1. HOME
  2. アート鑑賞
  3. ポップカルチャーの巨匠KAWS の軌跡を辿る、国内初の大型展覧会「KAWS TOKYO FIRST」レポート
アート鑑賞

ポップカルチャーの巨匠KAWS の軌跡を辿る、国内初の大型展覧会「KAWS TOKYO FIRST」レポート

アート鑑賞

ポップカルチャーの巨匠、KAWSの国内初となる大型展覧会「KAWS TOKYO FIRST」が、現在、森アーツセンターギャラリーにて開催されている。展示作品は150点を超え、初期の作品から最新作まで、ペインティングや彫像、プロダクトなど、彼のユニークな芸術制作の軌跡や美術史的意義を辿ることができる展示内容となっている。

KAWS自身のアートコレクションが並ぶアトリエがお出迎え

今展覧会で注目したい展示の一つが、ブルックリンにあるKAWSのアトリエの一室を再現したコーナー。どこもかしこもKAWSワールドだが、ピンクのBFF(Best Friend Foreverの略)の山積みには目が釘付けだ。壁には、ジム・ナットやピーター・ソールといったKAWSお気に入りのアートコレクション。これらとKAWS作品の関連を想像するのも楽しい。会場にはこれらアートコレクションの作者一覧も掲示されているのでこちらも要チェックだ。

サブバータイジングに、キャラクターの書き換え

KAWSの創作の軌跡を辿る

KAWSことブライアン・ドネリーは、1974年ニュージャージー州生まれ。90年代初めにグラフィティアーティストとして頭角を現し、その後93年から96年までニューヨークの美術学校で学ぶ。その頃、屋外広告に自身のキャラクターを上書きする「サブバータイジング(Subvertising)」という手法によって描かれた作品が人気を博し一躍有名に。その後フリーランスのアニメーターとしてディズニーのスタジオで働く(ディズニー映画「101匹わんちゃん」の背景のセル画などを担当したらしい)。展覧会の前半は、起承転結の「起」・「承」とも言うべきKAWSの足跡を一気に辿ることができる構成となっている。

KAWSとは?人気作品と経歴を3分で解説

中でも目を引くは、DIESELの広告にアレンジを施した1998年の「 UNTITLED(DIESEL)」 。「DIE(死)」という言葉が象徴するように、KAWSのキャラクターが見えない死神のように描き添えられ、彼ならではのブラックユーモアによって生と死を考えさせられる。またアニメーターとしての経歴をダイレクトに反映させた、アニメーション映画をモチーフにしたような表現もあった。

KAWS作品の中でも約16億4000万円という最高落札価格を記録したのが「THE KAWS ALBUM」。これはBAPE®で有名な日本のデザイナーNIGO ®が、自身で経営するカフェに飾るために依頼した「キンプソンズシリーズ」の中の一作品なのだが、今回はそのシリーズの別の作品も展示されているのでそちらも見逃せない。

まるで鏡の世界のおもちゃ箱

全てがつながり合い、入れ子構造となった無限∞KAWS世界

ここからは、起承転結における「転」。「自分の作品はどんな作品も全部つながっている」とKAWS自身も語るように、彼がこれまでに築いた手法や作風、アイコンが合わせ鏡のように繰り返されカラフルに増幅されていく。有名な犬のキャラクターのようなシルエットの中に別のキャラクターが描かれているかと思えば、大きなCHUM(下画像の赤いキャラクター)の彫像の後ろで、CHUMが絵画の中の牢屋に閉じ込められている。「部分と全体」、「立体と平面」、「外側と中身」、「生と死」、さまざまな対比が入れ子構造となって表出する中、AR(拡張現実)を利用した作品では「現実と虚構」までもが入り混ざる。

自らの世界を破る、壊す。

殺伐とした世界でも安穏とするキャラクターたち

起承転結の「転」とくれば、最後は「結」。いよいよ展覧会もフィナーレだ。先ほど紹介した展示空間とは異なり、ポップでありながらダークで痛みを伴う雰囲気が漂う。

なかでも象徴的なのは昨年2020年に制作された「NEW TURN」という5枚の連作。CHUMがあの赤いキャラクターのような者に内側から突き破られ、続いてそれがコンパニオン(KAWSの代表的なキャラクター)に、BFFにと、次々と突き破られ、終には全てが弾丸によって撃ち抜かれる。一方その向かい側には、目玉や口のクローズアップが、血を連想させる暗い赤と黒の二色で描かれた連作が。中には皮膚をめくられるような痛み・身体感覚を誘発するように感じられる表現も見られた。

それでも尚ユニークなのは、両者の間で呑気に休むコンパニオンたちの姿(この中の一つが展覧会のメインビジュアルでもある)。今回のコロナ禍をはじめ、どんなに世界が不安に覆われ殺伐としても、どこか安穏としていられるのもまた人間の本質ということだろうか。展示会場のラストでは真っ黒なKAWSファミリーが私たちを見送ってくれる。

展覧会は10月11日まで。無料のオーディオガイドもありKAWSのバックボーンや歩みを丁寧に説明してくれるので、ビギナーの方も存分に楽しめる内容となっている。

そして、ブランドコラボや限定グッズなどスペシャルなお土産も忘れずに。

「KAWS TOKYO FIRST」展のグッズをチェックする

展示概要

『KAWS TOKYO FIRST』

会期 2021年7⽉16⽇~10⽉11⽇
時間 10:00~20:00 ※入館は閉館の30分前まで 
会場 森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
公式サイト https://www.kaws-tokyo-first.jp/

KAWS TOKYO FIRST 展覧会ビジュアル

KAWS作品のオーナー権を購入する

ANDARTでは、KAWSの作品を取り扱っている。彼のような世界で注目されるアーティストの作品でも1万円からオーナー権を購入・売買することが可能で、実物作品の鑑賞機会などさまざまな優待を通して気軽に本格的なアートコレクションを楽しむことができる。こちらもぜひご確認いただきたい。

文:ANDART編集部