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アート鑑賞

京都で注目の現代アートギャラリーにて、「勝木有香 佐藤雄飛 二人展〜目眩(めまい)」が開催中

京都・祇園のカルチャースポット「y gion」にあるCANDYBAR Gallery(キャンディーバーギャラリー)で、10月9日(土)より「勝木有香 佐藤雄飛 二人展〜目眩(めまい)」が開催されている。

目に映るものの対象や輪郭をはっきりと捉えることができない「目眩(めまい)」を主題にした本展。二人の若手アーティストの各々の表現が、この抽象的なテーマと一体どのように重なり合い、化学反応を起こしてゆくのだろうか。展覧の様子と合わせて企画担当者からのお話をもとに、本展の魅力をご紹介したい。

常に動き、変化し、時間と共に流れていく“瞬間”を集積する、勝木有香

勝木有香は、1996年生まれのアーティスト。その時々で状態や状況が変化し、片時も止まることのない物事の「動き」に注目し、それを独自の視覚表現に落とし込んでいる。また平面上に象られた動きはアニメーションのコマを想起させるもので、独自のポップな印象を与えているのも特徴的である。

展示風景より 勝木有香の作品

本展で紹介されているのは一つは木の板に、もう一方は大判のキャンバスに「動き」が、いずれもシルクスクリーンによって表現された作品である。

シルクスクリーンといえば、「紙に擦る」という一般的なイメージがあるかもしれない。しかし勝木は今回敢えて「木」という有機的な素材を選び、そこに直接シルクスクリーンの技法を施して作品を制作したという。二次元の世界にも関わらず、躍動感あふれる動きが立体として浮かび上がってくるようなイメージもあり、まるでアニメーションを見ているような楽しい気分にさせられる。また同時に、年を重ねるごとに独自の風合いを醸し出される経年変化を味わえるという点も魅力だろう。

展示風景より 木にシルクスクリーンの技法が施された作品

もう一方は、大判で背景が光沢のあるホワイトのキャンバスに「動き」がリアルかつダイナミックに踊る作品。こちらは木の作品群に比べて、点や線の筆致がクリアに見える分、一コマごとの回転がよりスピーディーに走っていく様子が感じられる。

展示風景より キャンバスにシルクスクリーンの技法が施された作品

シルクスクリーンが施された素材は異なるものの、それぞれに施された「動き」に注目するのは面白い体験となるだろう。

イメージとの隔たりをフィルター越しに表現する、佐藤雄飛

佐藤雄飛は1994年生まれのアーティストである。自らが撮影した写真を使って半透明のアクリル板の上からシルクスクリーンの技法で版を重ねることで、対象そのものに微妙なゆらぎが生まれ、見る者の視覚には曖昧なイメージがもたらされる。こうした抽象的な表現を用いながらも、「実際にあるもの」を自分のフィルターを通して落とし込んでいるという点は、佐藤の作品の大きな特徴である。

本展では、窓ガラス越しに見える家の中のイメージを表現した作品をはじめ、ハイネケンとコロナビールの写真を元に、アクリル版上に実物大の大きさの瓶を再現させた作品が展示されている。

アクリル版の先に少し手を伸ばせば、すぐそこに実物のモノが存在しているかのような錯覚を起こさせる独特のムードと佇まい。どこか「残像」にも似たイメージをもたらす佐藤の作品からは、モノに秘められた微かな気配とそのまわりに流れる空気が、静かな余韻となって立ち上ってくるかようだ。


ギャラリーのディレクター・平丸陽子氏は、本展の魅力をこう語る。

「今回の企画展は、二人とも共通してシルクスクリーンの技法を使っていますが、勝木さんは瞬間瞬間に移り変わっていく「動き」のブレのようなものを表現していますし、一方の佐藤さんはイメージとの隔たりをご自身のフィルターを通して表現しています。そういう意味ではどちらも曖昧で、対象をくっきりとは捉えられないものをテーマに作品に落とし込んでいるという点で共通している。そうした通底するテーマがある中で、個々でも魅力があるところを敢えて二人展にすることによって、お互いのそれぞれの良さが引き出されて、面白い展開になるのではないかと思って企画しました」

さらに今回、二人のアーティストに共通するテーマであった「シルクスクリーン」の魅力については、

「シルクスクリーンって、実はすごく面白くて色々な可能性をもっている技法だと思うんですね。一般的にイメージされるような紙に擦る技法だけではなくプラスチックもガラス、他にも布なんかにも重ねることができる。平面の素材であれば基本的に素材を選ばずに擦ることができるんです。最近では水にもインクを垂らしてシルクスクリーンで表現できる技法もあるそうで。もちろん水に映し出すので半永久的に残るものではないですが、そういう方法もあるということが、非常に興味深いと思います」

と語ってくれた。

2018年オープン以来、アートや音楽、写真やファッションに至るまで、感度の高い人々が集まる、知る人ぞ知るカルチャー発信スポット「y gion」内のCANDYBAR Gallery。オーナーの高岩シュン氏はアンディ・ウォーホールをはじめ、KAWSやバンクシーなど、現代アートのコレクターでもある。ギャラリーでは自身のコレクションの他にも、注目の若手アーティストの作品を積極的に紹介している。そうした背景もあって、ここを訪れるのも20代から50〜60代と、その年齢層も幅広い。

ウォーホールやKAWSといった有名どころの作品も扱っていますが、企画展ではこれからもどんどん良い若手アーティストのご紹介もしていきたいと思っています。そういう機会を通して、どんどん若い層の方にももっとアートを楽しんでいただける場を提供していけたらいいなと思っています」と、平丸氏。

すでに来月以降、来年にかけての企画展の構想もあるようなので、ぜひチェックしてみていただきたい。(CANDYBAR Galleryでの「目眩(めまい)展」は、今月24日(日)まで)

なお、勝木有香と佐藤雄飛の作品は同ビルの4Fのスペースでも展示されているので、ぜひこちらも合わせてチェックしたい。

4Fスペース 全景

展示風景より モノの動く様子が幾重にもトレースされ、まわりの空気感は無数の点によって表現されている

展覧会情報

勝木有香 佐藤雄飛 二人展〜目眩(めまい)

会場:CANDYBAR Gallery(キャンディーバーギャラリー)京都府京都市弁財天町19 Ygion2F
会期:2021 年 10月 9 日(土)~ 2021 年 10 月 24日(日)
時間:水〜土曜日 14:00 ~ 20:00、 日曜日 12:00 ~ 18:00
休廊日:月曜日、火曜日

※なお本展覧会は、10月20日(水)〜 10 月 26日(火)期間で、no-ma(東京・渋谷PARCO)でも開催予定。その他藤井大丸(京都)の1Fエントランスにて、11月15日(日)までの期間で、勝木有香と佐藤雄飛の作品展示と正面玄関のラッピングを行うので、合わせてチェック。

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取材・文/ 小池タカエ