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日本で話題になったあの作品は何位?バスキア作品の落札価格TOP10【2022年最新版】

ジャン=ミシェル・バスキアは、20世紀を代表するアメリカ人アーティスト。1988年に27歳という若さで早逝したため、アーティストとしての活動期間は10年にも満たない。

Basquiat Portrait
Photo by Dmitri Kasterine, NYC, 1988
画像引用:https://www.komono.com/


しかしながら今でも絶大な人気を誇り、レオナルド・ディカプリオやジョニー・デップ、マドンナなど名だたる人物が作品を所有している。ファッションにもこだわりを持っていたバスキアは、アートシーンに限らずさまざまな業界のクリエイターたちに支持されており、「ドクターマーチン」や「ユニクロ」でもコラボアイテムが発売されている。


近年のオークションにおける落札価格は目を見張るものがあり、ZOZO創業者の前澤友作が記録的な高額で落札したことも記憶に新しい。Artpriceの調べでは、バスキアは2021年上半期の世界の美術品オークション市場においてパブロ・ピカソに次ぐ2位で、取引総額はマーケット全体の4.3%を占めている。


本記事では、バスキア作品の中でも高額で取り引きされた作品TOP10を紹介する。1982年頃がバスキアの最盛期と言われており、今回ランクインしている10作の全てが1981年〜1984年の4年間に描かれたものだ。短い活動期間の中でバスキアが残した驚くべき成果を、さっそくチェックしてみよう。(落札価格は1ドル=128円、1香港ドル=16円で計算)

10位《La Hara》(1981)

落札価格:約44億7,584万円($34,967,500)

10位《La Hara》(1981)
出典:https://www.christies.com/


1981年は、バスキアにとってのターニングポイント。美術評論家ルネ・リチャードに「Artforum」誌上で紹介されたことにより、世界中の注目を集めたのだ。また、それまでストリートを舞台としていたバスキアが、アニーナ・ノセイ・ギャラリーと契約し、アメリカでの初個展に向けてギャラリーの地下で制作を始めた年でもある。

本作は黒人を多く描いたバスキアが白人をモチーフにした数少ない作品のひとつ。タイトルの《La Hara》は、ニューヨークのプエルトリコ人地区で使われるスラングで「警官」を意味する。バスキアの母親はプエルトリコ系の移民だった。真っ赤な背景や左下に描かれた檻からは、白人によって支配された社会において、バスキア自身を含む黒人たちが抱いていた脅威が感じられる。

本作は1989年、クリスティーズのオークションで34万1,000ドル(約3,751万円)で落札されている。その後個人間の取り引きで所有者が替わり、2017年にクリスティーズ(ニューヨーク)に再び登場。前回の約100倍となる額で落札された。

予想落札価格:約28億1,600万〜35億8,400万円($22,000,000 – 28,000,000)
オークション開催日:2017年5月17日

9位《The Field Next to the Other Road》(1981)

落札価格:約47億5,200万円($37,125,000)

9位《The Field Next to the Other Road》(1981)
出典:https://www.christies.com/


こちらも1981年、バスキアにとって初めてとなる個展のために描かれた作品。美術商エミリオ・マッツォーリに招かれたイタリア・モデナで制作された。牛を連れた男性が描かれており、バスキアにしては珍しく全身像がはっきりと識別できる。また、ゴールドの絵の具で塗られた牛は男性が小さく見えるほど堂々としているが、バスキアの作品において動物がこれほどしっかりと描かれる例もあまりない。

2015年にクリスティーズ(ニューヨーク)に出品され、予想落札価格を上回る高値をつけた。しかし、落札者のホセ・ムグラビが翌年になっても手付金しか支払わなかったことにより、クリスティーズが訴訟を起こしている。ムグラビは代理人として本作を落札したが、依頼者が購入を取りやめてしまい、他の買い手が見つからなかったのだという。結局、ムグラビが全額を支払って所有者となることで和解が成立している。

予想落札価格:約32億〜44億8,000万円($25,000,000 – 35,000,000 USD)
オークション開催日:2015年5月13日

8位《The Guilt of Gold Teeth》(1982)

落札価格:約51億2,000万円($40,000,000)

