
5月20日開催 マレットジャパンオークション落札額Top5 作品解説
2021年5月20日、マレットジャパンによる近現代美術のオークションが都内で開催された。
マレットジャパンは日本有数の美術品専門オークション会社であり、東京の自社会場で年間4-5回のオークションを開催。近代から現代の美術品を中心に、毎回約200点以上の作品を厳選して出品している。
今回の総出品数は234点、落札総額は1億5936万円となった。この記事では今回のオークションで落札価格が高かった作品を順に紹介する。(落札価格は手数料込み。)
1) バンクシー ≪Love is in the Air≫ (2003年)
落札価格: 2,097万円

画像引用元:https://mallet.co.jp/auction/detail/99/145
バンクシーの特徴的なステンシルスタイルで描かれた「Love Is In The Air」は、野球帽をかぶり、バンダナで顔の下半分を隠した過激派に扮した若者が、手榴弾や火炎瓶を投げている最中の様子を描いているもの。しかしながら、ここで作家は、手榴弾を投げる人の手に花束を置くという工夫を加えている。一見攻撃的な姿勢にもかかわらず、この人物は武器ではなく、普遍的な愛と平和のシンボルを発射する準備をしているのだ。
≪Love Is In The Air≫ は、バンクシーの作品集 「Wall and Piece」の表紙を飾った作品であり、バンクシーを象徴する人気の高い作品のひとつである。500部限定のシルクスクリーン作品で、本体にごく軽い擦れや僅かなテープ跡などがあるにも関わらず、落札予想金額の1,500万円を大きく上回る額で落札された。
2) バンクシー 《Bomb Love (Bomb Hugger)》 (2003年)
落札価格:1,258万円

画像引用元:https://mallet.co.jp/auction/detail/99/23
続く第2位もバンクシーの作品となった。本作は、イラク戦争が起きた2003年に制作されたバンクシー初期の作品だ。無邪気に愛らしく爆弾を抱える少女の姿にはバンクシーらしい反戦への皮肉なメッセージが込められているようにもとれる。少女の純粋さやポップな色味が表現する愛と、爆弾が象徴する戦争や暴力といった対照的な二つの要素が二項対立的に一枚に収められているとされている。
600部限定のシルクスクリーン作品。本作も作品の裏面にテープが貼付された状態のものではあったが、想定落札金額の450万円の2倍以上、1,000万円超の落札となった。同作品が2015年ロンドンサザビーズに出品された際には、落札手数料込みで8,531ドル(約90万円)であったので、ここ6年間で約12倍にまで評価が高まっていると言える。
なお、本作は現在ANDARTで会員間取引を実施している。今回の落札額は、現在の同作品のオーナー権総額700万円も大きく上回る結果となっており、今後の動向にも注目だ。
3) KAWS ≪URGE≫ (2020年)
落札価格: 1,083万円

画像引用元:https://mallet.co.jp/auction/detail/99/11
ファッション×アートを融合させた現代アートの代表的存在・KAWSによる作品が第3位にランクイン。本作はシルクスクリーン10枚で1つの作品として構成され、250組限定で制作された作品。これぞKAWS!といえるような、彼の特徴を捉えたカラフルな10枚組だ。別途、本作のタイトルである「URGE」の文字をグラフィティアート風に描いた表紙作品もついている。
版画の一種であるシルクスクリーンプリントでありながら、ペンで描かれたような輪郭に線画のような温もりも感じられる。ミシュランマンにインスパイアされたモチーフに、KAWS作品の特徴である「××」のマークがついた手が群がっている様子が描かれている。落札予想価格の700万円を大きく上回る落札となった。
なお、本作は現在ANDARTでオーナー権を販売中。今回の結果は、オーナー権総額も上回る結果となった。10年で作品価格が100倍となったKAWS。今後の活躍にも目が離せない。
4) バンクシー ≪Jack and Jill≫ (2005年)
落札価格:955万円

画像引用元:https://mallet.co.jp/auction/detail/99/18
第4位には再びバンクシー作品がランクイン。本作のタイトル≪Jack and Jill≫は、18世紀よりイギリスで歌い継がれる有名な童謡にちなんで名付けられている。鮮やかな水色の背景に、少年Jackと花かごを持つ少女Jillがスキップするかのごとく楽しそうに駆けている様子は童謡の歌詞をなぞり一見楽しそうな少年少女を描いているようだが、バンクシーらしい皮肉なメッセージが込められているのが特徴。
自由に駆け回る少年少女を締め付けるかのごとく着用されている”POLICE”と大きく書かれた警官の防弾ベストが、「POLICEという単語に裏打ちされている法律や権威といったものに自由を抑圧されている人々の様子を描いている」とも解釈されている。
350部限定のシルクスクリーン作品。本作もANDARTで会員間取引を実施中だ。こちらも現在のオーナー権総額を上回る結果での落札となっている。
5) 鄭 相和 ≪無題 79-1-鉛筆≫ (1979年)
落札価格: 548万円

画像引用元:https://mallet.co.jp/auction/detail/99/60
韓国出身であり、1967年パリに渡った後、1969年に来日。1975年兵庫県立近代美術館での「アート・ナウ ’75」に出品するなど、関西の前衛美術シーンにも足跡を残したアーティスト鄭 相和(チョン・サンファ)。カンヴァス上に塗り広げた絵具に細かい升目状の切れ目を入れ、塗っては剥ぎ取り、また塗っては剥ぎ取るという一連の単純な行為の繰り返しで、オールオーヴァーなモノクローム絵画を志向した。韓国の「単色画(ダンセッファ)」で国際的に評価された作家の一人だ。
今回の作品 ≪無題 79-1-鉛筆≫ は、キャンバスに貼付した韓紙に、凹凸のあるものの上から鉛筆でこするように描くことで対象の凹凸を写し取る”フロッタージュ”という技法で制作された1点物の作品。最大予想落札額の450万円を上回る結果となった。
ANDARTで作品をチェックする
今回のマレットジャパンオークションでは、上位5作品のうち3作品がバンクシーのリトグラフ作品となり、その人気ぶりを見せつけた。上位5作品のうち、バンクシー、KAWSによる3作品はANDARTでも取扱っている部数限定の版画作品であり、いずれもANDARTでの現在のオーナー権総額を大きく上回る結果となった。
KAWSの ≪URGE≫ は現在オーナー権販売中であり、バンクシーの ≪Bomb Love≫ ≪Jack and Jill≫ は現在オーナー間取引を行っている。さらに、ANDARTでは、2021年5月21日(金)12:00〜5月25日 (火) 12:00にかけて、人気のBanksy作品のANDARTオーナー限定の抽選販売を行う。気になる方は一度作品ページをチェックして頂きたい。