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アート鑑賞

ヨハン・デックマン個展からJapan展、グループ展まで。MAKI Gallery展示レポート

アート鑑賞

東京都・天王洲にあるMAKI Galleryで開催中のヨハン・デックマン個展「You May Not Want To Hear This」とMAKI Collectionの常設展示「Japan展」、そして現在開催中のグループ展「Connect #2」の展示の模様をご紹介する。

考えさせられる、シンプルな文字のアート

展示会場に入ると、白壁の明るい部屋に英文が書かれたシンプルな作品が展示されているのが目に入る。今回個展を開催したヨハン・デックマンは作品中に文字を使用することで、風刺や、啓発的な表現をする。例えば「I want to feel the way I felt before I knew what I know now(今知っていることを知る前の気持ちを感じたい)」という言葉や「How to trash all existing rules and live happily ever after by your own(既存のすべてのルールを破棄し、自分で幸せに暮らす方法)」などが描かれている。

シンプルかつわかりやすい言葉で表現されているからこそ、誰の胸にも当てはまる節があるのではないだろうか。その中でもとびきり自分に刺さる言葉がみつかれば、家に飾って教訓のように毎日自分に言い聞かせるのもいいかもしれない。

ヨハン・デックマンの作品はキャンバスだけでなく、カバン、本など立体物にも描かれている。特に印象的だったのが、壁にかけられた分厚い本。本の冊子部分は開かないようにくっついているため、中を見ることはできないが、表紙に描かれている言葉から内容を想像することができるので面白い。本棚にしまうのではなく、壁に表紙をメインにして飾るという行為も新しい。

生活の中に溶け込みながらも、強いメッセージ性を発信するアート作品。アーティストであり、心理療法士でもあるヨハン・デックマンの作品は、作品の美しさだけでなく、その言葉から我々の心の奥底に訴えかけてくるものがあるようだ。

ヨハン・デックマン

1976年コペンハーゲン生まれ、現在もその地で活動を続けています。アーティス ト、そして心理療法士として、デックマンはファウン ド・オブジェ(見出された対象)、すなわち本を用いて、 人生の複雑さへの風刺的な解釈を示すウィットに富ん だタイトルや、哀愁を漂わせるフレーズを英語で描い ています。デックマンの心理学的バックグラウンドは、 普遍的に関連付けられる恐怖や、広く共通して経験の ある試練や苦難を組み込んでいる彼の芸術実践へ直接 的な影響を与えています。控えめな見た目の一方で、 アーティストの作品は遊び心溢れているにもかかわら ず、言語の力を最大限活用して鑑賞者を内省へと向か わせます。 近年デックマンは、コペンハーゲンや、ニューヨーク、 ロンドン、ローマ、サンパウロをはじめとする世界各 地で数多くの展覧会を開催してきました。また、彼の 作品はマドリードのパブリックアートコレクションで あるColección SOLOにも収蔵されています。

展示概要

作家名:ヨハン・デックマン
展覧会名:You May Not Want To Hear This
会期:2021年10月16日(土)〜12月11日(土)
会場:MAKI Gallery / 天王洲 I, 東京

絵画、立体からインスタレーションまで、五感が刺激されるMAKI CollectionのJapan展

MAKI Galleryではギャラリーオーナーである牧夫妻が長年に渡ってコレクションしてきた作品をMAKI Collectionとして展示している。ギャラリーの展示とは別に、アーティストの国籍や所属ギャラリーに囚われることなく、「アートをコレクションする」ことに焦点を当て、展示を通してその意義を唱えている。

現在開催中の展示では、絵画や立体、インスタレーションなどジャンルを問わず様々な作品が展示されている。どれもあっと驚くような作品ばかりで、ギャラリーの1スペースながら美術館に来たかのような充実感がある。

まず入ると、様々なアーティストによる大判な絵画と立体作品に迎えられる。圧倒的な個性を放つ作品達が並べられ、非常に刺激的な空間だった。

次に進むと薄暗い部屋があり、そこでは何やらぱちぱちと音をたて火花を散らし機械が動いている。コンクリート剥き出しの壁と、裸電球や電線などが互いに無機質で、ここだけ独特な世界観を醸し出している。インスタレーション作品をコレクションするというのは、一般のコレクターにはなかなか難しいことだが、ギャラリーオーナー自らが、作品がより素敵に見える環境で惜しみなくコレクションを展示してくれるのはとてもありがたい。

展覧会概要

展覧会名:JAPAN
作家名(順不同):鍵岡リグレ アンヌ、井田幸昌、サイトウマコト、篠田太郎、三沢厚彦、三島喜美代、他
会期:2021年5月22日(土)〜
会場:MAKI Gallery / 天王洲 I, 東京

ここからは、MAKI Collectionのもうひとつの常設展示をご紹介。
JAPAN展からそのまま足を進めると、今アメリカでもっとも注目されるアーティストの一人であるジョナス・ウッドの24点からなる大作《Tennis Court Drawings》が並べられている。この部屋はMAKI Collectionのメインの展示のひとつで、ギャラリーのひとつのエリアを使い、24展全ての作品が空間を目一杯使って展示されている光景は壮観だ。この24点の作品は、現在MAKI Collectionにて常設展示されており、2025年まで展示された後にロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)に収蔵されることが決定している。

その奥には常設展示として、壁一面にテニスボールやバスケットボールが描かれたポップな部屋がある。扉があるので進むと、なんとトイレの個室になっていた。洗面台と鏡までついていて、本格的だ。よくみてみると、「こちらのトイレはインスタレーションのため、使用はお控えください。」の文字が。危うく好奇心が勝ってしまうところだった。

MAKI Gallery取り扱いアーティストたちの共演

向かい合って並ぶ建物のもう一方、天王洲IIのギャラリースペースではMAKI Gallery取り扱いアーティストによるグループ展「Connect #2」が開催されている。本展は2021年1月に開催し好評を博したグループ展「Connect #1」の続編であり、素材、表現方法、思想の方向性など全く異なるアーティストたちが集められ、作品が展示されている。

まず最初に目に入るのは、タムラサトルの機械仕掛けの動くチェーンの作品。チェーンは無骨な印象を受けるが、反して「TOKYO」や「LOVE」「HOPE」などの文字を形成しており、どこか親しみを覚える。

少し進むと、ミヤ・アンドウのキューブ型の木製の作品や、反射して光るアルミ複合版に雲が描かれた作品が展示されている。ミヤ・アンドウらしい「これはなんだろう?」と思わせる不思議な素材に惹きつけられ、自然の強さや儚さを表現したような世界観に魅了される。

その反対側には、塔尾栞莉の作品が展示されている。小さな正方形からなるモザイクのような作品で、一見何が描かれているかわからないが、よく見るとモチーフが浮かび上がってくる。彼女は、自分の幼少期の写真や自身が撮影した写真を引用し、ふとした時に思い出される純粋な記憶の大切さと儚さを表現している。

今回ここでご紹介した作品・アーティストは全体のごく一部。ぜひグループ展に実際に足を運んで、才能が重なり合う空間を楽しんでほしい。

展覧会概要

展示アーティスト:タムラサトル、田村琢郎、塔尾栞莉、ミヤ・アンドウ、山本隆博、baanai、他
展覧会名:Connect #2
会期:2021年10月30日(土)〜2021年12月25日(土)
会場:MAKI Gallery / 天王洲 II, 東京

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文・写真:ANDART編集部