8位《The Guilt of Gold Teeth》(1982)
出典:https://www.artprice.com/


アーティストとしてのバスキアの黄金期と言われる1982年の作品。239 x 420cmという大型のキャンヴァスにアクリル絵の具やスプレーを用い、ハイチのブードゥー教における死神「サムディ男爵」を描いている。ハイチ出身の父親を持つバスキアは、1987年の作品にもサムディ男爵を登場させた。

本作は2度目のモデナ滞在時に制作されたもの。この頃にはバスキアは高い評価を得てアート界のスターとなっており、活躍の場はストリートからギャラリーに移行していた。エミリオ・マッツォーリの画廊でも個展を予定していたが、「1週間で8枚のキャンヴァスを仕上げる」という無茶な要求をされたため、画廊との関係を絶ち展覧会を中止した。

予想落札価格:約51億2,000万〜102億4,000万円($40,000,000 – 80,000,000)
オークション開催日:2021年11月21日

7位《Warrior》(1982)

落札価格:約51億7,760万円(HKD 323,600,000)

7位《Warrior》(1982)
出典:https://www.christies.com/


10位の《La Hara》を含む3点シリーズのひとつで、いくつものスケッチを経て制作された。剣を持った力強い全身像で、数あるバスキアの自画像の中でも特に優れた作品と評されている。1983年、東京のアキライケダギャラリー(現IKEDA GALLERY)で開催した日本初の個展で発表された。

2021年、香港で開催されたクリスティーズによるバスキアのシングルロットオークション「We Are All Warriors -The Basquiat Auction」に出品され、アジアで開催されたオークションで落札された西洋絵画の中で、最も高い価格を記録した。

予想落札価格:約38億4,000万〜51億2,000万円(HKD 240,000,000 – 320,000,000)
オークション開催日:2021年3月23日

6位《Dustheads》(1982)

落札価格:約62億5,200万円($48,843,750)

6位《Dustheads》(1982)
出典:https://www.christies.com/


通称エンジェル・ダストと呼ばれる合成麻薬の中毒者を描いた作品。黒を背景に赤や黄など激しい色が勢いよく塗られており、批評家エリザベス・ヘイトは、本作について「憤怒と恐怖の象徴」と述べている。

2013年5月、クリスティーズ(ニューヨーク)に出品され、マレーシアの実業家ジョー・ロウが、当時のバスキア作品の最高落札価格で落札した。しかし、翌年ロウはアート購入のために国営企業の資金を横領したかどで告発され、本作は落札価格を下回る3,500万ドル(約38億5,000万円)でD1キャピタル・パートナーズ創立者のダニエル・サンドハイムが入手したと言われている。

予想落札価格:約32億〜44億8,000万円 ($25,000,000 – 35,000,000)
オークション開催日:2013年5月15日

5位《Flexible》(1984)

落札価格:約58億32万円($45,315,000)

5位《Flexible》(1984)
出典:https://www.phillips.com/


カンヴァスではなく、連なったフェンスの板に描かれた作品。西アフリカで音楽にのせて歴史などを伝える役割を担う「グリオ」がモチーフとなっている。バスキアの父親の故郷ハイチ共和国は、西アフリカから奴隷として連れてこられた人々を中心に独立した国であり、ハイチには「グリオ」と呼ばれる伝統料理も存在している。自身のルーツや人種差別などの社会問題を要素として取り入れてきたバスキアらしい作品だ。

本作はバスキア財団を運営するバスキアの姉妹によって長らく所有されていたが、2018年5月、ニューヨークで開催されたフィリップスのイブニングセールで、初めて売りに出された。それまで1983年以降に制作されたバスキア作品の落札額が2,000万ドル(約22億円)を超えたことはなかったため、フィリップスは控えめな予想をしていたとされるが、良い意味で前例を裏切る結果となった。

予想落札価格:非公開
オークション開催日:2018年5月17日

4位《Versus Medici》(1982)

落札価格:約65億496万円($50,820,000)

4位《Versus Medici》(1982)
出典:https://www.sothebys.com


タイトルにある「Medici」はルネサンス期の権力者メディチ家を指し、サンドロ・ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ・ブオナローティら歴史に名を残す芸術家たちのパトロンとして知られる。本作はバスキアがイタリアに滞在した後に描かれており、白人に偏ったルネサンスの巨匠たちが築いた伝統的な西洋絵画に向き合おうとする意欲が表れている。

