本気でアートマーケットに新しい経済圏を創造する。『ANDART』立ち上げに至るまで。

”日本中をみんなの美術館に”をコンセプトに、アート作品の共同保有プラットフォームを始めた株式会社ANDART。

前後編に分け、会社の原点、現在感じている課題感や、サービスの今後について代表の松園詩織さんと取締役の高木千尋さんにお話しを聞きました。

今回の前編記事の内容

  ・サービスの内容と特徴

  ・サービスを立ち上げた経緯

  ・取り扱い作品の選定方法について

<聞き手/ライター:キクチエミ>

– 改めて、株式会社ANDARTの提供する『ANDART』というサービスの内容と特徴を教えてください。

松園:

『ANDART』というサービスは、アート作品を小口化し、優待付き会員権として少額から共同保有できる日本初のプラットフォームです。会員権には保有率や作品に応じた優待が設定され、後に売却も可能です。また、作品の公共展示を行うことで個々の家に飾ることはできなくても、自分が「オーナー」となった作品が日本中で展示されるという新たな体験価値の創出も目指しています。

これまでアートとの関わり方は主に所有か鑑賞に限られているように思いますが、その中間ともいえる、当事者意識を持ちながらも気軽に参画できることが特徴になります。

また、これまで一般の人にとっては何かとハードルが高く、手に届かなかった高額作品でも小口一万円から好きなだけお金を投じられます。

− お二人で起業をされましたが、どういった経緯で株式会社ANDARTを立ち上げるまでに至ったのでしょうか。

松園:

そうですね。起業という選択肢は学生の頃からあったので、「本当に打ち込みたい×社会へのインパクトの大きさ」の観点で納得いくテーマをずっと探していました。

今振り返ると公私共に何かとアートとの縁や接点が多く、ふとマーケットについて調べた時、日本は美術館や展覧会には世界でもトップクラスの動員数があるにも関わらず、アート作品の流通額は小さいということを知りました。

「なぜこのギャップは生まれるのか」と考えた時に、自分も含めて、”アートに興味はあるけど、鑑賞以上のことに踏み込めてない人”が日本には沢山いるという考えにたどり着きました。その要因や課題解決を図りながら、アートを楽しめるハードルを下げ、新たなモデルで機会提供をする事で、多くの人をアートマーケットに連れてくる事ができるのではないかと考えたのが始まりです。

着想当時はこのビジネスモデル自体、海外にもこれといった事例もなく、可能性は自分たちで創る以外ない難易度の高いものでした。だからこそ、前職での信頼関係、人間性、立ち上げ時に不可欠となる自分にないスキルを持つ高木に声をかけました。

高木:

松園から相談をもらい、アートの事業と聞いたときは正直とても構えてしまいました。自分自身、大きな美術展や美術館には足を運んでいたものの、アートをなんとなく縁遠く感じていて、作品を購入したり自身の家に飾ることをこれまで検討したことがなかったんですよね。

美術展の混雑状況は肌で感じていたので、日本における流通市場規模をデータで見たときに「なぜ日本ではアート市場における流通額がこんなにグローバルに遅れを取っているんだろう」と驚き、疑問を持ちました。

そこから日本では作品購入や自宅での作品展示においていろんな障壁が存在していることを知り、他国と比べて「作品を購入して自宅に飾ろう」と感じやすい環境ではないんだと痛感しました。例えば、周りの友人や私自身、美術展のグッズのポスターやポストカードなどはよく買って飾っています。その光景をふと思い出した時、「きっとみんな心の奥底では本物のアートに部分的にでも関与していたいと思っていたんだろうな」「自分自身も実はサービスのターゲットなのでは」、と気付きました!

松園:

じゃあアートをもっと身近な存在にして日本のアートマーケットを盛り上げよう! となったときに「既存のアートファンに、現状以上に市場にお金を投じてもらうことが答えなのか?」でいうとそれでは限界があると思っています。

だからこそ我々は「新しい経済圏をつくる」ことをテーマに今の事業に取り組んでいます。これまでアートに興味があっても入ってこれなかった方々への入り口を、”共同保有”というかたちでつくり、新しい人々をアート業界に連れてきて新たな市場開拓していく。そうすることで、市場の成長に貢献できればと思っているんです。

− 「新しい経済圏をつくる」というテーマにしたのは、お二人が「アートとお金の関係」に何か疑問を感じたからでしょうか?

