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ベルリンで開催中の草間彌生の大型個展を3Dでバーチャル体験!

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4月23日にドイツ・ベルリンの美術工芸博物館「マルティン・グロピウス・バウ」で開幕した草間彌生の大型個展が、デジタルコンテンツを一般公開している。同館は開幕直後に新型コロナウイルス感染拡大防止のために臨時休館となったが、5月19日より再開。そのタイミングで、貴重なデジタルコンテンツが一挙公開される運びとなった。

約3,000平方メートルの展示面積を誇る壮大な空間で開催されている本展『Yayoi Kusama: A Retrospective』は、70年以上にわたる草間の活動を振り返る内容となっている。初期の貴重なドローイングから、ミラールームなどの代表作、美術館中央のアトリウムに巨大なインスタレーションの新作《A Bouquet of Love I Saw in the Universe》をはじめ、およそ300点が展示されている。

1960年代にドイツやヨーロッパで行われた草間彌生の初期の展覧会プロジェクトや、1950年代から80年代にかけてアメリカやアジアで行われた中心的な個展を再現することで、草間彌生の展示形態や独自の世界観を追体験することができる、大型展覧会だ。

そしてこのほど、この展覧会のデジタルコンテンツが公開された。およそ300にも及ぶ展示作品が3Dバーチャル・ウォークスルーにより、オンラインで体験できる。(※3Dのほか、公式サイトの同館館長でありチーフキュレーターにて、ステファニー・ローゼンタールによるビデオも必見!)

そこで今回は、NEW ART STYLE編集部が実際に体験した、3Dバーチャル・ウォークスルーの模様をレポートでお届けしたいと思う。

美術館のアトリウムに、巨大インスタレーションが登場!

本展で最注目すべきは、美術館のアトリウムの中央に出現したインスタレーションの新作、《A Bouquet of Love I Saw in the Universe》(2021)である。

ヴィヴィットなピンクにブラックのポルカドッツ。視覚的に強く訴えかけるこのカラーインパクトもさることながら、未だかつて見たこともないようなアートダイナミズムに、圧倒されてしまう。

画像引用元:https://news.artnet.com/

天井に向かって勢いよく伸びる16の巨大スカラプチャーは、最長でおよそ11メートルもの高さ。一見一つ一つが独立しているように見えながらも、不思議と全体の調和が感じられる。草間が本作に込めたパッションに思いを馳せながらもアトリウムを縦横無尽にウォークしてみるのも、エキサイティングな体験となるはず。

さらに下からガラス窓に向かって順に視線を移動させてみたり、至近距離まで近づいてみたり、階段を上って上から下を見下ろしてみるなど、様々なアングルからこの作品を鑑賞してみるのもおすすめだ。

バーチャルツアーならではの醍醐味を、ぜひこちらで体験してみてほしい。

あたかもずっと以前から美術館に生息しているかのような、一つの有機体としての存在感さえ放つこのダイナミックなインスタレーションからは、未だ尽きぬ草間の創作へのパッションとエネルギーを存分に感じとることができるだろう。

草間の活動初期の貴重なドローイング作品も展示

1929年に長野県松本市に誕生した草間彌生。
そんな草間が地元で創作活動をスタートさせた初期の作品、およそ270点にも及ぶペインティングにも注目したい。植物のラフスケッチをはじめ、草間彌生の独自のスタイルの兆候が見えるような作品まで、創作活動の原点ともいえるような萌芽を感じとることができるだろう。

画像引用元:https://news.artnet.com/

“世界のKUSAMA”を象徴する、水玉模様の始まりに触れる

草間作品が初めてヨーロッパで紹介されたのは、1960年代のこと。当時からアートの世界で突出した才能を見せていた彼女の活動は「当時のヨーロッパにおいても大きな衝撃をもって迎えられた」と、本展のチーフキュレーター、ステファニー・ローゼンタールはビデオレターの中でそう振り返る。

また、それにより草間自身もアーティストとして一層発展を遂げることになる。ヨーロッパでの活動をスタートさせた時期とほぼ同時期に、NYでも「ネイキッド・フェスティバル」を成功させ、センセーショナルを巻き起こした。

画像引用元:https://www.formidablemag.com/yayoi-kusama/

ネイキッド・フェスティバルでは、草間がモデルの体に“ポルカドッツ”を描いていくというパフォーマンスもあり、この斬新で前例のないスタイルは、1960年代のアート界に大きなインパクトをもたらした。

3Dバーチャル・ウォークスルーでは「ネイキッド・フェスティバル」の当時の様子や空気感を再現。こちらは「Love Room」で鑑賞することができるので、ぜひチェックしていただきたい。

現代の“セルフィーカルチャー”を先取りしていた草間

本展では、草間が活動初期の頃より制作を続けてきた、いくつかのミラールームを鑑賞することができる。中でも最初に制作された《Infinity Mirror Room Phalli’s Field》(1965)を再現した作品は必見。

画像引用:https://www.berlinerfestspiele.de/

草間はこのシリーズを発表し始めた頃から、ミラールームに登場している。自らも作品の重要なピースであり、アイコンのように登場するこのスタイルは「YAYOI KUSAMA」をまさに象徴するもので、彼女の作品により強烈な印象を与えるとともに、見る者の脳裏に強く焼きつけられるのではないだろうか。

