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アート鑑賞

南青山に藤井フミヤ主宰のギャラリー誕生!「つながり」から始まる、クリエイティブな可能性が開く未来へ

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藤井フミヤが今秋、東京・南青山に新しいアートスペースFeb gallery Tokyoをオープンさせた。そして現在、記念すべきオープニングを飾る第一弾の展覧会はKeep in touch(〜11月14日)が行われている。本展には藤井の作品をはじめ、本人と親交のある友人・知人アーティストたちによる作品が大集結。高橋盾、NIGO®️、木梨憲武、田島一成、田辺ヒロシ、KYNE、永井博、Ed TSUWAKI、米原康正といった豪華メンバーが名を連ねる。

音楽とアート、ふたつの顔を持つ藤井フミヤの新たな活動拠点からの出発。話題の新スポットで行われている展覧の内容を紹介する。

「Feb gallery Tokyo」は、南青山の閑静な住宅街の一角にある。白が基調の空間は、スタイリッシュな雰囲気がありながらもゆったりと心地よく過ごせるスペースで、ゆっくりアートを楽しみたい方にはぴったりの空間だ。

ギャラリーの入り口より全景 奥には中庭も。

入り口付近では、右手にはフォトグラファー・田島一成の写真が出迎えてくれる。田島一成といえば「枯れた花」をテーマにした写真作品が有名だが、こちらもそのシリーズの一つ。枯れた花が被写体であることを一瞬忘れてしまうほど、独自の色のグラデシーションと花のフォルムが美しく調和している。また写真でありながらも、どこか「絵画」を思わせる雰囲気もあり、見るほどにどんどんその世界観に引き込まれていく魅力がある。

少し先には、NIGO®️の作品も。空間の特徴をうまく生かして、柱にぴったり収まるように展示されている。「THE FUTURE IS IN THE PAST」という言葉は哲学的で、既存の時間の枠組みや概念に揺さぶりをかけるようなメッセージ。心に深く迫ってくる何かがある。

中央には、展示スペース全景の様子を映し出す映像作品(本展のキービジュアルとしても使われているもの)をはじめ、知る人ぞ知るカスタムペインターの大御所・倉科昌高の作品、そして右手にはSKOLOCT(スコトロクト)の作品が展示されている。SKOLOCTといえば90年代初頭、原宿で一大ムーヴメントとなったストリートブランドの世界観を具現化した、裏原カルチャーを牽引してきた人物の一人。ポップなアイコンが描かれた作品からも、なんともいえない魅力が溢れるように伝わってくる。

ちなみに中央の映像は、天井に設置されたカメラが捉えた映像を試しに投影してみたところ「作品のように見える」ことから、空間にマッチするかもしれないと考え、展示することになったのだという。

カメラが捉える動きはリアルタイムで、刻一刻と移り変わっていく。そのため映し出される映像は一度たりとも同じになることはないが、動くたびに映像が変化していく様子を見るのも楽しい体験となるはず。今話題の、「ミラーワールド」を擬似体験しているような感覚を味わうことができるかもしれない。

続いてこちらはジョニオこと、高橋盾による作品。どこかシュールな雰囲気が漂う本作は、何を表しているのだろうか。独自の世界観が紡ぎ出す、物語の世界に引き込まれていくような不思議な気持ちにさせられた。

続いては、木梨憲武による作品。赤を中心にビビッドな色使いの抽象画や英文のメッセージを加えた絵画制作で知られる木梨だが、こちらは点描の技法によって描かれたもの。色とりどりの花びらを集めて、一つの花束を表現したのだろう。《感謝》というタイトルに木梨がに込た思いがダイレクトに迫ってくるような、あたたかさと愛に溢れた作品だ。

会場のやや奥まったスペースには、今話題のKYNEの作品も。藤井フミヤと出身が同じ福岡ということもあり、その上つながりもあったため、今回作品を展示する流れになったという。絵のモチーフとなるクールな表情の女性は「Consider Others」という言葉をもって、私たちに大事なメッセージを投げかけてくれているようだ。

こちらは女性アーティスト・ミヤギユカリの作品。モチーフである鹿と淡い色合いが調和している。どこか懐かしく、優しい気持ちを運んでくれるような作品だ。

そしてこちらは、藤井フミヤの作品。モダンな雰囲気がありつつも、どこか日本画の趣が感じられるような味わい深さが印象的だった。スペースの奥まった場所にそっとさりげなく展示された本作は、ともすると見逃してしまう可能性もあるので、ギャラリーに足を運ばれる際には必ずチェックしてほしい。

なお今回の訪問で、ギャラリーのプロデューサーである田辺良太氏に、ギャラリーオープンに至るまでの経緯、そして今後の展望についてのお話を伺いすることができた。

――藤井フミヤさんは本当に多彩な方で、音楽活動と並行して、アーティスト活動をずっとされていたのですよね。

はい。藤井フミヤは80年代から音楽活動していましたが、90年代に入って早々、音楽と並行してFUMIYART(フミヤート)として、アーティスト活動を始めたのが最初です。(※FUMIYARTのインスタグラムはこちらをチェック!)

