1. HOME
  2. アートマーケット
  3. NFTはアート市場に透明性をもたらす?!3つのメリットとデメリットを解説
アートマーケット

NFTはアート市場に透明性をもたらす?!3つのメリットとデメリットを解説

空前のNFTブームが巻き起こった2021年。NFTは黎明期から成長期へと入り、その市場規模は拡大を続ける最中、その中心にいるのが、NFTの技術とアートをかけ合わせた「NFTアート」である。NFTがアート市場に与える影響とは何なのだろうか?NFTアートにおけるメリットと現状のNFTを使用する上で生じるデメリットを整理していこう。

出典: Unsplash

NFTアートとは?

まずNFTとは、「Non Fungible Token」の略。日本語では「非代替性トークン」、つまり「他のものと取り替えのきかないトークン」という意味で、ブロックチェーン上で発行されたデータのこと。

そしてブロックチェーンとは、「ブロック(箱)」ごとに送金額や所有者などの取引データを時系列で記録し、そのブロックを「チェーン(鎖)」のように繋いで蓄積する仕組みである。ネットワークの参加者全員がその取引履歴を共有(監視)することができる上に、様々な暗号アルゴリズムを活用した構造になっているため、改ざんが不可能とされている。つまり、ブロックチェーン上で発行されたデータは、唯一無二であることを証明することができるのだ。

この技術を用いて、デジタルアートに個別の証明書を付与し、その唯一性が保証されるのが「NFTアート」である。デジタルアーティストBeeple(ビープル)の《Everydays – The First 5000 Days》が約6,935万ドル(約75億円)で落札されたことは、アート界で衝撃的なニュースとなったのは記憶に新しい。

《Everydays: the First 5000 Days》(2021年)
出典:https://caribbean.loopnews.com/

NFTとアートを掛け合わせるメリット

1:所有権の証明

これまではデジタルでしか存在しない作品を販売しても、事実上、無限にコピーできてしまうという問題を抱えていた。しかし、NFTと作品を紐づけることにより、万が一コピーされたとしても「オリジナル」と区別することが可能になり、ブロックチェーンを通して本当の所有者を判別、証明する。つまり、市場に模倣品が溢れ返ることも防ぐことができるのだ。

『XMEN:ファースト・ジェネレーション』や『アメイジング・スパイダーマン2』などのグラフィックを手がけたアメリカのデジタルアーティスト、アッシュ・ソープは「初めて自分の作品に完全な所有権が与えられた」(参考)と語った。NFTは特にデジタルアーティストの間で救世主的な存在として、その可能性に大きく期待されている。

アッシュ・ソープのNFT作品《Degradation》(2021年)
2021年6月、クリスティーズで68,750ドル(約753万円)で落札された
出典:https://www.artprice.com/

2:希少性の創出

メリットの二つ目に挙げられるのは、「希少性を創出できる」ことである。例えば、アンディ・ウォーホルバンクシーなど、多くのアーティストが制作するエディション作品(部数を限定して販売される版画のこと)は、真贋を証明する証明書やスタンプなどと一緒に、「21/50」のようなエディションナンバー(加えてアーティストのサインも入ることがある)を作品それぞれに振ることによって希少性を付与し、購入者にプレミア感を与えるもの。

バンクシーの《Very Little Helps》(2008年)(作品解説記事)
左下にエディションナンバー、右下にサインが入っている

バンクシーの《BOMB LOVE》に入っているエディション・ナンバー


これはアートに限らず、プロダクトを販売する際に広く取り入れられている手法。一方で、この手法をアートに当てはめても、コピーが出来てしまうデジタル上の作品に「限定数」の価値を見出すことは難しいのが現状だ。

しかし、NFTの「唯一性」とアートを掛け合わせることによって、先に挙げたバンクシーなどの物理的なエディション作品と同等に、希少性を創出することができるのだ。実際に、マーケットプレイス「TRILLER NFTS」では、ジャン=ミシェル・バスキアの写真をNFTのエディション作品化したものが販売されている(2021年1月13日時点)。

3:セカンダリーでアーティストへ還元される

NFTはデジタルアートとの相性の良さが際立っているが、物理的なアート作品をNFTとしてミントする(新たに発行・作成するという意味)こともできる。しかし、絵画や彫刻作品そのものをNFTに置き換えるのではなく、その作品の所有権の記録、手入れ・展示方法、転売する時の条件などの情報を安全なデータとしてまとめることが主な目的だ。

アート作品が流通するのは、プライマリー(一次市場)とセカンダリー(二次市場)のふたつであり、オークションハウスなどのセカンダリーで取引された場合、アーティストの取り分は基本的にゼロである。このことからオークションに対して批判的な意見を持つアーティストも少なくはない。

しかし、NFTはデータの中に契約を埋め込めるので、転売する時の条件を明確にし、作品が購入される度にアーティストへ取引額の一部を還元することが可能。このメリットがアート市場に透明性をもたらすことが期待されている理由である。

出典:https://www.majestyoftime.com/

現状のNFTのデメリット

1:環境負荷

仮想通貨のビットコインと同様、NFTは「プルーフ・オブ・ワーク」と呼ばれるモデルが採用されており、これが膨大な電力を消費して二酸化炭素排出を促し、環境に悪影響を及ぼしている。現在は、プルーフ・オブ・ワークより消費エネルギーを抑えられる別のモデル「プルーフ・オブ・ステーク」に順次移行が進んでいるが、今後もNFTの取引数増加は確実であり、引き続き環境への影響が問題視されていくだろう。

2:法的整備が整っていない

2021年に急成長したNFTは法的な整備がまだ行き届いておらず、著作権などの権利関係が曖昧な部分もあることが大きなデメリットである。唯一無二を証明できるとは言え、誰でも購入・販売できるNFT市場において偽物を買わされる可能性が十分にあることも忘れてはいけない。

3:「ガス代」の高騰

「ガス代」とは、NFTの取引で使われている主なプラットフォーム「イーサリアム」を利用する際に発生する手数料のこと。このガス代は一律ではなく、ユーザーが任意の価格を設定できる仕組みになっており、NFTの需要が高くなればなるほど高騰するため、手数料に割かれる金額も今後増していくことが予想される。

イーサリアムの手数料チャート(2022年1月12日時点)
引用:https://blockchair.com/ja/ethereum/charts/average-transaction-fee-usd

まとめ

2021年にブームが巻き起こり、急成長を遂げているNFT市場。そこへNFTとアートを掛け合わせた「NFTアート」は、アート界に透明性をもたらす可能性を秘めている。今後の市場拡大に伴い、これからどんな「新しい価値」が生まれるのかも楽しみだ。しかし、まだ新しい市場のため、事前のリサーチと現状のメリットとデメリットをきちんと把握した上でチャレンジすることをしっかり覚えておきたい。

出典: Unsplash

ANDARTでは、オークション速報やアートニュースをメルマガでも配信中。無料で最新のアートニュースを受け取ることができるので是非チェックしてください。ANDARTの詳しいサービスについては下の記事で解説しています。

文:ANDART編集部

参考URL
https://www.washingtonpost.com/arts-entertainment/2021/12/18/nft-art-faq/
https://newsphere.jp/sustainability/20210519-2/2/