ステファニー・ローゼンタールも「草間彌生は、現代のセルフィーカルチャーを先取りしていた」と語るように、自らも作品の一部となって登場するスタイルは、今からすでに60年前にこうして始まっていた。

今回の展示では、草間が幼い頃から愛してやまなかったという“かぼちゃ愛”を表現したミラールーム、「The Spirit of the Pumpkins Descended Into the Heavens」で、インスタレーションの魅力を追体験することができるだろう。

画像引用元:https://news.artnet.com/

この作品からは、壁、床、天井といった規定の枠や空間認識を超えて、イメージや意識が無限に広がっていく感覚を覚えるかもしれない。前後・左右といった方向感覚がよい意味で失われることによって、異次元の世界に迷い込んだかのような摩訶不思議な感覚にさせられるだろう。

どこか遊び心をくすぐられる本作も、3Dでは様々な角度から鑑賞することができるので、ぜひ試してみてほしい。

幻想的な光が織りなす、話題の新作《Infinity Mirror Room》

さらに、本展のために作られたミラールームの新作《Infinity Mirror Room》も見逃せない。

画像引用元:https://news.artnet.com/

初めて電球を使って光の演出をしたという本インスタレーションは、無数のライトが色とりどりの光を放ち、ビューワーを幻想的な世界へと連れ立ってくれる。ミラー効果が織りなす鏡と光の効果は圧巻で、それは空間の広がりをイメージさせる要素であるばかりでなく、色鮮やかなライトが鏡に反射して点滅する様子が視覚的にも新鮮な感覚をもたらしてくれるのだ。ずっと眺めているうちに、壮大な宇宙の中の一部として自分は存在しているーーそんな気分にさせられるかもしれない。

活動初期から直近までの、貴重なドローイングを展示

展示の後半には、彼女が平面のペインティングに熱中していた2000年代初期の作品から、ここ数ヶ月のうちに完成させたという新作までの作品が、ずらりと一堂に展示された部屋も。

人目を引く独自の色使いはもちろんのこと、一点ごとに微妙にパターンの異なる作品からは、70年間の長きにわたって彼女が蓄積してきたドローイング技術と独自の表現スタイルが見事に結晶している様を感じることができる。

画像引用元:https://www.artsy.net/

空間に所狭しと並ぶ数々の作品は、一点一点が揺るぎない個性を放っており、何か物言いたげにメッセージを訴えかけてくるようでもある。これらの素晴らしい作品を一点一点じっくり味わうには、3Dはまたとない機会だと言えるだろう。なぜなら一点ごとに作品のタイトルと制作年を確認することができるばかりでなく、作品への「超接近」が叶うからだ。

これは、ある一定の距離をもって作品と対峙する通常の美術鑑賞のスタイルとは異なり、手を伸ばせば、すぐにでも作品に触れることもできそうな至近距離からの鑑賞は、これまでにない新鮮な感覚を与えてくれるばかりでなく、美術やアートとの向き合い方に、ある種の革命をもたらしてくれるかもしれない。

また会期中であれば、好きなだけ何度でも鑑賞することができるのも3Dならではの楽しみ方だろう。新たな発見があったり異なる視点を得ることで、アートとの距離がきっと近くなるに違いない。

まとめ

3Dバーチャル・ウォークスルーを通して感じたのは、想像していたよりもはるかにリアリティがあって、見応えも十分だったことである。実際には美術館を訪れたわけではないのにそれに近い感覚、いやむしろ、通常の鑑賞では得られないような視点も獲得することができる。

このツアーの魅力は前述の通り、

・貴重な作品を間近で鑑賞できる

・正面から、横から、上下からと、自分の好きなポイントから様々な角度で鑑賞できる

・会期中は好きなだけ、何度でも作品を鑑賞することができる

といったポイントが挙げられるが、この他にも個々の感覚や視点のずらし方によって、作品の見え方も変わり、あらゆる体験が可能になるのではないか。

また、マルティン・グロピウス・バウの壮大かつラグジュアリーな空間美に触れながら、YAYOI KUSAMAの世界観に没入できることもまた、このツアーの大きな魅力と言えるだろう。

画像引用元:https://www.berlinerfestspiele.de/

3DをはじめVR技術を使ったバーチャル体験ツアーは、とくに2020年以降一気に加速し、アートの市場のみならず、観光・旅行、スポーツ業界など、あらゆる分野へと広がっている。そう考えると、テクノロジーの進化によって私たちが享受している恩恵は大きく、今後さらに3Dの精度がアップすることによって、よりスムーズにリアルに限りなく近いバーチャル体験ができる日も、そう遠くはない未来に待っているかもしれない。

また今後、このようなバーチャルツアーが普及してくことで、美術やアートとの新しい関わり方を発見したり、これまでになかったアプローチでアートの魅力を再発見できるチャンスに巡り合う人たちも、増えていくことだろう。

そして、アートがもっと身近になる世界がこれからやってくるーーそんな可能性を感じさせてもらうこともできた、貴重な体験であった。

ぜひこの機会に一人でも多くの方に、3Dアートの世界を体験していただきたい。
Yayoi Kusama: A Retrospective

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