
コレクションの ”最初の1枚” どうやって選ぶ? biscuit galleryの「買える!コレクター展『Collectors’ Collective Vol.5』」 でコレクションの魅力を伺う。
“アート作品を買ってみたいけれど、「最初の1枚」ってどうやって選んだらいいんだろう?”
”少しずつ作品を買っているけれど、これからどうやってコレクションを広げていこう?”
自分で作品を所有したいと思ったとき、悩むこともありますよね。そんな時にオススメしたい展覧会「買える!コレクター展『Collectors’ Collective Vol.5」」展(通称:コレコレ展)が、渋谷の「biscuit gallery」で開催されています。

▍3名のアートコレクターによる注目作品が「買える」展覧会
2019年に第1回が開催され、今回で5回目となる「コレコレ展」。いわゆる「ビッグコレクター」がコレクション作品を展示公開するのとは異なり、一般のコレクターがコレクションした作品を展示することに加え、展示するアーティストの新作を同時に展示販売するというユニークな展覧会です。
参加するアートコレクターは一般のビジネスパーソンが中心で、作品も数万円で購入出来るものも多いため、「購入して自分の家で飾る」イメージが作りやすいのも嬉しいですね。
今回の「コレコレ展」の会場は、渋谷にある3フロアからなるギャラリー「biscuit gallery」。3名のアートコレクターが、それぞれ1フロアずつを担当して展示をキュレーションしています。

今回参加するコレクターは、30代後半のアートウォッチャーでコレクターの石川賢司さん (1階展示担当)、20代後半のサラリーマンコレクター・ゆとリーマンさん (2階展示担当) 、多摩美大卒、作家活動、画廊勤務の経験をもち、買い手、売り手、作り手の視点を持つコレクター・gutsurohiさん (3階展示担当)。
フロアごとにコレクターの興味が色濃く表れるほか、アーティストごとのキャプションには、作品の解説だけでなく、展示するアーティストとの出会いや、なぜその作品に惹かれるのかといったことがコレクター本人の言葉で書かれており、自然とその「魅力」が伝わってきます。

▍コレクター・ゆとリーマンさんに聞く、「コレクション」の魅力
では、コレクターの皆さんは、どのようなことを考えてコレクションを作られているのでしょうか? 今回、2階の展示を担当したコレクターのゆとリーマンさんにお話を伺いました。

ーー まず、どういったきっかけでコレクションを始められたのでしょうか?
もともとは、アートとは全く無縁の生活をしていたんです。小学校の頃の図工は自由に表現できて好きだったんですけれど、中学校の美術で「技術」や「知識」が重視されるようになって、その堅苦しさから苦手になってしまって。
それ以来、アートとは無縁の生活を送っていたんですが、きっかけは「13歳からのアート思考 (末永 幸歩 (著), ダイヤモンド社) 」という書籍を読んだことでした。現代アートは、表現方法や技術にとらわれることなく、自分が表現したい事をもっと自由に掘り下げられるように感じられて。「アートって面白いものなんだ」っていう再発見がありました。
興味を持ち始めてアート関連の本を読み進めていく中で、現代アートはサラリーマンでも買えることを知って。著名な作家さんの作品なら間違いないだろうと考えて、最初に購入したのが金氏徹平さんの作品でした。
”無意識下で自分が「良い」と思うものを購入していくということは、ある意味自分も「表現」しているといえるのかもしれません。”