松園:

この事業を立ち上げようと決めてから、アーティスト、ギャラリー、コレクター、キュレーターなどアート界の様々な立場の方々に市場の課題を色々と教えていただきました。

それぞれの立場によって挙げられる課題は異なっていましたね。

例えば、アーティストの方だと、今すでに人気があり海外でも支持されている方であっても、新しい作品の制作費用の工面には毎度苦労されているというお話が共通して挙がります。マネタイズに苦戦して夢を諦めてしまったり良い作品が生まれにくくなっていることは市場にとっても大きな損失です。

コレクターの皆さんはというと、購入・保管できる作品数には上限があって、名作が倉庫に入りっぱなしになっていることを悔しく思っていたり、高額作品をいくつも購入できる方はどうしても富裕層の方々のみになってしまっていたりと、アートへの強い思いを金額として市場に落とせる限界を感じていました。

今後コレクターになりたいと思っている方々からは「作品を買ってみたいけどどこで買ったらいいかわからない」「アーティストやギャラリーとの接点を持ちたいが情報がどこにあるかわからない」と、モチベーションの昇華先がない状態の方も多くいる状況です。

色んな方にヒアリングしてみて感じたのは、「お金が継続的に投じ続けられ、アートに関心が向き続ける仕組みがなければ、市場は成長しない」ということ。

そこから弊社のミッションを「アート市場に新しい経済圏をつくる」に決めて、今の事業アイディアに至りました。

このほかにも、様々なビジネスモデルを思考しましたが、既存のアートファンをターゲットにするだけでは市場拡大に繋がらないと思い、「作品をみんなでシェアする」「資産性もあるアート」といった新しい切り口で新たな人を連れてこようという結論にいたりました。

▲ Art Basel Miami Beach 2019

▲マイアミや香港で開催されたアート・バーゼルやアートフェア東京など数々のアートフェアにて作品や、世界の市場調査に足を運ばれている

− 作品選定にはどの様な工夫をしていますか?

松園:

作品選定のポイントは大きく3つです。

・個人所有では難しいが、共同保有だからこそチャレンジできる価格帯やサイズ・形状の作品

・アートにこれからチャレンジしたい方にとっても魅力がわかりやすい作品

・グローバルな市場評価と人気があり、今後の更なる活躍や将来性という視点でもプロのアートアドバイザーから推奨されるアーティストによる作品

これらの基準を満たしているかどうか? を「定量的なデータ」の観点と、「定性的な作品・作家の評価」の両軸から意思決定しています。

「定量的なデータ」に関しては、世界中の過去数十年から最新のオークションデータを元に分析し、モチーフや手法ごとの価格妥当性、セカンダリーマーケットにおける需要の高まりを数字で見た上で判断しています。

「定性的な作品・作家の評価」に関しては、我々自身がアートキャリアを経ているわけでも学問的に勉強してきたわけでもないので、プロの力を借りることが重要だと考えており、外部の多数いるアドバイザーにご協力頂いています。

個人コレクターの方や、アート業界で20年以上キャリアを積んでいるギャラリスト、解説者の方々に細かく確認をとり、総合的に判断したうえで出品作品を決定しています。

高木:

ありがたいことに、作品を出品したいというお話をいただくことは増えているのですが、条件を満たせていなかったり、会員の皆様にご提供する際の価格が市場価格と大きく乖離してしまうようなお申し出はお見送りさせていただくようにしています。

松園:

元々、自分たちがサービスのターゲットでもあり、アートキャリアがないからこその視点を大事にしていきたいと思っているので、今後も魅力的な作品を皆さんにたくさんお届けできるようにしていきます。

先日開催したオーナー限定の優待ビューイングイベントの場でも、会員の皆さんから直接作品やアーティストのリクエストを頂けたので、そういったお声を参考にサービスの改善を進めていきたいです。

若手アーティストの支援につながる共同保有をしたい! というお声も増えてきていますのでここは早々にチャレンジしていきたいと考えています。

− 後編に続く