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最先端技術でバンクシーを体験!渋谷の「世界一小さな美術館」訪問レポート

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イギリス・ブリストルを拠点として世界を騒がせてきた正体不明のストリートアーティスト、バンクシー。その代表作のひとつが、東京・渋谷に登場した。


場所は、渋谷フクラス内東急プラザ渋谷2Fの「GMOデジタル・ハチ公」。最先端ホログラムのハチ公は、定番待ち合わせスポットの忠犬ハチ公像をデジタルで再現したもので、2019年12月に誕生してから新たなランドマークとなっている。このたび2021年9月5日、「世界一小さな美術館@GMOデジタル・ハチ公」として、リニューアルオープンを果たした。

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オープンに伴う第1弾企画では、「Banksy Artworks from Masatoshi Kumagai Collection(バンクシー展)」として、かの有名なバンクシーの代表作《風船と少女》を展示。この作品については、こちらの記事で紹介しているのでご一読いただきたい。


「世界一小さな美術館」のコンセプトは、「スペースは世界最小ではあるものの、お客様が得られる情報は世界最大」。作品そのものを鑑賞できるだけでなく、映像やサウンドが一体となった展示空間全体をひとつのアートとして体験できる。本記事ではそんな”最先端のバンクシー体験”の見どころをご紹介する。

会場で出迎えてくれたのは、動くハチ公。隣に設置されたディスプレイにタッチすると、「おて」や「ふせ」など芸もしてくれるという。渋谷の街並みに浮かび上がるリアルなハチ公に、最先端の技術を駆使した展示への期待も高まる。

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ハチ公の後ろの展示スペースには、両サイドに巨大LCDビジョン(液晶ディスプレイ)が設置されている。鑑賞時間は、約10分のスペシャルムービー上映と合わせて約20分間。近年「没入型」のアート体験は世界各国で注目されており、日本でもチームラボの展示や、東京・大手町で公開された「巨大映像で迫る五大絵師」が話題を呼んだ。ここでは、どんなアート体験が繰り広げられるのだろうか。

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「世界一小さな」というだけあって、それほど広いスペースではないが、だからこそスクリーンに囲まれた時の没入感が強い。全身を囲む映像と、最新の音響技術によるハイクオリティなサウンドによって、スペシャルムービーが始まると同時にバンクシーの世界に引き込まれていく。

ムービーの上映には、グローバルに事業を展開するテクノロジー企業バルコ社の220インチディスプレイとロールスクリーンを使用し、高精密でシームレスな映像を実現。バンクシーについての解説と、ストリート感あふれる演出がされたデジタルアートの両方が、大画面で同時に楽しめるつくりとなっている。

そして、ふと気づくと正面右端にバンクシーの姿が?! 黒いパーカーのフードをかぶった姿は、バンクシー自身が監督を務めたドキュメンタリー映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』などで、顔を隠したまま時折現れるバンクシーそのもの。神出鬼没のアーティストらしい登場の仕方だ。運が良ければ出会えるかもしれない。


画面には、定番のネズミから、先月イギリスで見つかったばかりの新作まで、バンクシーの作品が次々と大きく映し出された。バンクシーに注目してきたファンはもちろん、ここで初めてバンクシーに触れるという人にとっても、これまでのバンクシーの活動をまとめて振り返る絶好の機会となる。

また、映像だけでなくサウンドにもぜひ注目してほしい。導入されているのは、ソニーが開発した新世代の立体音響技術「Sonic surf VR(SVR)」。立体感のある音響空間を実現するだけでなく、形のない”音”をオブジェクトのように空間に配置することができ、パーテーションのようにひとつの空間を区切ることも可能にするテクノロジーだ。

本展のナレーションは日本語・英語のバイリンガルとなっており、スペースの左半分に立つと日本語、右半分に立つと英語が聞こえるようになっている。グローバルなスマートシティ渋谷らしい演出だ。最先端の技術により、全方位から音に包まれるような体験をすることができた。