バスキア最盛期にあたる1982年、初期のバスキアコレクターであるステファン・ヤンセンが、ガゴシアン・ギャラリーのオーナーをとおして購入した。オークションに出品されたのは2021年5月が初めてで、ニューヨークで開催されたサザビーズのイブニングセールで、予想落札最高価格をやや上回る価格で落札された。

予想落札価格:約44億8,000万〜64億円 ($35,000,000 – 50,000,000)
オークション開催日:2021年5月12日

3位《Untitled (Devil)》(1982)

落札価格:約108億8,000万円($85,000,000)

3位《Untitled (Devil)》(1982)
出典:https://www.christies.com/


ほとばしるような絵の具の動きと、中央に大きく描かれた悪魔から、激しい感情が伝わってくる横幅約5mの大作。初個展前のイタリア滞在中に制作された。ブードゥー教のシャーマンを描いた姉妹作《Profit I》とともに、バスキアの代表作に数えられる。悪魔の恐ろしい姿とは対照的に背景は明るく鮮やかであり、バスキアの芸術の特徴である挑発的二分法(相反する要素をひとつの絵画に取り入れる手法)が見られる。

本作は2016年、前澤友作が落札したことで日本でも話題になった。クリスティーズ(ニューヨーク)の戦後&現代アートイブニングセールで、前澤氏ともう1人の入札者が最後まで競り合った末、約57.3億ドル(当時のレートで約68億円)に達し当時のバスキアのオークションレコードを塗り替える結果となった。2022年5月、再びクリスティーズに出品され、前回の1.5倍近くとなる高額で落札された。

予想落札価格:非公開
オークション開催日:2022年5月18日

2位《In This Case》(1983)

落札価格:約119億1,744万円($93,105,000)

2位《In This Case》(1983)
出典:https://www.christies.com/


1981年から1983年にかけて制作された頭蓋骨をモチーフにした作品3点のうち、最後に描かれたもの。他の2作に比べ輪郭がはっきりせず、真っ赤な背景に溶け込んでいる。なお、1作目はロサンゼルスのザ・ブロード美術館、2作目は前澤氏が所蔵。頭蓋骨のイメージには、バスキアが幼い頃に母親から与えられた医学書『グレイの解剖学』と、父親が信仰していたブードゥー教のシンボルが影響していると考えられている。

2021年5月、クリスティーズ(ニューヨーク)の21世紀美術イブニングセールに出品されると、8人もの入札者が現れた。バスキア歴代1位には届かなかったものの、2位となる落札価格を記録。他のアーティストの作品を含め、2021年上半期に最も高額で取り引きされた作品でもある。前回オークションに出品された2002年には、ガゴシアン・ギャラリーが99万9,000ドル(約1億円)で落札しており、19年で約100倍に価格が高騰したこととなる。

予想落札価格:非公開
オークション開催日:2021年5月11日

1位《Untitled》(1982)

落札価格:約141億4,240万円($110,487,500)

1位《Untitled》(1982)
出典:https://www.sothebys.com


2位の作品と同じ頭蓋骨シリーズのひとつ。日本でバスキアといえば、多くの人がこの作品を思い浮かべるのではないだろうか。前澤氏が落札したことによって、バスキアの存在自体が日本でも広く知られるようになった。

2017年5月、サザビーズ(ニューヨーク)の現代アートイブニングセールで前澤氏が落札。バスキアのオークションレコードのみならず、アメリカ人アーティストの歴代最高落札価格を更新した。

本作は、現代アートコレクターとして知られるスピエガル夫妻が1984年に1万9,000ドル(約200万円)で購入して以来、公に展示されたことがなかったが、前澤氏の手に渡った後、アメリカの美術館などを巡回。日本でも2019年に東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで展示され、行列ができるほどのにぎわいを見せた。

予想落札価格:非公開
オークション開催日:2017年5月18日

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ANDARTでは、バスキアのシンボル「クラウン(王冠)」が描かれた作品《Jawbone of an Ass》を扱っている。ANDARTでは、高額でこれまで手を出しづらかったアート作品でも、1万円からオーナー権を購入できる。オンライン上でのコレクションをはじめ、実物作品の鑑賞機会などさまざまな優待をとおして気軽に本格アートコレクションを楽しめるので、ぜひチェックしていただきたい。

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文:ANDART編集部