
もの派・李禹煥強し!7月22日開催 マレットジャパンオークション落札額Top5 作品解説
7月22日(木)14:00から、マレットジャパンによる近現代美術のオークションが都内で開催され、ライブ配信も行われた。
今回の総出品数は240点、落札総額は1億8105万円となった。この記事では今回のオークションで落札価格が高かった作品と、ANDARTで取り扱うアーティストをピックアップし、落札情報を紹介する。(落札価格は手数料込み)
1)李禹煥《Untitled, 2004》(2004)
落札価格:950万円

画像引用:https://mallet.co.jp/
李禹煥は、日本で1960年代末から70年代初めに起こった芸術運動「もの派」の中心を担った作家の一人。アジアを代表する現代アーティストとして、国際的な活動を続けている。石と鉄板、ガラスなどを組み合わせて、配置することで空間を構成するインスタレーションや、キャンバスに線や点を描いた抽象画で知られ、近年アートマーケットでも人気が高まっている。
同作は、少しのストロークで描いた鮮やかな2色のオブジェクトで構成され、描かれていない余白にも空間の強度と緊張感がある。画材は紙にグワッシュ。予想落札価格の上値を超える価格で落札された。
予想落札価格: 500万円〜700万円
2)奈良美智《Look》(2004)
落札価格:820万円

画像引用:https://mallet.co.jp/
作家が実際に使用した封筒に描いたユニークな作品。表にドイツのギャラリー・GALERIE MARIANA GOODMANの印字、作品の裏にギャラリスト・小山登美夫への宛名とオランダ郵便局の消印が押されている。
封筒には奈良のアイコンとしてお馴染みの目つきの鋭い少女が描かれ、遠くを見つめている。見開かれた目から放った眼光は、ライトのように草原を照らす。
色鉛筆で細やかに描き込まれており、コンパクトなサイズの作品ながらも、今回のオークションのハイライト作品のひとつとなっている。予想落札価格の上値を超える価格で落札された。
予想落札価格: 500万円〜700万円
3)李禹煥《Untitled》(1968)
落札価格:680万円

画像引用:https://mallet.co.jp/
落札価格1位の《Untitled, 2004》に引き続き、李禹煥の作品が3位にランクイン。最高予想落札価格を超える価格で落札された。
同作では、描かない余白に空間的な広がりを生じさせるアプローチはせず、紙一面を黒鉛で塗りつぶしている。黒鉛ならではの複雑な色合いが奥行きを作り、シンプルな表現ながら、深い思想と精神性を湛えている。
予想落札価格: 500万円〜600万円
4)ミスター・ドゥードゥル《Black & White #13》(2019)
落札価格:620万円

画像引用:https://mallet.co.jp/
ミスター・ドゥードゥルは、イギリス出身のグラフィティアーティスト。下書きをせずに線を描写していく、「ドゥードゥル(落書き・いたずら書き)」という独自の制作スタイルを取る。
フェンディやプーマ、アディダスといったファッションブランドとも積極的にコラボレーションし、日本でも人気が高まっている。2019年には東京のヒルサイドフォーラムで個展「DOODLE TOKYO」を開催した。
同展でも展示された本作は、キャンバスにアクリルで描かれている。モノクロームのシンプルな画面構成の中に、ミスター・ドゥードゥルが生み出したキャラクターが賑やかに混在している。最高予想落札価格を超える価格で落札された。
予想落札価格: 300万円〜400万円
5)草間彌生《生命は限りもなく、宇宙に燃え上がって行く時》(2015)
落札価格:600万円
予想落札価格の2倍近い価格で落札された同作は、連作「七色の富士」の中の1点。初めて草間彌生が富士山に対峙したとき、心を動かされて一気に描きあげたという原画を用いた木版画で、伝統を受け継いだ現代の彫師、摺師(すりし)が所属するアダチ版画が木版を手がけた。
多くの浮世絵師が描いてきた富士山を、裾野を広げるダイナミックな構図で捉えている。赤く染まる様子は、朝日に照らされた赤富士を想像させる。葛飾北斎の「冨嶽三十六景」では穏やかさも感じる赤褐色を用いたのに対して、同作では力強い生命のエナジーを感じさせる鮮やかなオレンジを用いた。
予想落札価格: 250万円〜350万円
ANDART取り扱い作品から落札情報をピックアップ
アンディ・ウォーホル《Marilyn (Announcement)》(1981)
落札価格:82万円

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アンディ・ウォーホルはマリリン・モンローの宣伝写真を使った作品を、繰り返し手がけている。さまざまなカラーパターンで制作されたが、同作ではセックス・シンボルであるマリリンにメイキャップのような配色を施し、背景にもビビットな色を使用した。インテリアとしても映える、シンプルでポートレートらしい画面構成となっている。
マリリンはハリウッド・スターを題材にしたシリーズのモデルの1人だった。大衆に消費されるスターのイメージとして用いられたが、1962年にマリリンが36歳という若さで自宅の寝室で亡くなると、ウォーホルの作品は永遠の美を象徴するアイコンとなった。予想落札価格の上値を超える価格で落札された。
予想落札価格:50万円〜70万円
五木田智央《Uncovering method》(2008)
落札価格:65万円

画像引用:https://mallet.co.jp/
白と黒の2色のみを使ったグラデーションで描いた、モノクロームの抽象画のピグメントプリント。五木田の作品は大きく、具象的なモチーフと抽象的なイメージを組み合わせた人物の作品と、抽象的な表現をモチーフにした作品とに分けられ、市場では人物モチーフの作品の方がメジャーだが、近年は抽象画の相場も安定している。
即興で描く五木田の筆が生み出した同作の有機的な形態は、観るものに示唆を与える。ピグメントプリントは絵の具で描いたような発色が特徴で、五木田が表現するディテールも生かされている。
予想落札価格:50万円〜70万円
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