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6月23日開催フィリップスオークション(ニューヨーク)落札額Top5作品解説

6月23日にフィリップスニューヨークで「20世紀・現代アート イブニングセール」が開催された。このセールでは、6月7日・8日の2日間に渡って行われたフィリップス香港に続き、出品作が全て落札される「ホワイトグローブセール」を達成した。

短期間で2連続の「ホワイトグローブセール」を叩き出した結果は、世界的にアートの需要が高まっている流れに、適切な出品作品の選定や予想落札価格の設定を行ったオークション会社のセンスや実力など複合的な要素がうまくはまった結果と言える。

本記事では、落札価格の高かった上位5作品とANDARTで取り扱う作家の落札結果を紹介する。(落札価格は手数料込み。1ドル=111.02円(6月24日12:00時価)で計算)

1)デイヴィッド・ホックニー《A Neat Lawn》(1967)

落札価格:約12億21,22万円($11,000,000)

David Hockney《A Neat Lawn》(1967)
画像引用:https://www.phillips.com

イギリスを代表する画家デイヴィッド・ホックニーの大型の作品が出品され、予想落札価格の上値を超える価格が付いた。

ホックニーは1963年からアメリカ・ロサンゼルスに拠点を移し、スイミングプールなどの光景や日常を描いた。今回の作品は、芝生のある庭と建物をアウトラインで切り抜いたように、アクリル絵の具でクリアに描いている。建物と空は平面的に、植木と芝生、スプリンクラーの水しぶきは立体的に表現し、抽象表現主義、ミニマリズム、カラーフィールド・ペインティングといった手法を取り入れたホックニーの制作の一端を見て取ることができる。芝生の青々としたディテールと、スプリンクラーの水の透明感、空の青色とが合わさり、陽気で爽やかなペインティングとなっている。

予想落札価格:約10億5468万円〜約11億6570万円($9,500,000 – 10,500,000)

2)ウェイン・ティーボー《Winding River》(2002)

落札価格:約10億8898万円($9,809,000)

Wayne Thiebaud《Winding River》(2002)
画像引用:https://www.phillips.com

1920年、アメリカのアリゾナ州出身の作家ウェイン・ティーボーは、口紅、ペンキ缶、カフェにあるケーキやパイなどを色鮮やかに描いた絵画でよく知られている。

日常にある物ではなく、広大な景色をアクリル絵の具で叙情的に描いたこの作品は、落札予想価格の上値を超える額で落札された。中国の風景画とフォーヴィスムのスタイルから影響を受けたティーボーは、光彩を感じる配色を使って、農場風景をノスタルジックに描いた。

落札予想価格:約6億6611万円〜約8億8815万円($6,000,000 – 8,000,000)

3)ヴィヤ・セルミンス《Untitled (Ocean)》(1987-1988)

落札価格:約8億6017万円($7,748,000)

Vija Celmins《Untitled (Ocean)》(1987-1988)
画像引用:https://www.phillips.com

ヴィヤ・セルミンスは、1938年生まれのラトビア系アメリカ人の画家。海や岩、蜘蛛の巣、宇宙といった自然現象や環境を写実的に描く。

セルミンズの絵画が市場に出回ることはあまりなく、これまでにオークションに出品された絵画は20点にも満たない。またこれまでにオークションに出品されたオーシャンペインティングは1作品のみで、2003年には545,600ドルの価格を打ち出している。今回も、予想落札価格の上値を超える価格で落札された。

今回の出品作は、波を写実的に描いたモノクロの油彩。作品に近づくと描いた筆致と波のうねりから、エモーショナルな感覚が呼び起こされる。

落札予想価格:約6億1060万円〜約7億2162万円 ($5,500,000 – 6,500,000)

4)村上隆《Red Demon and Blue Demon with 48 Arhats》(2013)

落札価格:約6億7500万円($6,080,000)

Takashi Murakami《Red Demon and Blue Demon with 48 Arhats》(2013)
画像引用:https://www.phillips.com

ポップカルチャーを現代美術に取り込んだスーパーフラットの祖である村上隆の作品で、2017年に開催されたノルウェーのアストラップ・ファーンリー美術館での個展「Murakami by Murakami」に展示された。

この作品は赤鬼と青鬼、高僧である羅漢(らかん)を描いている。2011年の東北地方太平洋沖地震と、それに伴い起こった福島原発事故の後に、仏教に関心を持った村上は現代の寓話の必要性を感じたのだという。村上ならではのサイケデリックな色使いと漫画的な独創的なキャラクター、また伝統的な日本画から影響を受けたダイナミックな構図が鮮烈な印象を与える。

予想落札価格の上値を超える価格で落札された。

落札予想価格:約3億8857万円〜約4億9959万円 ($3,500,000 – 4,500,000 )

5)ゲルハルト・リヒター《Abstraktes Bild (940-2)》(2015)

落札価格:約5億6753万円($5,112,000)

Gerhard Richter《Abstraktes Bild (940-2)》(2015)
画像引用:https://www.phillips.com

シルクスクリーンで使われるゴムベラ「スキージ」を使って、大胆に絵の具を配置し、それを縦横に多層に重ねていく、リヒターが40年以上描き続けている「Abstraktes Bild」シリーズの中の一枚。

いったん描いた絵の具を削ぎ、下の層の色を露出させるなどして、彩度の高い色と複雑な混合色で構成する抽象的な画面は、鑑賞者の頭の中に想像上の風景を立ち上がらせる。

予想落札価格:約4億9959万円〜約6億1060万円($4,500,000 -5,500,000)

ANDART取り扱い作品から落札情報をピックアップ

ジャン=ミシェルバスキアとアンディウォーホル《Bananas》(1984-1985)

落札価格:約4億7739万円($4,300,000)

Jean-Michel Basquiat and Andy Warhol《Bananas》(1984-1985)
画像引用:https://www.phillips.com

ポップアートの創設者と新表現主義を代表する作家2人が協働して描いた同作は、調和の取れたユニークなコラボレーション作品。画材は、キャンバスにアクリル絵の具、シルクスクリーンインク、オイルスティックを使用している。

画面には、ヴェルヴェットアンダーグラウンド&ニコのアルバムジャケットのモチーフや、バスキアの描いた《Brown Spots》のバナナなどが配置され、双方のリスペクトが感じられるものとなっている。

落札予想価格:約4億4408万円〜約6億6612万円($4,000,000 – 6,000,000)

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