ーー 最初に著名な作家さんの作品を購入されたんですね。その後は、どういった軸でコレクションをされているのでしょうか?
すごく悩ましいんですが。主軸というか、こうしていきたいなというのは、自分と同じ年代の作家さんを中心にしていきたいというのがあります。
ただそれ以外のこだわりはあまりなくて。私の作品に対する興味や趣味って、ライフスタイルや知った情報、知識によって変わっていくんですよね。でも、むしろそれを楽しみたいというか。自分がその時に、いいな、欲しいなと想ったものを買っています。無意識下で自分が「良い」と思うものを購入することは、ある意味、その時の自分を「表現」しているといえるのかもしれません。
先輩コレクターの方々みたいに、コレクションの方向性が決まっている人は凄いなって思います。私はなるべく自分の直感に身を任せているので。ただ、その直感をどう磨いていくかは考えています。例えばアートの勉強をしたりとか、たくさん展示を見たりとか。
あと、自分に正直に買いたいですね。流行りそうだとか、値上がりしそうだっていう雑念が入っちゃうと、その人のコレクションを見ても、その人がどういう人物かというのは分からないと思うんです。ある意味自己紹介になるような、最終的に振り返ったときに「確かにゆとリーマンってこういう人だよね」ってわかるようなコレクションをしていきたいと思っています。
ーー 自分のコレクションが、その時の自分を「表現する」という言葉にははっとしました。描いたり作ったりする事だけが「表現」ではなく、コレクションすることもひとつの表現なのかもしれないですね。
”せっかくアートを好きになったなら、もっと色々なものを見ると楽しいよ!って。”

ーー今回の展示は、すべてご自身たちでキュレーションされたと伺いましたが、ゆとリーマンさんはどのようなことを考えて展示を作られましたか?
私は、本当に好きな人を集めました。ただその中で、さまざまな表現の作家さんの作品を展示することは意識しました。
今、アートブームでアートに興味を持ってくれる人は増えていると思うんですけれど、マーケットで人気の作品は偏っていたりもすると思うんです。「映える」感じの作品だったりとか。でも、せっかくアートを好きになったなら、もっと色々なものを見ると楽しいよ!って。
「コレコレ展」自体がコレクターの裾野を広げるコンセプトがあるんですけれど、「こういう作家がいるんだ!」、「こういう表現があって、コレクションもできるんだ!」って気づくきっかけになったらいいなという想いがあります。
ーー ライブペインティングまであって、たくさんの表現に触れられるのが本当に楽しい展示室ですね。
”自分の「好き」を探すのって、実はすごく難しい事だと思っています。”

ーー 最後に、これから「最初の1作品」を購入したいと思う人へのアドバイスがあれば教えてください。
こういう時、「自分の好きな作品を買ってください」っていうアドバイスがよくあると思うんですけれど、自分の「好き」を探すのって実はすごく難しい事だと思っています。
私は、まだコレクター歴1年半ではあるんですが、「好き」なものをうまく説明できないんですね。
それで、なるべく「好き」を突き詰めていくために、私がやったのは、SNSでいいなと思ったアーティストさんや、趣味が合いそうなコレクターさんがいたらフォローしていくことなんです。そうすると数珠つなぎに、いいなと思うものがつながっていくんですよね。そうやってつなげながら、どんどん自分の「好き」に近づいていく感じがします。
ーー「コレコレ展」では、そんな風にSNSで拝見している実際のコレクターさんたちとお会いして、情報交換したりできるというのはまた大きな魅力ですね。
コレクターと話すのは本当に刺激になりますし、普段SNSでは見ていても、やっぱり会って話すのは違いますね。新しい引き出しが見えるというか。いろんな話が聞けるのはコレクションしていく上でいいことかなと思います。だから、見に来るだけ、話しに来るだけでも、展示に来てくれたら嬉しいです。
ーー ありがとうございました。
普段はなかなか見ることができない個人のコレクションを覗くことができて、そのコレクターさんのオススメ作品を購入することができ、さらに、コレクター同士での交流もできる「コレコレ展」。
「最初の1枚」に悩む方も、コレクションの広げ方に悩む方も、ヒントを探しに「コレコレ展」を訪れてみませんか?
【展覧会情報】買える!コレクター展「Collectors’ Collective Vol.5」
会場:biscuit gallery 1階〜3階
参加アーティスト(全14名):青木美紅、網代幸介、岩岡純子、城月、黒坂祐、庄司朝美、田中一太、花沢忍、平野真美、Funny Dress-up Lab、星山耕太郎、松田ハル、三瓶玲奈、渡辺豊 ※50音順
会期:2021年12月2日(木)〜12月19日(日)
時間:13:00〜19:00(土日祝:12:00〜18:00)
※月〜水休
入場:無料
公式サイト:https://collectors-collective.com/
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文:ぷらいまり