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6月24日開催フィリップスオークション(ニューヨーク)落札額Top5作品解説

6月24日にフィリップスニューヨークで「20世紀・現代アート デイセール」が開催された。本記事では落札価格の高かった上位5作品とANDARTで取り扱う作家の落札結果を紹介する。(落札価格は手数料込み。1ドル=110.87円(6月25日14:00時価)で計算)

1)ロイ・リキテンスタイン《Collage for Interior with Painting and Still Life》(1997)

落札価格:約1億5760万円($1,421,500)

Roy Lichtenstein《Collage for Interior with Painting and Still Life》(1997)
画像引用:https://www.phillips.com//

24日のデイセールのハイライト作品として午前のトップを飾った、ポップアートを代表する画家ロイ・リキテンスタイン(1923 – 1997)が自身のキャリアや美術史を振り返った晩年に制作した作品。予想落札価格の上値を超える価格で落札された。

リキテンスタインは新聞に掲載される漫画の一コマを題材にした、1960年代から手がけている作品でよく知られるが、この作品は、パステル調のコラージュで制作し、漫画や漫画の図像を主題にした作品とは異なるアプローチを見せている。

描かれたのは、何世紀にもわたって美術史に登場してきた不朽のテーマである静物画だ。室内にかけられた人物画と静物をモチーフに、彼を特徴づける大小のドット、太い輪郭線などを用いて画面を構成している。人物画はリキテンスタイン初期の作品からの引用となっている。

予想落札価格:約8870万円〜約1億3304万円($800,000 – 1,200,000)

2)フローラ・ユクノビッチ《Pretty Little Thing》(2019)

落札価格:約1億3077万円($1,179,500)

Flora Yukhnovich《Pretty Little Thing》(2019)
画像引用:https://www.phillips.com//

新進気鋭の若手アーティストとして注目されるフローラ・ユクノビッチの作品が、予想落札価格の上値の約15倍にも及ぶ価格で落札された。

ユクノビッチは、1990年イギリス・ノリッジ出身。ロンドンのシティ&ギルドアートスクールでアートを学び、2017年に卒業。現在はロンドンに拠点を置く。

18世紀フランスのロココ様式を現代アートに取り入れた画面は、有機的でエネルギッシュな抽象的なオブジェクトで構成されながら、繊細で優美な印象を与える。

予想落札価格:約665万円〜約887万円($60,000 – 80,000)

3)ギュンター・フォルグ《Untitled》(2010)

落札価格:約7683万円($693,000)

Günther Förg《Untitled》(2010)
画像引用:https://www.phillips.com//

モノクローム絵画、写真、ブロンズのレリーフ、彫刻など、幅広く制作したギュンター・フォルグ(1952 – 2013)晩年の作品。抽象的なフォルムの組み合わせと直感的に配置する色の実験が見られ、境界線やエッジのない要素が画面に空間を生み出している。

予想落札価格の上値を超える額で落札された。

予想落札価格:約3880万円〜約5543万円($350,000 – 500,000)

4)ウェイン・ティーボー《Untitled (Three Cigarettes and a Cigar)》(1973)

落札価格:約6985万円($630,000)

Wayne Thiebaud《Untitled (Three Cigarettes and a Cigar)》(1973)
画像引用:https://www.phillips.com//

3本のタバコと1本の葉巻を画面上に分散して配置することで、単なる描かれる物としての対象ではなく、それを吸った人物の情景や、所有していた人の物語などを立ち上がらせ、余韻として感じさせる。

影や輪郭を彩度の高い青、緑、赤、黄で描くティーボーならではの立体的な表現と、クリーミーで平面的な背景との対比、厚みのある絵の具のストロークのテクスチャーなど、五感に訴えてくる作品。

予想落札価格:約5543万円〜約7761万円($500,000 – 700,000)

5)KAWS《UNTITLED》(2013)

落札価格:約6705万円($604,800)

KAWS《UNTITLED》(2013)
画像引用:https://www.phillips.com//

午後のセールのトップを飾ったKAWSの作品。現在、ニューヨーク州ブルックリンに拠点を置くKAWSは絵画、スカルプチャー、グラフィックや製品のデザイン、ストリートアートなど、コマーシャルアートとファインアートの領域を横断する活動を行なっている。

本作では既存のアニメキャラクターであるスポンジ・ボブをズームアップして描いている。スポンジ・ボブの目には、KAWSのキャラクターに見られる「××」が描かれ、配色も独自にアレンジ。キャラクターを断片的に描くことで抽象的なモチーフに変化させる取り組みが見られる。

ルネッサンス期に使われていた円形のキャンバス「トンド」を使用していることも特徴となっている。

予想落札価格:約4989万円〜約7761万円($450,000 – 700,000)

ANDART取り扱い作品から落札情報をピックアップ

バンクシー《Gangsta Rat Peace》(2007)

落札価格:約5867万円($529,200)

Banksy《Gangsta Rat Peace》(2007)
画像引用:https://www.phillips.com//

バンクシー作品を代表する題材であり、多作なモチーフの1つであるネズミがステンシルで描かれている。ネズミ(rat)は、「アート(art)」のアナグラム。また通常、不衛生な都市に生息する、嫌われ者として拒絶される存在だ。

ラジカセとニューヨークヤンキースのキャップ、チェーンのネックレスを身につけたギャングスタ・ラットは、80年代から90年代の全米で興隆したギャングスタ・ラップと都市のユースカルチャー、敬遠される存在を象徴するアイコンとしてのネズミを用いて、シニカルで挑発的なメッセージを社会に発している。

予想落札価格:約5543万円〜約7761万円($500,000 – 700,000)

アンディー・ウォーホル《Mario Borsato》(1981)

落札価格:約2584万円($233,100)

Andy Warhol《Mario Borsato》(1981)
画像引用:https://www.phillips.com//

1960年代の米国におけるポップアート運動の第一人者であるアンディー・ウォーホルの、有名人を描いた肖像画シリーズの中の一枚。

写真を用いたモノクロームの人物像と、筆のストロークを感じさせる鮮やかで抽象的な要素で画面を構成している。ウォーホルは、この作品に描いたイタリア人デザイナーであるマリオ・ボルサトの肖像画をたびたび手がけているが、本作ではとくに鮮やかな配色が施されている。

予想落札価格の上値を超える価格で落札された。

予想落札価格:約1109万円〜約1663万円($100,000 – 150,000)

奈良美智《Absolut Vodka Bottle (Fuck bout everything! But I try to go…)》(2000)

落札価格:約665万円〜約887万円($60,000 – 80,000)

Yoshitomo Nara《Absolut Vodka Bottle (Fuck bout everything! But I try to go…)》(2000)
画像引用:https://www.phillips.com/

ウォッカのボトルを支持体として使い、アクリルとクレヨンで描いている。奈良作品ではお馴染みの目つきの鋭い少女や、少女の背面に天使の輪がついた犬が描かれている。また吹き出しや集中線など、漫画的な表現も引用されている。

アクリル絵の具の背景と、少女や犬のドローイング、ビン自体のガラスの質感など、さまざまなテクスチャーを楽しめる立体作品。

小品ながら、予想落札価格の上値の2.5倍という価格で落札された。

予想落札価格:約2235万円($201,600)

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【お詫びと訂正】
記事の内容に一部、誤りがありました。深くお詫びし、訂正させていただきます。