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映像後半では《Girl with Balloon(風船と少女)》にフォーカスが当てられ、かの有名な「シュレッダー事件」が再現される。2018年サザビーズ・ロンドンのオークション会場で、作品がフレームに内蔵されたシュレッダーで裁断されていく様子に、人々が驚きの声をあげる場面が映し出された。切り刻まれた作品を前にした等身大の人々に囲まれ、まるでその場に紛れ込んだかのような臨場感を味わえる。

約10分間のスペシャルムービーが終わると、いよいよ作品との対面だ。スクリーンがあがって、フレームに入った《風船と少女》が現れる。このモチーフはバンクシーの作品の中でも代表的なもので、2002年にロンドンで初めて登場して以来、アレンジを加えて世界各地に描かれてきた。

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本展で展示されているのは、2004年に制作された150点のシルクスクリーンプリントのひとつ。アートコレクターとしても知られオフィスにギャラリーを設けている、GMOインターネットグループ代表の熊谷正寿さんのコレクションの中の1点だ。

作品左下にエディションナンバーが入っているので、見逃さないようにチェックしよう。合わせて書かれているハート付きのサインは、関係者への販売時のみ施される大変貴重なものとなっている。


もうひとつ忘れずに観察してほしいのが、作品のフレームだ。「シュレッダー事件」のニュースを振り返ってみると、後に《Love is in the Bin(愛はごみ箱の中に)》と名付けられた作品の、シュレッダーが仕込まれていたフレームと全く同じに見える。実は、3Dプリンタ等を駆使し、極限まで近づけて制作されたものなのだ。作品そのものと合わせて、世間をにぎわせたバンクシーのアートを堪能してほしい。

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ムービー、作品、フレーム。全てが一体となって、展示作品が1点のみとは思えないような満足感のある20分間の体験が終了した。また、最後にはスクリーンに赤い風船が映し出され、風船に手を伸ばす少女になりきって記念撮影ができる。


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また、会場を出てすぐの渋谷駅西側にある商店街・渋谷中央街の80ヶ所に、赤い風船をモチーフにしたフラッグが登場している。路上を主な舞台として活動するストリートアーティストに合わせた粋な試みだ。QRコードで公式情報にアクセスすることもできるので、展示を訪れる際には探してみよう。


渋谷駅から程近い場所で、バンクシーの代表作鑑賞と最先端のデジタルアート体験ができる貴重な機会。ぜひ立ち寄って、話題の尽きないアーティスト・バンクシーの世界をのぞいてみてはいかがだろうか。また、東京・天王洲アイルの寺田倉庫でも、2021年8月21日〜12月5日の会期で、大規模な展覧会「バンクシーって誰?展」が開催されている。こちらも合わせてチェックしたい。

【イベント情報】
「Banksy Artworks from Masatoshi Kumagai Collection(バンクシー展)」

■会期:2021年9月5日(日)~
■会場:「渋谷フクラス」2F 世界一小さな美術館@GMOデジタル・ハチ公
■展示会公式HP:https://hachiko.gmo/
■住所:東京都渋谷区道玄坂1-2-3
■休館日:「渋谷フクラス」に準ずる
■開館時間:11:00~20:00(1公演20分の入れ替え制、鑑賞人数制限あり)
 ※開館情報は変更となる場合があります。最新情報は公式HPやSNS等でご確認ください。
■入館料金:一般・大学生:300円/小・中・高校生:100円/未就学の子供:無料
 ※障がい者とその介護者各1名は無料。入館時に障がい者手帳等を提示
■チケット購入URL:https://www.e-tix.jp/gmo-art/
■その他:入館時に検温を実施。37.5度以上の場合、入館は不可。入館にはマスクの着用が必要。アルコール消毒、所定の感染予防策にご協力ください。

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文:ANDART編集部