非常にジェスチャー的に表現した作品のひとつと言える。

1950年代初頭にローマを訪れた際、歴史的な遺跡の外壁に書き込まれていた古代の落書きに魅了され、「ブラックボード・ペインティング」の素案を思いついたというトゥオンブリー。≪Untitled (Rome)≫は、彼のキャリアの中で、ローマの文化的、歴史的、美的特異性から受けた深いインスピレーションを雄弁に物語っているようだ。

4) アンディ・ウォーホル ≪Elvis 2 Times≫ (1963)

落札価格: 3,703万ドル (40.7億円)

画像引用:sothebys.com/en/buy/auction/2021/american-visionary-the-collection-of-mrs-john-l-marion/elvis-2-times-2

この作品が制作されたのは1963年の夏、アンディ・ウォーホル34歳の時。彼は前年にシルクスクリーンの技術を完成させ、アメリカの視覚文化の風景を変え始めていた。マリリン・モンロー、ジャッキー・ケネディ、エリザベス・テイラーといった、消費社会である現代の中で関心を集める題材をシルクスクリーンで表現していったウォーホル。1963年当時、28歳であったエルビス・プレスリーは世界中で一目でわかる存在であり、ウォーホルにとって完璧な被写体だった。

≪Elvis 2 Times≫は、誰もが認めるキング・オブ・ロックンロールを、207cmx181.3cmのカンバスに実物よりも大きく表現している。この作品を前にしたとき、私たちは伝説のエルヴィスを目の当たりにするだけでなく、銃口の先で私たちを見つめる死の亡霊や、「銀幕」の華やかな魅力を象徴する孤独なカウボーイのキャラクターに直面する。

5)クリスフォード・スティル ≪PH-125 (1948-No.1)≫ (1948)

落札価格: 3,071万ドル (33.8億円)

画像引用:https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2021/american-visionary-the-collection-of-mrs-john-l-marion/ph-125-1948-no-1-2?locale=en

第二次世界大戦直後の絵画界に新たな印象を与えた抽象表現主義の第一世代の指導者的存在であるクリフォード・スティル。彼の作品のなかでも、≪PH-125 (1948-No.1)≫は20世紀美術史の分岐点のひとつとなる記念碑的作品だ。この作品が制作された1948年の2年前、美術評論家のロバート・コーツが「ニューヨーカー」誌上で「抽象表現主義」という言葉を正式に作っている。本作品は抽象表現主義の発展がまだ初期段階にあったとは信じられないほど、スティルの成熟した美的・概念的モードの頂点を示している。

戦後アメリカ美術の最重要人物でありながらも、スティルが活躍したのは1940年代中盤から1950年代までの、ほんのわずかな期間。なおかつ自身の作品の売買を嫌ったために美術市場に出回っている彼の作品はごくわずかである。今回は伝説的な慈善家であり芸術家でもあるジョン・L・マリオン夫人のコレクションから、アメリカの抽象表現主義やポップアートの全盛期を代表する作品群が出品され、これらの落札額は総額1億5720万ドルとなった。

ANDARTで作品をチェックする

サザビーズオークションでは、著名な現代アーティストらによる作品が、想定を大きく上回る価格で落札されていった。今回の落札額Top5にランクインしたジャン=ミシェル・バスキアやアンディー・ウォーホルをはじめ、高額落札で話題となったバンクシー、パブロ・ピカソの作品もANDARTで取扱っている。個人でこれらのアーティストによる作品の所有はハードルが高いが、気になるアーティストを見つけたらオーナー権購入を検討してみてはいかがだろうか。