当時はちょうどMacが日本に入り始めてきた初期の頃で、一般にはほぼ知られていない時期でした。ただそういう中でも、交流していた仲間たちからの影響もあって情報は早いですからね。藤井はいち早く最新機器のMacのコンピュータを入手して、グラフィック制作を始めるようになったんです。最近はデジタルではなく、アナログで絵を描くことが多くなりましたが、その頃からですからFUMIYARTとしての活動は、トータルでかれこれ30年くらいになります。 アーティストとしては、初期から最近までの活動を振り返るということで、「デジタルとアナログで創造する藤井フミヤ展 多様な創造新世界 The Diversity」という大規模な展示を行なっています。こちらは2019年の東京を皮切りに、現在も全国を巡回中です。

――30年、もうそんなに経つのですね。今、大規模な展示が全国を巡回中とのことでしたが、ご自身でギャラリーをやられていたことは過去にあったのでしょうか。

はい。実はこれまで過去に2回、藤井はアートスペースを主宰していたことがあったんです。

最初は、今から23年ほど前に広尾で「FUMIYART gallery」をスタートさせたのが始まりです。この時は、アートの展示の他に日比野克彦さんがオンラインの劇のようなものをやられたりもして。知り合いを巻き込んで、色々な企画をやっていました。

その後、移転して、中目黒に新たなカフェバー兼ギャラリーとして「スペースフォース」がオープンしました。この頃は2年間でトータル24回くらいだったかな…ほぼ毎月のペースで企画展やイベントをやっていた時期がありました。

藤井のまわりには知人・友人には音楽業界をはじめデザイン、ファッション関係と、クリエイティブで刺激的な人たちがたくさんいたので、業界を超えて人と人がつながったり、そこから面白いことや新しいことがどんどん生まれていくような空気感がありましたね。その時はアートの展示だけではなくDJイベントをしたり、海外アーティストの展覧会なんかもやったりして。ある時はアパレルのサンプルセールの企画をしたこともありましたが、その時は大行列ができて。いつも熱気に溢れていて、すごく楽しかったです。

――そうだったのですね。では、そうした布石があっての今に至るということがあると思うのですが、今回オープンした「Feb gallery Tokyo」のコンセプトといいますか、これまでと違う点や新たなテーマなどがあれば教えていただけますか。

そうですね。スペースフォース時代は、場所が中目黒だったこともあってカルチャー好きの若者、それから業界問わずクリエイティブなバックグラウンドを持った人たちが集まってくださったこともあり、「ザ・カルチャー」というような(笑)、すごくパワフルな雰囲気がありました。

それから20年くらい経って色々な変化もあり、街の中心ではなく少し 奥まった落ち着いた場所で新しく始めようと。その時に「仲間たちと一緒にやろう」という気持ちはこれからも忘れずにやっていきたいよね、と話していました。そこで、「古い友達、出会ったばかりの友 達、友達の友達、なんか一緒にやろう!繋がっていこう!繋がっていよう!」というメッセージを込めた「Keep in touch」というテーマが 生まれました。

そもそもアートはジャンル分けできないくらい広い世界で、絵画、音楽、デザイン、写真、ファッションと、すごくクロスオーバーに様々な要素が影響し合ってできている世界ですよね。そう考えると、あらゆる要素がアートに繋がっているとも言える。だからこそ、様々なジャンルで活躍する人たちが垣根を超えて「つながる場」があったらいいなと思いました。

実際にアーティストは、藤井も含めていったん創作を始めたらこもって集中というタイプの方たちも多いので、こういう場を通してインスピレーションを与えたり・与えられたりという化学反応が起こってくると、またそこから新しいものが生まれる可能性も生まれてきますし。

――こういう時代だからこそ「場」の持つ力は大きいですよね。今回の展示でも、藤井フミヤさんの持っていらっしゃる仲間を大切にされている姿やお人柄がよく伝わってくるようでした。今はとくに「つながり」は今の時代のキーワードになりつつあると思うので、そういう意味でも、ここから色々な可能性が広がっていきそうな予感がありますね

そうですね、コロナによって世界が分断されましたからね。だから、そういう中で、改めて「つながりを確かめる」という意味もあると思っています。「Keep in touch」というのは、オープニングのテーマだけではなく、このギャラリー自体の大事なコンセプトでもあるんです。

――それでは最後に、これからの展望や、これから企画されている展示などについて教えてください。

今回はオープング企画ということで、藤井の友人、知人アーティストに協力してもらいましたが、実際にやってみて、すでに色んな「つながり」が生まれているなということを日々感じています。アーティストを通して昔の縁がまた復活したり、新しい出会いが生まれたり、知り合いの知り合いが、実はあの人とつながっていたという意外な発見もあったりして。そういう様子は見ているだけでもワクワクしますし、やっぱり嬉しくなりますね。

そういう意味でいうと、ここは一応ギャラリーと呼んではいますが、毎回色んな企画によってそこに集まった人たちがつながり、インスピレーションを分かち合う場という意味では、「アートスペース」といった方が、よりここのイメージに近いかもしれないです。

こちらは閑静な住宅地の一角で、スペース内には中庭もありますし、全体的に落ち着いた、どこかアットホームな雰囲気もあるので、この空間の良さや場のポテンシャルを生かせるような面白い企画をこれからどんどんやっていけたらいいですね。

アートの展示だけでなく、インテリアやアート本などもこの空間に溶け込むイメージもあるので、今はそういった新しい企画も考えています。すでに色々な方がこの場所を訪れてくださって、スタートとしては非常に好調なので、ありがたいなと思っています。これから色々な方を巻き込んで面白いことをやっていきたいと考えていますので、ぜひ楽しみにしていてください。

展覧会情報

Keep in touch

会場:Feb gallery Tokyo (東京都港区南青山4-8-25)
会期:2021 年 10月 4日(月)~ 2021 年 11 月 14日(日)
時間:11:00 ~ 18:00
休館日:本展の開催期間中は水曜日を休館日とする

※Feb galleryは予約制のギャラリーです。ご来場の際は専用ページより必ずご予約の上ご来館下さい。

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取材・文/ 小池タカエ