
Rikka Gallery 麻布台がオープン。 オープニング展の水戸部七絵・高山夏希 2人展をレポート
2021年6月4日(金)麻布台に新しいギャラリー・Rikka Gallery 麻布台がオープンした。現在、オープニング展として水戸部七絵と高山夏希の2人展「HUMANITY展」を開催している。
絵の具を手ですくい大胆なタッチで直接キャンバスに描く水戸部と、注射器を使って緻密に色を重ねる高山。一見対照的にも見える作風の2人展の様子を紹介する。

▍平面アートの概念を超越した立体的な表現・水戸部七絵

今回、水戸部七絵は、著名人をモチーフとした作品シリーズを展開している。デヴィッド・ボウイ、ビリー・アイリッシュらをモチーフとした作品が並ぶ中、特に目を引くのは、シンガーソングライター ドリー・パートンをモチーフに、2,000 x 2,000cmというサイズで色鮮やかに描かれた≪Dolly Refused to be Turned into a Status≫ (2021)。著名人を“そっくりに”描くのとは違い、しかしながらその顔は複雑で魅力的な表情を見せる。

15Lの絵の具が入った一斗缶から直接絵の具を手ですくって、キャンバスに描いていくという水戸部。積層された分厚い絵の具は、立体作品のようでもあり、キャンバスの前を歩くとその凹凸により人物の表情が変化していくようにもみえるほどだ。


「私はかっこよく描き上げるわけではないし、ぐちゃぐちゃに崩してしまう。やはり、スターの人生にも波があるわけで、スキャンダルがあったり、社会的にピンチな時が何度もあった。でも、その背景を踏まえた表情を描きたいというか。見た目の美しさとか顔が黄金比で素晴らしい、ということを描きたいとは思わないんです。」
(アルスくんとテクネちゃん 画家 水戸部七絵インタビューより )
▍境界を作らず 空間や対象を線で繋げる表現・高山夏希

高山夏希は、絵筆を使わず 注射器でアクリル絵の具をキャンバスにのせ、それをカッターや彫刻刀で削るという独自の技法で作品を制作している。

1,445 x1,445mmものサイズの≪world of entanglement birdman≫(2021)は、1枚の作品の中で多様な表現を見せる作品。刺繍を一針一針紡いでいくように細かく絵の具を繋ぐ箇所、それに彫刻刀で鋭い凹凸の表情を表した箇所、積層した絵の具を削り取ることで地層のように複雑な表情を見せる箇所など、その細部に引きつけられる。

一見、抽象画のような高山の絵画だが、実は風景などの写真をモチーフに制作を行っているという。近づくとその細部の表現に目が行ってしまうが、少し離れてみると、筆触分割のようにつくられた緻密で複雑な色味のなかに、海のような風景や、生き物のようなモチーフが見えてくる。

2人の作風は対照的なようであり、一方、両者はアート制作の中で人間そのものを再度見直し、また社会との繋がりを考え、それを作品として昇華させている。またその立体的で複雑な表現は、どちらも写真で見るのと実物を鑑賞するのとでは大きく印象を変化させる。

会場のRIKKA GALLERYは、大通りに面し、一面がガラス張りで心地よい開放的なスペース。 今回の展覧会では、見応えのある大型の作品から、購入しやすいサイズの作品までバラエティに富んでいるのも魅力だ。「HUMANITY展」は6月25日(金)まで。
【展覧会情報】 HUMANITY展

webページ:https://rikkagallery.com/exhibitions-1/humanity
参加アーティスト:水戸部七絵、 高山夏希
日時:6月4日(金)~6月25日(金) 11:00~18:00 日曜定休
会場:Rikka Gallery 麻布台
住所:〒106-0041 東京都港区麻布台3丁目5−5 (株)アトランティックカーズ内
電話番号:050-7123-3662
「YOUANDART」では、水戸部七絵の作品を紹介している。より詳しく知りたい方はこちらもチェック。
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文:ぷらいまり。