
有名モチーフ多数!9月8日〜15日開催サザビーズオークション落札額TOP5作品解説
9月8日〜15日にサザビーズロンドンが開催した「Prints & Multiples」。主に版画やプリント作品が出展されるオークションで、近現代における版画やプリント作品の発展や概念の変化も見て取れる。本オークションではお馴染みのモチーフやANDARTで取り扱いのある作家の作品も上位にランクインしているので、ぜひ注目していただきたい。
落札価格は手数料込み。1GBP=151.24円で計算(9月16日 7:33時価)。
5)アンディ・ウォーホル 《Joseph Beuys (F. & S. II.245-47)》
落札価格:約762万円(50,400GBP)

アンディ・ウォーホルの代表作である著名人のポートレートシリーズ。本作はドイツの美術家である「ヨーゼフ・ボイス」をモチーフにして制作された。ボイスはアメリカをテーマにした政治的メッセージの強いパフォーマンスをアートとし、アートに対する既成概念を壊した20世紀を代表する現代アーティスト。ウォーホルは過去にボイスに関する作品を多数残している。本作は同じモチーフを異なる色合いで刷ったものを並べ、ボイスの肖像を記号として表現したウォーホルらしい作品。
予想落札価格:約604〜907万円(40,000 – 60,000 GBP)
4)ロバート・インディアナ《The Book of Love》
落札価格:約1,048万円(69,300GBP)

ロバート・インディアナはアメリカ出身の美術家で、ポップアート作家の一人。数字や多角形、単語など単純な記号で構成されたイメージを多く制作した。本作は彼の代表作を異なる色に刷った11枚のスクリーンプリントと、12の詩(1つのスクリーンプリントがない)で構成されるポートフォリオ。新宿にあるパブリックアート作品としても有名なので、このモチーフに見覚えのある人も多いのではないだろうか。
予想落札価格:約907万円〜1,209万円(60,000 – 80,000 GBP)
3)アンディ・ウォーホル《Mick Jagger (F. & S. II.147)》
落札価格:約1,143万円(75,600GBP)

5位の作品同様アンディ・ウォーホルの著名人ポートレートシリーズ。本作のモチーフである「ミック・ジャガー」は世界的に有名なイギリスのミュージシャンで、ロックバンド「ローリング・ストーンズ」のボーカルとして大変な人気を誇っていたスターだ。ウォーホルはミック・ジャガーの作品を多く制作しているが、いずれも手書きのような線画とコラージュアートのように紙を切り張りしたデザインが特徴的。本作は予想落札価格を上回る価格で落札された。
予想落札価格:約453万円〜756万円(30,000 – 50,000 GBP)
2)パブロ・ピカソ《Le Repas Frugal (Bloch 1; Baer 2)》
落札価格:約1,524万円(100,800GBP)

本作はエッチングという酸による腐蝕を利用して金属板に溝を作る凹版技法の一種を用いて制作された。《ゲルニカ》や《泣く女》など油絵が特に有名なピカソだが、実は生涯で約10万点もの版画作品を制作している。本作が制作された1904年は「青の時代」から「薔薇色の時代」に移行するタイミングで、画家としても少しずつ売れるようになってきた頃だ。キュビズムなど斬新な表現で後世に名の知れるようになったピカソだが、細かな線で描かれたモノクロの肖像画からはピカソの確かな画力が感じられる。タイトルの《Le Repas Frugal》は「貧しき食事」の意味。
予想落札価格:約1,209万円〜1,814万円(80,000 – 120,000 GBP)
1)パブロ・ピカソ《La Femme à la Fenêtre (B. 695; Ba. 891)》
落札価格:約4,954万円(327,600GBP)

オークション第1位の作品は、またもやピカソの作品。2位と約3倍の差をつけ落札された。本作はアクアチントという、金属版を腐蝕させて製版する腐蝕技法(間接凹版技法)を使って制作された作品。前述のエッチングは主に線の表現だったところ、アクアチントは版面で水彩画のような濃淡を表現できる点が異なる。本作はピカソの代名詞とも言える「キュビズム」の手法を用いた作品で、タイトルの《La Femme à la Fenêtre》は「窓際の女性」という意味。
予想落札価格:約2,268万円〜3,780万円(150,000 – 250,000 GBP)
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